大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・046『みんなで万博・1・船場センタービル』

2023-08-17 15:10:57 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

046『みんなで万博・1・船場センタービル   

 

 

 無理をして新幹線にした。

 1970年、新大阪までの新幹線の特急料金は片道2000円。

 学食のランチが100円だからね、高校生としては贅沢をした。

 先月、直美さんと来た時は、機材が多いので車だった。身銭をきってみると大阪までの距離がよく分かる。

 

 座席に付いたら窓の下と座席のひじ掛けに吸い殻入れが付いているのには驚いた。

 発車すると、二つ前のオッサンが、さっそく喫いはじめたんだけど、煙は広がる前にダクトに吸い込まれて、すぐ横にでも座っていなければ被害は無いんだけど、列車の中で喫煙するという行為そのものが犯罪的に感じる。

 でも、三島を過ぎて富士山が見え始めて「キャー、富士山!!」「うわあ!」「待ってました!」とJK五人がキャピキャピ騒ぐと、タバコのオッサンは腰を浮かせて横顔で睨んできて、そのままシートに沈んでしまった。

 まあ、お互いさま。

 五人ともバイトに精を出したので、高校生の旅行としては余裕。

 チケットは真知子のお母さんが尽力してくださって二日分を確保できている。

 万博といっても、高校生は600円だから、二日分ゲットしても新幹線の特急料金よりも安いよ。

 令和の再来年、2025年万博は8000円だとか。物価の上昇を考えても8000円はクレージーだ。パビリオンの建築も遅れに遅れて、着工どころか建築契約も出来ていない国が多い。ひょっとしたら、年内には第三次世界大戦になってパリオリンピックも大阪万博も吹っ飛んでしまうという噂まである。半世紀以上経っているのに人類の進歩と調和は退化してる。

 

「「「「「お世話になりまーーす!」」」」」

 

 五人揃って元気に挨拶したのは、朝ドラのオープンセットかという感じの古いお店。いや、元お店。

 大阪に船場センタービルというのが出来て、船場の繊維関係のお店が大挙して移転したのが、この三月。

 たいていは移転と同時に元のお店は区画整理とかで取り壊されたり売りに出されたり。

 その中で、権利関係やら保存問題やらで宙ぶらりんになったお店があって、ちょうどお盆の時期で人も居なくなるので、光熱費の負担だけで泊まらせてもらえることになった。

 これも真知子のお母さんのお蔭。

ロコ:「うわあ、これ三和土(たたき)って言うんじゃないですか!?」

 ロコが、入ったところのコンクリートに感激する。

たみ子:「なに、タタキって?」

佳奈子:「カツオか?」

ロコ:「土に消石灰とニガリを混ぜて叩き固めた舗装なんです。コンクリートよりも吸湿性に優れていて風合いがちがうんです(^▽^)」

真知子:「玄関で泊まってちゃダメでしょ、奥に行くわよ」

 功労者は、ツカツカト奥に進んで行く。

 三和土の横は板の間で、先生の机みたいなのが並んでいて、お店が現役だったころは、ここが事務所だったみたい。

 真知子に続いて奥に行くと長細いお台所のようになっていて、天井は吹き抜けで梁や柱がむき出しで、その間に天窓が覗いている。

ロコ:「昔はオクドサンとかがあって、薪でご飯炊いてたんでしょうねえ」

わたし:「ほんとだ、梁も柱も黒光りしてるよぉ」

佳奈子:「ここから上がるみたい」

 上がり框の前に真知子の靴がある、それに倣って隣接する板敷と畳敷きに上がる。

ロコ:「昔は、ここでご飯食べたんですね。畳のところが旦那さんと家族、板敷が番頭さん手代さん、三和土のところは丁稚さんたちですね」

佳奈子:「え、身分別だったの?」

ロコ:「ですよ。っていうか、空間的には同じ場所で食べてるんで、大阪はすごいんです。宮之森もそうですけど、関東とかじゃ、主人一家は奥の別室ですからね。商売に対する姿勢が違うんです。主人や番頭は、食事の場でもみんなの健康状態やモチベーションを見て、なんというか、一体感がすごいんですよ!」

