大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:204『鬼ノ城・6』

2023-08-31 14:27:25 | 時かける少女

RE・

204『鬼ノ城・6』テル 

 

 

 おててつないでみな帰ろぉ~ からすといっしょに帰りましょ~

 

 不朽の名曲に詠われているように、夕焼けの空には人や家やふるさとを想うなにかがあるんだろう。

ケイト:「他のみんなは、どうしてるんだろう……」

桃太郎二号:「え?」

 ケイトの呟きに桃太郎二号はキョトンとする。

ケイト:「あ、なんでもないよ」

桃太郎二号:「なんでもなくないだろ、おめえ、涙ぐんでるじゃねえか」

ケイト:「なんでもないよ」

桃太郎二号:「言えよ、水くせえなあ」

ケイト:「うるさいなあ」

桃太郎二号:「そっぽ向くこたぁねえだろ!」

わたし:「じつはなぁ……」

 わたしは、そっと二人の間に入ってやった。

わたし:「イザナギさん以外は、みんな別の世界からとばされてきたんだ」

桃太郎二号:「別の世界?」

わたし:「ああ、みんなで……その…………鬼退治みたいなことをやって旅をしていたんだ」

 すこし言葉に迷ったけど、鬼退治という言葉がしっくりきた。

桃太郎二号:「お、おまえらも鬼退治してたのか」

わたし:「うん、他にも、みなしごやら人身御供をあやうく免れた者やら、小さな妖怪みたいなのが人になったのやらな」

ケイト:「みなしごはロキっていうんだ、ヤンチャな奴で、なんか桃太郎二号に似てるかもね」

桃太郎二号:「そうか、きっといい奴なんだな(^_^;)」

ケイト:「うん、いい奴だ」

桃太郎二号:「そ、そうか……って、ここは『んなことあるかあ』って突っ込むところだろが!」

みんな:「あははははは……」

ヒルデ:「人身御供の方はユーリアって云ってな、とびきりの美少女だ。まあ、わたしの次くらいにな」

桃太郎二号:「そ、そりゃすげえ」

ヒルデ:「あはは、そこは『んなことあるかあ』だろ!」

桃太郎二号:「え、あ、あ、そうだった(;'∀')」

みんな:「あははははは……」

桃太郎二号:「で、でぇ、妖怪が人になったてのはなんだ?」

ケイト:「ロキってのが孤児院に居たころから世話してやってたんだけどな、ちょっとしたことで、みんなとケンカして、戻ってきたらだんだん人間みたいになってきたんだ」

桃太郎二号:「なんか眉唾」

雪舟ねずみ:「いや、わたしだって、もとは雪舟さんが涙で描いただけのねずみでしたからね」

わたし:「そうだ、和尚さんにこっぴどく叱られて柱に括り付けられたあとにリアルになったんだったな」

雪舟ねずみ:「はい、あの時、和尚さんがこっぴどく叱らなければ、わたしは生まれていないところでした(^_^;)」

桃太郎二号:「そうかそうか、やっぱ、たまには揉めなきゃ人も妖怪も進歩しねえんだな。一号も退治した後は鬼ともうまくやったって話だったからな」

 カサカサカサ

桃太郎二号:「前から聞こうって思ってたんだけど、タングが背負ってるのは何だ、時どきカサカサ音がして、タングねえちゃん、なにかボソボソ言ってるだろ?」

タングニョースト:「わたしの戦友だ」

桃太郎二号:「あ、ひょっとしてお骨か!?」

タングニョースト:「そうだ、だがな、こうやって背負っているとな、いつか必ず蘇るんだ」

桃太郎二号:「そ、そうなのか?」

 ガサガサ

 違うところで音がしたかと思うと、与一さんが草むらから出てきて済まなさそうな顔で立っている。

イザナギ:「与一さん……」

 

与一:「申しわけない、やはり手紙では意を尽くせんのです。わたしも黄泉の国に行って、直接父上と話してみたいと思います」

 

 黄泉平坂への旅の仲間が一人増えた。

 

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ

 

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くノ一その一今のうち・73『謁見』

2023-08-31 10:25:45 | 小説3

くノ一その一今のうち

73『謁見』そのいち 

 

 

「今から国王に会ってもらう」

 

 車寄せでバスを降りると、トヨタを下りた王女が待ち構えて告げる。

 遠足で目的地に着いて、先生が、取りあえずの注意をしている感じでおかしい。

「謁見の形式なので、身なりには気を付けてもらう。特段に着替える必要はないが、ネクタイはまっすぐ、ボタンは上まで止めて、上着のボタンも締めて欲しい。基本的に、聞かれたことのみ応えて、発問は控えてもらう。その後は王妃と会食。二時間ほどはかかる。途中トイレにはいけないから、10分間のトイレ休憩にする」

