大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・430『詩ちゃんの写真と西京焼きと新聞記事』

2023-08-28 09:02:51 | ノベル

・430

『詩ちゃんの写真と西京焼きと新聞記事さくら   

 

 

 なんでか、出窓の観葉植物の横に置いたある。

 うちが買っておばちゃんに持って行ってもろた学校机セット。

 

「フフ、さくら、この鉢植えの花わかる?」

 留美ちゃんが鼻にしわを寄せる。わたしに分からんクイズを思いついた時の顔や。

 詩ちゃんが送ってきた画像を見て、ええなあとふたりで頬杖ついてる。

「うちの境内にあるのやったら分かるねんけどなあ」

 さっさと降参しとく。

「ブルーベルって言うんだよ。花をつけるとお辞儀したようになって、ほら鈴なりのベルみたいでしょ」

「ほんまや、花がみんな下向いてて、かいらしいねえ。この学校机1/12やさかいに、フィギュアに座らせたら、妖精の学校みたいやねえ。こんど見繕って送ったげようか」

「ううん、このままがいいんだよ」

「そう……そうか……休み時間に、ちょっと席外してます的な」

「そうだね、妖精学校は二時間目の休み時間です的な?」

「うん、そのキャプションええやんか!」

「写真に付けて送ろ!」

 カチャカチャとキーを叩いて写真を送信。

「「さて」」

 

 二人で声を揃えて、キッチンに行く。

 

 おばちゃんもヤマセンブルグに行ってるんで、ご飯の用意はうちらでやってます。『ご飯ぐらい作れるでえ』とお祖父ちゃんは言うけど、出来る時はうちらでやることにしてる。せめて残り少ない夏休みぐらいはね。

 お寺のキッチンは広い。

 法事やらの時は、大勢のお茶やら食事の用意とかせならあかんさかいね。

 下ごしらえしといた鮭の西京焼きを冷蔵庫から出して、あとは、卵焼きとお味噌汁とサラダの用意。

 ジュワァ

 お味噌の焼ける匂いが食欲をそそります。

 背後に人の気配、お祖父ちゃんが手伝いに来たのかと思たら、テイ兄ちゃん。

「自分ら、このニュース見たか?」

 テイ兄ちゃんが新聞をひらひらさせてる。

「え、なに?」「なんですか?」

 

 ガスを止めてリビングへ。

 

「これ、自分らの担任やった先生とちゃうかぁ」

 ――介護疲れか95歳の母親を殺害――

「え?」

「「ええ!?」」

 介護疲れのお年寄りが、親やら配偶者を殺してしまういう話は時々あるけど、自分の知ってる人が殺したり殺されたりいう話は初めてや。

 

―― 菅井敏行(62)は、要介護5の母親菅井美幸さん(95)を岸和田市内の老人介護施設から散歩に行くと言って連れ出し、岸壁から車いすごと海に突き落とし…… ――

「菅井先生だ!?」

「そんなアホな!?」

「やっぱり、自分らの担任やった先生やねんなあ……」

 菅ちゃん、菅井先生を最後に見たのはお祖父ちゃんに頼まれて天王寺のお寺にお使いにいった帰り(094:『海老煎餅買って意外な人を見かける』)マクドのオープンデッキでハンバーガー食べてて、妹さんと揉めてたとこ。

 話の内容から、親の介護のことで言い合いになってたんを思い出す。

 間もなく菅ちゃんは学校辞めてしもて、それからは知らんかったんやけど……

「先生、なんでまたぁ……」

 留美ちゃんは、自分の身内の事のように眉を顰め、涙まで浮かべてる。

 中一のころの留美ちゃんは、ちょっとコミュ障的なとこがあって、よう菅ちゃんに怒られてた。

 菅ちゃんも不器用な先生で、うちも何べんかカチンときて食って掛かった。

 一言でいうと嫌な先生。

 せやけど、なんか、むちゃくちゃ悔しい。

 菅ちゃんのやったことは同情の余地なんかカケラも有れへん。

 ボケてはったんかも分からへんけど、お母さん、岸壁で乗ってた車いすを押されて、海に落ちるまでの恐怖と絶望。

 押しながら、菅ちゃんは何を思たんやろか?

 

 気を取り戻してキッチンに戻ると、火は切ってたけど、フライパンの上で西京焼きが味噌漬けの干物みたいになってしもてた。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 
  • 声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
  • さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)
  •   

 

 

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RE・かの世界この世界:202『鬼ノ城・4』

2023-08-28 05:48:51 | 時かける少女

RE・

202『鬼ノ城・4』テル 

 


「与一殿、父上はご存命なのか?」

「いえ、父はわたしが生まれる前に他界いたしました」

「そうだろうなあ……」

 瞬間、イザナギさんと目を合わせて話を続けるヒルデ。

「実は、我々はイザナギ殿に付き従って黄泉の国に行くところなのだ」

「よ、黄泉の国!?」

「いやいや、死んで黄泉の国に行くわけではない。イザナギ殿の奥方が亡くなってなぁ」

「はい、まだまだ国造りの途中なので、迎えに行くところなんです」

「亡くなった奥方様を……?」

「我がままと思われるかもしれませんが、国生みや国造りを蔑ろにしては、この先、どんな災いが起こるかしれません。それで、ヒルデさんをはじめ、皆さん方にご一緒頂いて、黄泉の国に妻のイザナミを迎えに行くところなのです」

「そうだったんですか……いやはや、この世界そのものを背負っておられたんですねえ……那須の家ひとつに汲々しているのが申し訳ないようです」

「それでな、実は、岡山に着いた時に因幡の白ウサギに出会ってな。手紙を託されたんだ」

「白ウサギの手紙ですか?」

「いや、現世から黄泉の国に旅立った者に向けた手紙だ。妻や子や、血の繋がりは無くとも大切な者たちに。黄泉比良坂の前で手紙を焼くと、そういう大切な者たちに届くと言うんだ」

「そんなことができるんですか?」

「ああ、無き父君に、今の想いを届けてみてはどうか? たとえ答えが返ってこなくても、伝えさえすれば、少しは気も晴れるだろう」

「……そうですね」

「紙と筆を出してあげましょう、国生みの仕上げもできない神で、これくらいの手伝いしかできませんが……」

「拝借します。では、あちらで書いてまいります」

「ああ、ゆっくり書くがいい」

「ええと……車の中にお茶の道具があります、ちょっと休憩にしませんか」

 雪舟ねずみが気の利いたことを言う。

「ああ、それはいい。お前たちも手伝ってやれ」

「合点だ」「ラジャー('◇')ゞ」


 ポクポクとお茶の道具をとりに行く三人を見送ると、タングリスはベテランの下士官らしく枯れ枝などを集めて焚火の用意を始める。


 見上げた空は、楼門の向こうに日が傾き始めていた。

 

 ☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎

 

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