わたし:「いや、ロコのモチベーションこそすごいよ(^_^;)」

ロコ:「いいえ、せっかく大阪の町家づくりに泊まるんで、下調べしてきたんです。このお家、基本的に適塾と同じ作りのようです」

社員さん:「いやあ、お嬢ちゃんら、すごいねぇ。これだけ感心してもろたら、値打ちあるわあ。適塾は、ちょっと行ったとこにあるねんけど、今は老朽化して公開はしてへんさかい。ここで間に合うんやったら、よう見といてください」

みんな:「「「「「はい」」」」」

 

 それから、奥の部屋やら坪庭、寝具の在りか、お風呂の沸かし方から戸締りの仕方を教えてくれて、社員さんは船場センタービルの方に帰って行った。

 

佳奈子:「さて、ちょっと早いけどお昼食べて、どっか行こうか?」

 万博は二日目からと決めているので、初日は余裕だ。

真知子:「社員さんが、センタービルの地下にいろいろ食べ物屋さんがあるって言ってたよ」

佳奈子:「よし、じゃあ、センタービルに直行だ!」

みんな:「「「「おお!」」」」

 

 徒歩5分ほどで船場センタービルに到着。またまた感動した。

 

みんな:「「「「「うわあ……」」」」」

 感嘆の声を上げて、五人で見上げた。

 ビルとして見ると、三階建とか四階建で、驚くほどのものじゃないんだけど、めっちゃ長い。

 首を左右に振っても端っこが見えない!

ロコ:「幅42メートル、全長は1000メートルあるんです!」

みんな:「「「「「1000メートル」」」」」

ロコ:「地下鉄の駅を二つ跨いで、まだ東の方に続いていますからね」

たみ子:「ということは、これを縦にしたら、世界で一番のノッポビルになるよね!」

ロコ:「はい、エンパイアステートビルを三つ重ねて、まだ足りません!」

 わたしたちの驚きは、それだけじゃなかった。

 

 シュイーーン シュ シュ シュイーーン……

 

 ビルの上には高速道路が走っていて、耳を澄ますと、ひっきりなしに車が走っていく音がする。

ロコ:「最初に、高速道路の計画が出来て、移転するお店や会社がいっぱい出てきたんですです。引っ越し用のビルの計画があったんですが、床面積がぜんぜん足りなくて、高層化すると上の方は人が来なくて条件悪いです。そこで、考えたんです『いっそ、高速道路の真下をビルにしたら全部入ってお釣りが出るやろ!』って」

みんな:「「「「なるほどぉ」」」」

ロコ:「それに、地下二階まであって、食べ物屋やら呑屋がいっぱいあります!」

みんな:「「「「おお!」」」」

 宮之森の図書館で調べてきたという図面に目を剥いて、とりあえず現場に急行、30分近く目移りして、夜は呑屋、昼間はランチというお店で美味しくお昼を頂く。

 

 午後は、大阪城と難波と心斎橋を堪能して、いよいよ明日の万博突撃に備えて英気を養った。

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

 

 

 

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RE・かの世界この世界:191『屋島の戦い・3・扇の的』

2023-08-17 06:26:10 | 時かける少女

RE・

191『屋島の戦い・3・扇の的』テル 

 

 

 一丁艪の小船には水手(かこ)と女官が乗っていて、ゆるゆると進んでくる。

 

 海の平家と浜の源氏の間に至ると船足が停まり、女官がすらりと立ち上がる。

 口が開いたかと思うと、静かに舞い始めた。

 

 謡曲か何かなのだろうけど、口の動きだけでは令和の高校生には分からない。

 いや、たとえ聞こえても源平時代の謡曲など分かりようもないんだけど、さすがは源氏の武者たち。

 女官の口の動きと舞の所作で分かるみたいで、静かに見いっている。

 冴子と舞ったお神楽を思い出す。わたしと冴子の舞も、こんなに人をひきつけることができたんだろうか、こんなに美しかったんだろうか。ほとんど義務感でやっていたけど、もう一度、この女官のように舞えたら……知らず知らずのうちに女官の手足の捌き方、腰の据え方に見入ってしまう。

