大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・71『高原の国に降り立つ』

2023-08-20 10:13:12 | 小説3

くノ一その一今のうち

71『高原の国に降り立つ』そのいち 

 

 

 ゴォーーーーーーー

 

 わたしたちを乗せてきたC130は、あっという間に飛び立って、高原の雲に隠れて消えてしまった。

「すごいね、この滑走路は軽飛行機がやっとなのに……」

 ミッヒが眩しそうに空を見上げ、自衛隊の操縦テクニックに見入っている。

 

 わたしたちは、数カ月ぶりのC130に乗って高原の国にやってきたところだ。

 

 目の前には誰が見ても軽飛行機がやっとという感じの500m滑走路。

 航空自衛隊のC130は折り返して、PKOに参加していた自衛隊員と在留邦人を乗せて日本に引き揚げていく。

 わたしたち徳川物産関係者は、あのC130に乗ってきて、100人の引き上げ組と交代したところ。

 草原の国に行った時は米軍のC130だったけど、今回は自衛隊機。

 草原の国での活躍を知った日本政府は「今回はわが国で」言ってきた。

――成功した時の保険だ――

 百地社長は口をゆがめたけど、徳川社長は鷹揚に付け加えた。

――なあに、針は確実にこちらに傾いている。進歩ととらえましょう百地さん(^□^)――

 

 実は、草原の国が急速に軍備を整えて周辺の国に攻め入る気配なんだ。

 木下豊臣家が甲府から持ち出した甲州金は甲府と大阪城で少しは取り戻したけど、けっきょく7割ほどは持ち出され、その資金で、さっそく草原の国の軍備拡張に乗り出した。

 にわかに勢いづいた草原の国は、隣り合う高原の国に手を及ぼうとしている。

 そのためにドイツからミッヒが招かれ、徳川物産は全力を挙げて対抗するんだ。

「あららぁ、ネットニュースでは『自衛隊、成果を上げて高原の国から撤収』と出てるわ」

 まあやがスマホを見せてくれる。

「ええと……え?」

 画面をスクロールすると、C130を見送るわたしたちの後姿。

「『脚本家三村紘一氏は、三村組と呼ばれるチームを結成し新作映画「バトル オブ ハイランド」の制作準備に入る』だって」

「ええ!?」

 なんちゅう欺瞞! 実体は自衛隊のPKOだって引き上げるくらいに危機地帯だっちゅうに!

 

 お~い、みんなぁ~!

 

 空港事務所に手続きに行っていた三村先生と桔梗さん(徳川社長の秘書)が軽やかに駆けてきた。

 なんだか、新作映画の準備どころか、みんなでバカンスに来た感じ。

「王女殿下がお迎えに来られることになりました、もう少し、このままで待ってください」

 桔梗さんが穏やかに予定変更を伝える。三村先生は膝に手を付いてゼーゼー言ってる。

「いやあ……酸素が薄い……桔梗さん、あと頼む」

「はい、承りました。高原の国は国王がお体を悪くされて、皇太子が摂政になっておられますが、実際に国政を担っておられるのは王女のアデリヤ殿下です。率直なお方ですが根は国と国民を思い、日本にもリスペクトの御心をお持ちの方で……」

「桔梗さん、こ、来られたようだ……」

 苦しい息で三村先生が指差したゲートから、ごっついトヨタがパトカーを従えて入ってきた。

 

 キーーー! バタム!

 

 ポニテで高身長の戦闘服が降りてきた。

 

「高原の国第一王女のアデリヤである」

 

 その第一印象は、女マッカーサーだった(^_^;)

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
  • ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)
  • アデリヤ         高原の国第一王女

 

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RE・かの世界この世界:194『桃太郎二号』

2023-08-20 06:03:21 | 時かける少女

RE・

194『桃太郎二号』テル 

 

 

 なんともだらしない桃太郎だ。

 