 ほんとうに引率の先生だ(^_^;)

 トイレ休憩が終わって、いよいよ謁見。帝国ホテルの結婚式場か(行ったことないけど)と思うくらいに高級感漂う広さと豪華さ。

 二段高くなった、その上にクッションで脇と背中をサポートされた玉座に王様が座っている。脇に控えているのは、おそらくはドクターだろう。

「父上、日本より『バトル オブ ハイランド』の撮影隊の方々が来られましたので、お連れいたしました」

「うん、ごくろう。みなさん、はるばる日本からお越しいただき、まことにありがとう。国王のアデノシン・サンリンサンです。高原の国を代表して歓迎いたします」

 王女の目配せを受けて、まず徳川社長が挨拶し、みながそれに倣ってまあやの番になる。

「鈴木まあやです、縁あって、今回主演を務めさせていただきます」

「鈴木とは……」

「あ、はい、日本で一番ありふれた苗字です(^_^;)」

「……苗字はそうでしょうが、身にまとわれた雰囲気は尋常なものではない。まあやさん、今少し顔を上げて目を合わせてはくださらんか」

「は、はひ(#'∀'#)」

 アセアセで顔を上げたまあやに王様は目を丸くされた。

「おお、似ている。若いころの母にそっくりだ、今少し近くでお顔を見せて下さらんか」

「は、はい……」

 三歩ほど前に出ると、控えのドクターが――そこまで――という目配せをして、まあやは足を止めた。

「アデリア」

「はい」

「まあやさんの横に並んでみなさい」

「はい」

「……ここには、撮影隊の方々の他にはドクターのホイヘンスしかおらん。ホイヘンスはおまえの侍医でもある、サングラスをとりなさい」

「はい……」

 ゆっくりとサングラスを外す王女。

「わたしの顔だけを見てどうする、みなさんにも顔を見ていただきなさい」

「そ、それは……」

「王命である」

「はい!」

 わ!?

 おずおずと振り向いた顔に息を呑んだ!

 

 め、めちゃめちゃ可愛い!!

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
  • ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)
  • アデリヤ         高原の国第一王女

 

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RE・トモコパラドクス・3『あの日の秘密』

2023-08-31 06:59:15 | 小説7

RE・友子パラドクス

3『あの日の秘密』  

 

 

 

 あらかわ遊園から帰った夜、一郎は夢を見た。

 

 あの日の夢だった。

 事実、あの日のことは一カ月前までは夢だと思っていた……三十年も前から時おり見る夢。

 首都高某所で事故が起こった。夜の九時頃だ。

 

「いっちゃんは、おばちゃんちで待ってな!」

 

 騒ぎに気付いて向かいのおばちゃんが言ってくれた。でも、無理を言って両親に挟まれる形でパトカーに乗り込んだ。代々木に出たところまでは覚えていたが、そのあと意識がもどったのは、病院の待ち合いのようなところだった。父と母はソファーに座って眠ったままだ。

「ああ、目が覚めたのか……」

 通りかかった白衣のお医者さんのような人が言った。子供心にも「まずかったかな」という気持ちになった。

「この子は、あの子の弟だ、多少、同じ素因をもっているんだろう」

「かもな、我々を見てしまったのなら、見せておくべきかも知れない」

 その時代には存在していないスマホのようなもので、そのお医者さんのような人は連絡をとった。

「……分かりました。連れていきます。あれ飲ませといて」

 もう一人の若そうなお医者さんみたいな人に指示して行ってしまった。

 その時飲まされたジュースのようなもののせいかもしれないが、一郎は、すごく落ち着いた気持ちでエレベーターにのせられ、地下何階かで降りて長い廊下を歩いた。

 

 扉が二重になった部屋は、機材の少ない実験室のようだった。

 

 そして正面のガラスの向こうに、姉が裸で横たわっていた。

「おねえちゃん……」

 声をかけてみたが、姉の姿に命を感じなかった。

 姉の手術台が百八十度回って、見えた姉の左半身は、焼けただれていた。

「え……おねえちゃん、死んじゃったの?」

「それを今から説明するの」

 いつのまにか、白衣の女の人が立っていた。とてもきれいな人だったけど、地球の人ではないような気がした。

「お姉さんは、首都高を車に乗せられてすごいスピードで走っていたの」

「……誘拐されたの?」

「その逆。誘拐されかけたのを仲間が助けたの。でも間に合わなくて、車ごと吹き飛ばされた」

 女の人が、リモコンみたいなのを押すと、逃げ回る車を追いかけているローターの無いヘリコプターみたいなのが三つ見えた。

 それがSF映画のように逃げる車を追いかけ回し、目には見えない弾のような物を撃っていた。弾はステルスだけど、その周辺の空間が歪むので弾なんだと分かる。路面に落ちたそれは、微かに光って消えてしまうが、巻き添えを食った他の車に当たると、ハンドルを切り損ねたようにスピンしたり、ひっくり返ったりして、他の車や側壁に当たって、事故のようになる。