「これが戦なのか?」

 半ば呆れたようにタングニョーストは腕組みをする。

 ヒルデは柵ギリギリのところまで出て、腰に手を当てて女官の舞を注視する。

「揺れる船の上で足を取られることもなく舞っている、なかなかのものだ……」

 ケイトも食べかけのうどんを箸に挟んだまま腰を浮かし、うどん屋の女亭主は、そんな我々を後ろで見ながらニコニコしている。

 

 見事に舞い終ると、舞扇を閉じて帆柱の赤字に白丸の扇を示した。

 

 ヒルデとタングニョーストは、器用に柵の上に飛び乗り、揃って小手をかざす。

「ほう、あの扇を射落としてみろというわけだな」

「700ヤードはあります、ゴルフで言えばパー5のロングホールをホールインワンで決めろと言うようなものです」

「アルテミス(ギリシア神話の弓の女神)でも無理だろ」

「ウル(北欧神話の弓の男神)でも尻込みします」

「欧州の勇者は、感想をいっただけでもカッコいいなあ……」

 イザナギさんは苦笑いして頭を掻いた。

 国生みの男神としては、いささか威厳に欠けるんだけど、初代日本のお父さん的な力の抜け方は好ましい。


 源氏の軍勢は、この徴発を受けてざわめいていたが、やがて、一人の武者が現れたかと思うと、ジャブジャブと馬にまたがったまま海に乗り出した。

「あれを射落とそうというのか!?」

「姫、暴れては、柵から落ちます!」

「構うな!」

 タングニョーストはタングリスの入った背嚢を担いでいるので、暴れられてはかなわない。

 イザナギさんとケイトが手を差し伸べて背嚢を預かろうとするが、タングニョーストは困りながらも――けっこうです――と手を振る。

『やあやあ、遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ! 我こそは、那須の国の住人にして御家人の末席を汚す那須与一宗隆なり。今より、あの軍扇を射落さんとするものなり、源平いずれの方々も、両の眼(まなこ)豁然と開いて御覧じろ。もし、この与一、一閃にて射落とさずんば、腹掻っ捌いて高松の浜の魚の餌になろうぞ。いざ、平家の女官殿、勝負勝負!』

 見事な名乗りに、源平双方から感嘆の声が上がる。

「か、カッコいい!」

「手に汗を握ります!」

「来たるべきラグナロクで、あれをやってみよう!」

 ヴァルキリアの主従は興奮の絶頂になった。

 

 キリキリキリ……

 

 丘の上のここまで弓を引き絞る音が聞こえるような気がする。

 与一がいっぱいいっぱいまで弓を引き絞ると、源平双方のみならず、丘の上の我々も呼吸を忘れて見入ってしまう。

 うどん屋の釜の湯気さえ停まったかと思う瞬間、与一の矢が放たれた。


 ヒョーーーーーーー


 鏑矢は、獲物に飛びかかる鷹の声のように音を引いて飛んでいく!


 フ


 音もなく扇が吹き飛び、一瞬遅れて命中の音。


 トス


 ひらりひらりと舞いながら扇は海面に落ちて、やっと、源平両軍から歓声の声やら船端やら箙(えびら)やらを叩く音が、高松の海と浜と空に満ちた。

「か、かっこいい! めちゃくちゃカッコいいぞ!」

 ヒルデは、柵の上で飛び上がったりバク転をしたり、涙さえ浮かべて感激した。

 タングリスも惜しみなく拍手を送る。

 ケイトもうどんの鉢を持つ手はそのままに、脚を震わせている。

「よし、今日は、うどんの無料奉仕だよ!」

 うどん屋のカミさんが吠える。

 吠えた、その顔をよく見ると、荒れ地の万屋のペギーだったりした。

 

☆ ステータス

 HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・1000 マップ:1000 金の針:1000 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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