 鎧は脱いでしまって籠手と脛当(すねあて)だけの小具足姿。

 直垂(ひたたれ)の前ははだけてしまって、汗みずくのTシャツが覗いている。

 Tシャツにはプリントされた文字の一部が覗いている。

 負と働の上半分だ。

 ぜんぶ読まなくても分かる……『働いたら負け』だ。

 
「関りにならない方がいいようですね……」


 イザナギさんが、ソロリ、わき道に入って行こうとして、わたしたちも無言でそれに倣う。

「おい、そこのテメーら! 無視すんじゃねーよ!」

 声だけなら、それでも無視するんだけど、桃太郎はドタドタと駆け寄ってきて、ケイトのシャツの裾を掴んでしまった。


「おまえたち、オレのお供決定な!」

「え?」「なんだ!?」「いやだ!」「断る!」「なんで?」「カサコソ!」

 五人五様プラス背嚢のタングリスが応えるが、桃太郎はかまっちゃいない。

「わき道には、センサーがしかけてあってよ。踏んだら『承諾』のサインが点くようになってんだよ!」

 足元を見ると『承諾』と書いてある。

「桃太郎くん、これじゃ、なんの承諾か分からないと思うんだが(^_^;)」

 イザナギさんが穏やかにたしなめる。

「よっく、見てみろよ」

「「「「ん?」」」」

 四人で見下ろすと『承諾』の文字はゆっくり流れて次の言葉が現れる、電光掲示板のように繰り返されていく。


 ……とみなす……ここを踏んだら 桃太郎のお供になることを承諾したものとみなす……ここを……


「さ、詐欺だ!」

 ケイトが唇を震わせながら抗議する。

「ふ、震えんじゃじゃ、ね、ねーよよよ……」

 ケイトの震えが伝染した震え声で桃太郎。

「仕方がない、とりあえず、話だけでも聞いてあげますか」

 イザナギさんが触れると震えは停まって、桃太郎が居た木陰まで行って話を聞くことにする。

「手短にな、わたしたちにも使命があるのでな」

 ヒルデが『使命』と言ったのでイザナギさんは、ちょと感動の様子。

「お、おう(-_-;)……えと……」

 ぞんざいに見えるが、話を手短にまとめようと焦っている。

「オレはな、桃太郎二号なんだ」

「「「「二号?」」」」

「一号はお婆さんに拾われて無事に桃太郎になった。よくできた奴なんで、爺さん婆さんが『蝶よ花よ(^▽^)/』て大事にしてな、こないだ鬼退治済ませてきやがった」

「おまえが二号っていうのは?」

「一号のあとに、もう一個桃が流れてきたと思え」

「あ、それが、おまえなのか?」

「婆さんは、二つも桃はいらねえ。無視しやがった」

 プ( ´艸`)

「笑うな!」

「すまん、続けろ」

「それで、もっと川下の方に流されて、桃は腐ってきた。それを見て気の毒に思った別の婆さんが拾って、家に持って帰って、爺さんといっしょに桃を割って、出てきた瀕死の桃太郎がな……おれさま……ってわけよ」

「それでクサってたわけか……」

 プププ(* ´艸`)!!

 ケイトに悪気はないんだけど、二号桃太郎の本質を突いてるので、またも笑ってしまう。

 今度は、抗議する元気もなさそうだ。

「そのお前が、なんで鬼退治?」

「うちのジジババは真面目なんだ……真面目だから、腐りかけた桃も拾ってくれたし、この歳までニートしてんのも文句言わなかったし……オレも鬼退治くらいしねえとな。は、働くのとは違うからな」

「それで……」

「でも、ずっとニートやってたし、二号だし……なかなか、お供のなり手がなくってよ……」


 そうか……


「よし、では、たった今からお供だ!」

「姫!?」「ヒルデ殿!?」「ええ!?」「ヒルデ!?」「カサコソ!?」

 みんな驚いた。

「桃太郎二号、おまえがな」

「え?」

「いいだろう、イザナギさん?」

「そうですね。これからは中国山地に入ります、おおむね北の方角に行けばいいんですが、道案内があった方が無駄をしなくて済むでしょう。桃太郎二号くん、君は、このあたりの地理には詳しいんだろ?」

「あ、ああ、地元だから詳しいけどよ、それじゃおいらの鬼退治が……」

「鬼退治は桃太郎一号くんが成し遂げて、残っているのは、いわば鬼の落ち武者。もう手向いもせずにひっそりと暮らしている者たちでしょ。そんなのをやっつけても手柄にはなりますまい。どうですか?」

「でも……」

「鬼の被害はどうです? 見渡した感じ平穏に見えるんですが」

 イザナギさんの言う通り、屋島のように殺伐とした空気はない。空は澄んで、小川はサラサラ流れ、田畑も豊かに実っている。

「で、でも、桃太郎に鬼は付き物だぜ。行けば、きっと鬼の一匹や二匹に……」

「わたしが行く先には、高い確率で鬼が居ます。いや、なにも退治することが前提ではありませんが。いっしょに来れば、将来、大人になった時には役に立つでしょう」

「でも、退治しなきゃ話にならねえぞ」

「桃太郎二号くん、タイジというのは『退治』の他に『対峙』というのがあるんです。ほら、こんな字です」

 ほう……思わず見入ってしまう。

「向き合うという意味です。向き合って、その次に戦うとか話し合うとか決まっていくんですよ」

「そうなのか……」

「そうです。では、進みましょうか(^▽^)」


 イザナギノミコト、なかなかの人たらしだ。


 


 ☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎

 

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