大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・428『お盆にパニクル』

2023-08-16 09:38:41 | ノベル

・428

『お盆にパニクルさくら   

 

 

 8月15日は申し合わせたわけでもなく、あたしも留美ちゃんも家に居てる。

 

 15日は、本山でも戦没者追悼法要が行われてて、末寺の如来寺でも法要と講和をやりました。

 お花まつりみたいな華やかさやら、落語会みたいなウキウキ感もないけど、お寺には大事な行事。

 言われんでも家の手伝いするのが当たり前になってます。

 お寺というのは、世間では保守の筆頭みたいに思われてるけど、そうでもありません。

 うちはやってないけど、他のお寺では『安倍政治を許さない!』て習字の見本みたいなビラ貼ってるとこもあったし、教団の連合では『靖国神社公式参拝中止の要請』っちゅうのを出したりしてる。

 ちょっとズレてるなあ……いう気はすんねんけど、おばちゃんも詩ちゃんの世話でヤマセンブルグに行ってしもてる。

 女手は、うちと留美ちゃんだけやし、例年通りにお世話させてもろて、やっと一息の本堂。

 

 ナマンダブナマンダブ…………

 

 二人、阿弥陀さんにトドメのお念仏で手ぇ合わせて、ちょっとボンヤリ。

 

 いつの間にかセミの声もせんようになって、その分、どこからか甲子園の実況放送が微かに聞こえる夏休みの後半戦。

 

「留美ちゃん、ドラマに出るねんてぇ?」

「え……あ……えと……(-_-;)」

 なんや、俯いてモジモジ。

「ミケメが言うてた」

「ミケメ?」

「あ、高瀬川さん、ミケメの声優やねんけど、休憩中に留美ちゃんといっしょにドラマに出ることになった言うてたし」

「あ…………えと…………」

「アハハ、なんや、昔の留美ちゃんに戻ってるしぃ」

「あ……たこ焼きテレビのディレクターから話があって……ね……『台詞なんか喋れません(-_-;)』って言ったんだけどね、『だいじょうぶ、喋れない女の子の役だから(^▽^)』って、『あ、でも、演技なんてできませんから(;'∀')』って言ったら、『だいじょうぶだいじょうぶ、車いすの設定だから(^▽^)』って……決まってしまって……どうしよう、さくらぁ(##゚Д゚##)!!」

 もう、完全にパニクっております。

「ああ、だいじょうぶだいじょうぶ! うちでも立派に声優やってんねんし(立派いうのはハッタリやけど)、単発のドラマやねんし、青春の記念イベントや思て楽しんだらええ!」

「ダメダメダメ!」

「そうやて!」

「でもでも、進路のことだってあるんだよ、スグに三年生になっちゃうし。間に合わなくなっちゃうし(>人<)!」

「あ、大丈夫やて」

「ああ、ずっと考えないようにしてきたのにぃ……(;゚Д゚) ああ、もう夏休みも半分過ぎちゃったよぉ。らしくないよね、なにごとも先回りして解決しなきゃいけないのに、先手必勝の榊原留美なのにぃ!」

「ちょ、留美ちゃん(^_^;)」

「ウグググ……」

 ああ歯ぎしりして……思たよりこじらせてるっぽい。

 さすがのうちも、次の言葉が出てこーへん。

 

 ブブブ ブブブ……

 

 二人のスマホが、同時に鳴った。

 そろっと見てみると、学校から緊急メール。

 

「え、あ、そうだ、修学旅行なんだ!!」

 留美ちゃんの目に火が灯った!

 メールは、修学旅行日程の最終決定のお知らせ。

 中学は流行り病のために修学旅行は無しになって、小学校以来の修学旅行。

『宇宙戦艦三笠』の収録も調整してもろて、前後合わせて一週間は天音(うちの役)は出んでええようにしてもろてる。

 大筋はフランス、イギリスの四泊五日……やねんけど、フランスでは暴動があったりして、ちょっとコースの見直しがやられてたんや。

「夏休み中には最終案出るって、先生言ってたよ」

「パソコンで見よ!」

 さっそく部屋に戻ってパソコンを点ける。こいうのは大きな画面で見た方がええ。

 学校のウェブサイトを開いてアクセスキーを打ち込む。

 ブタネコダミアが『遊んでくれぇ~』と寄って来るけど、邪険にベッドの上に放り上げて操作続行。

『在校生のみなさんへ』をクリックして、修学旅行のページへ。

 

 ええ!?

 

 二人とも、頭のてっぺんから声が出た!

 

 なんと、フランスは宿泊無しの一日だけで、パリを見物したあとはイギリスとヤマセンブルグに二日ずつになってた!