 やがて、トンネルに入る寸前で車に命中し、車は三回スピンしてトンネルの入り口に激突。ボンネットから火が噴き出し、またたくうちに、車は火に包まれた。なんだか外国語で命ずるような声がして、カメラは路面に降り立ち、他のヘリからもまわりの空間が歪むことで、それと知れるステルス人間達が降りてきた。

 やがて、車から、煙を立てながら男がおねえちゃんをだっこして出てきた。一瞬身構える男。見えない弾丸が空間を歪ませながら飛んでいく。身軽に男は、それを躱すが、おねえちゃんを庇って背中に二発命中した。男は再び燃え上がり、おねえちゃんは路面に投げ出された。

 その直後、敵の男達が、どこからか飛んでくる弾に当たって、次々と倒れ、画面も横倒しになって消えてしまった。

「これ、オバサンたちが助けたんだね……」

「そう、理解が早いわね。このあとお姉さんだけを救助して、ここに運んだ」

「……男の人は、おねえちゃんを庇って死んだんだね」

「……そしてお姉さんも、さっき息を引き取ったの」

「じゃ……」

 映画の出来事のように冷静に喋れるのは、さっき飲んだジュースのせいだろう。

「でもね、こっちを見て……」

 ガラスの向こうでカーテンが開き、金属で出来た骸骨の標本みたいなものが現れた。よく見ると、そいつの骨の間には、部品のようなものが入っていて、見ようによっては作りかけのサイボーグのようにも見えた。

「作りかけのロボット。お姉さんの記憶は、脳が死ぬ前に、こっちのロボットのここに入力した」

 女の人は、自分の頭を指差した。

「じゃ、おねえちゃんは!?」

 初めて感情のこもった声が出た。

「死んじゃいないわ。体が変わっただけ」

「おねーちゃーん!」

 一郎は、ガラスを叩いた。

「ぼく、ガラスを叩いちゃ……」

「いいわよ。感情を抑制しすぎると精神に影響するわ」

「おねえちゃん……生き返るの……?」

 一郎は、聞いてはいけないクイズの、最後の答を催促するようにオズオズと聞いた。

「動力炉、それと生体組織がなんとかなればね」

「なに、それ……?」

「エンジンと、ボディー。エンジン無しじゃ車は走れない。ロボットもね。それにスケルトンのままじゃ外に出せないでしょう。わたしは、これの専門家じゃないから、そこまでは手が回らないの。お姉ちゃんはもどってくるわ。それが、明日になるか十年後になるかは分からないけどね。時間軸の座標を合わせるのは、少し難しいの。それに、この世界では違法なことだしね」

 両親には、娘は事故死したと伝えられ、焼けただれた右半身を隠した遺体を見せられた。両親は娘は死んだことで納得した。

 晩婚だった両親の悲しみは深く、葬儀のあと、二人とも急に老け込んだ。それでも幼い一郎のためにがんばり、父は去年亡くなり、認知症の母は介護付き老人ホームに入っている。

 事故そのものは、首都高の大事故として処理され、そして、三十年の歳月が流れた。

 

『明日、10時、代々木の○○交差点でお待ちしています』

 

 そのメールがやって来たのが一カ月前だった。

 そして、三十年ぶりに会った姉は、当時の十五歳の姿のまま羊水の中でまどろんでいた。

「ここまで、歳が離れちゃお姉ちゃんというわけにはいかないなあ」

 当時若かった初老の医者が、そう言って腕を組んだ。

「大伯父の孫娘、親が亡くなって見寄なし……という線でいきましょう。書類やアリバイ工作に時間がかかるから、一カ月後ということにしましょうか」

 女の人は、ひとりだけ、三十年前の若さで言った。

 

 そこで目が覚めた。

 

 血圧の低い春奈は、まだ眠っている。

「おーい、友子、もう起きろよ……」

 すると、後ろで声がした。

「どう、さっき来たの。乃木坂学院の制服。似合うでしょ!」

 制服を着て、スピンした女子高生の姿は、とても姉とは思えない可憐さであった。

「二十八歳年下の姉ちゃんか」

 振り返った友子が、スリッパを投げてきた。

 

 パコン

 

 見事一郎の頭に命中し、いかにも軽い音がした……。

 

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