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 
  • 声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
  • さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)
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RE・かの世界この世界:190『屋島の戦い・2・讃岐うどん』

2023-08-16 06:09:15 | 時かける少女

RE・

190『屋島の戦い・2・讃岐うどん』テル 

 

 


 高松の海と町を見下ろす丘からカツオ出汁のいい匂いがしてくる。

 讃岐うどんに違いない(^▽^)!

 匂いにつられて丘に上がって見ると、全国展開している讃岐うどんの出店が湯気を立てている。

 

 神代の時代に千年先の源平の合戦が見られることも不思議だが、我々の空腹に合わせて讃岐うどんの出店が現れるのは、もっと不思議だ。

「アメノミナカヌシ(天之御中主神)さまのご依頼で、時間限定で出店しています」

 なんだか懐かしい雰囲気の女性店長が、釜の火を調整しながら説明してくれる。

「アメノミナカヌシの神が!?」

 イザナギさんが感激して目を潤ませる。

「アメノミナカ……って?」

 ケイトが首をひねる。

「イザナギさんの前に出てきた神さまで、カオスの世界を天と地に分けた方だよ」

「あ、ケイトが出てくる前の……」

 そう言えば、この世界に放り込まれた時は、イザナギさんも出現していなくて、わたし一人だったな。

 ほんの少し前の事なのに、ひどく懐かしく感じる。

「たこ焼きもよかったが、この匂いは、いっそう食欲をかき立てるなあ」

「姫、よだれが」

「ああ、すまん」

 タングニョ-ストが差し出したハンカチでヴァルキリアの姫騎士がよだれを拭き終わると、女店長がバイト店員といっしょにトレーを運んでくる。

「はい、讃岐うどんの朝定食セットで~す(^O^)/」

 バイト店員も店長に負けない明るさでメニューを説明してくれる。

「ハイカラうどんとご飯、お味噌汁、生卵、ちくわの天ぷら、お新香、味付け海苔のセットになりま~す。ご飯は、おかわり自由ですから~(^▽^)/」

「この、ヌードルの上でクネクネしているものはなんですか?」

 タングニョーストが、ちょっと気味悪そうに聞く。

「鰹節です。讃岐うどんはカツオ出汁ですから、トドメのおいガツオってとこです」

「なんだか、かんなクズのような……」

「魚を干して削ったものだよ、試しに、それだけ食べてみ」

 勧めてやると、一つまみ口の中に入れるタングニョ-スト。

「……なんと豊かな香りと味わいだ!」

「「「「「いただきまーーす!」」」」」

 声を揃えて朝ごはんをいただく。

 

 眼下の陸と海では源氏と平家の軍勢がにらみ合っている。

 沖の方には、ようやく対岸からやってきた源氏の軍船も姿を現わして、陸の義経軍と挟撃の構えをとりつつある。

「平家の方には勝ち目はないのではないか?」

 真っ先に食べ終わったヒルデが身を乗り出す。

「うん、でも、このままでは終わらないと思う……」

 乏しい知識が、これでは終わらなかったと呟いている。

 

 あれ?

 

 ちょっとしたことに気が付いた。

 義経軍と源氏の船団は白、平家は赤のシンボルカラーの旗や幟(のぼり)をなびかせている。

 これに不思議はないんだけど、源平双方に、ネガとポジと言っていい扇が竿の先に掛けられているのに気が付いた。

 扇は一つではなく、海上では船ごとに、陸では一個小隊に一つという具合に数が多い。

 さらに、多くの将兵が、ヨロイの袖に同じ意匠の小布(こぎれ)を付けている。

「敵味方の識別のためだな……」

 さすがにヒルデは察しがいい。

 ヴァルキリアでは、甲冑も衣装も同じ意匠のものを使っている。いわば制服で、敵味方の識別は一発で出来る。

 ところが、日本の将兵は、個人個人の武装で、見た目には敵味方の区別がつきにくい。

 そこで、扇や袖印で区別をしているんだ。

 

 気を引かれたのは、その、両軍の扇だ。

 

 源氏は白地に赤丸。

 平家は赤地に白丸。

 

 実に分かりやすい。

 ええと……わたし自身、なにかこだわりがあったような気がするんだけど、すぐには思い出せない。

 なんだったんだろう……?

 思っているうちに、平家の軍船が一艘だけ進み出てきた。

「あの小舟はなんだ?」

 ヒルデも同じように興味を持った。

 舟には、漕ぎ手の他には装束を整えた女官が乗っていて、不安定な舟の上だとは思えないくらいに優雅に舞っている。

「「ほほう……」」

 ヒルデとイザナギさんが揃って腕を組んだ……。

 

☆ ステータス

 HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・1000 マップ:1000 金の針:1000 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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