大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・66『天守から四方を探る』

2023-07-24 11:15:07 | 小説3

くノ一その一今のうち

66『天守から四方を探る』そのいち 

 

 

 怪しいと言えば何もかもが怪しい。

 

 甲府城とちがって、大阪城は何度も戦火に遭っている。

 単に破壊と再建が繰り返されたというだけではなくて、戦いの度に堀も石垣も姿を変え、その上に載っている建物も建て替わっている。当然、そのたびに大勢の人たちが傷つき無念の最後を遂げている。

 いまの天守閣は昭和になって再建された鉄筋コンクリートだし、そもそもは徳川の天守。秀吉の天守は、すぐ東隣の貯水施設の位置にあった。西の丸には、秀吉の死後、主のように居ついた家康が作った天守もあった。

 天守の直ぐ南には商業施設ミライザ大阪城。クラシックな中世のお城の形をしているけど、元々は旧陸軍の師団本部。

 ミライザの前は本丸広場だけれど、かつては紀州御殿があった。名前の通り紀州の和歌山城から移築された本格的な御殿だったけど、戦後大阪城を接収した米軍がタバコの火の不始末で全焼させてしまった。発火直後、大阪中の消防車が大手門の前に駆けつけたけど、米軍が入城を拒み、消防士たちも市民も唇を噛んだ。御殿の焼ける炎と煙は市内のどこからでも見えたという。

 東には市民の森、記念樹の森、市民球場、大阪城ホールが穏やかに並んでいる。だけど、元は大阪砲兵工廠の巨大な工場が並んでいた。むろん米軍の戦略爆撃で完膚なきまでに破壊しつくされ、戦後は、赤茶けた鉄骨の廃墟のまま長く放置されていたという。

 他には、これだけ広大な城址公園なので、数カ所で工事や手入れが行われている。

 現存する櫓や建造物はいずれも重要文化財なので不思議はない。大きな工事は大手門の多門櫓のようで、天守閣からでも遠望できるけど、工事は白壁の塗り直しが主で、それに合わせて内部の公開をやっている。怪しいところはない。

 

『ちょっと、やっかいですねぇ……』

 

 大阪城のあれこれを調べてくれていたえいちゃんが、通学カバンの中でため息をついた。えいちゃんは、カバンの中の手鏡みたいなのがスマホだと知ると、直ぐに操作方法を憶えて調べてくれる。

「あのレンガ造りの校舎みたいなのは?」

 大阪城ホールから西の方角に、ひっそりうらぶれたレンガ造りが気になった。

『あれは……旧砲兵工廠の化学分析場ですね。行ってみます?』

「うん、ちょっと気になる!」

 セイ!

『あ、ちょっと……キャー!』

 気にかかると後先の無い性格なので、天守閣の展望からそのまま飛び出す。

 三層目と一層目の屋根に足をついただけで、地上に降り、そのまま石垣をジャンプして山里丸。

 本丸の堀にかかる極楽橋を二秒で駆け、左に折れ、10秒後にはレンガ造りの前に立った。

『すごいです! 普通に行ったら20分かかりますよ!』

「きっと、なにかあるわね」

 まずは全景を見る。

 敷地全体が工事用のフェンスで囲まれ、フェンスと建物の間は、ひび割れた舗装部分を除いては草ぼうぼう。

 建物の窓は、全てコンパネや鉄板で塞がれ、その上を封印するように蔦が絡みついている。

『入りますか?』

「もちろん」

 フェンスを飛び越え、建物に沿って一周。

 焦って飛び込むのは下策。まずは外観と、そこから発せられる気を窺う。

『厳重ですね、センサーや監視カメラもありますし』

「よし、屋上だ」

 二回ジャンプで屋上に。

 換気塔と階段室がある。

『屋上からの侵入は想定していないようですね』

「うん、階段室は……中からの施錠だけのようだ」

『調べてきます』

「ああ、頼む」

 えいちゃんは元々はポスターのイラスト。厚みが無いから、ドアの隙間から簡単に入ってしまう。

 カチャリ

――開きました――

「ありがとう」

 えいちゃんのくぐもった声にお礼を言って中に入る。

『最後は自衛隊の地方連絡部が入っていたようで、比較的きれいな状態です』

「なるほどね……」

 

 ここからは忍者の領分。

 

 神経を研ぎ澄まして――比較的きれい――を精査する。

 どの廊下、どの部屋も埃が積もり、ペンキが剥げ、一部の天井にはシミが浮き出している。

 ガラスも所どころ割れたり抜けたりしているけど、保全の為に板でていねいに塞がれて、雨漏りや雨の吹きこみはほとんど伺えない。

『ミライザみたいに再利用を考えて保全されているんですね』

「さて、どうだろうねえ……」

『わ、暗いですね』

 階段を降りると、一階は二階よりも戸締りが厳重で、ほとんど日が差し込まない。

 でも、かまわずに進んで行く。

『え、見えてるんですか?』

「片目つぶって闇に慣れさせてあるの、忍者のイロハ」

『なるほど』

 埃の積もり具合、風化の具合に微妙な違和感がある。

「ごく最近まで人が使っていたようね……」

『そうなんですか?』

「微妙な不自然さがある……撮影所のセットにウェザリングをかけたような……」

 少しは分かる。

 百地芸能事務所の仕事の半分は道具制作の下請けだったしね。

『でも、ふつうにかび臭いですよ。セットのウェザリングって、ペンキや接着剤の臭いがしますからね』

「忍びの擬装は、本物のカビや埃を使うからね……ほら、埃の粒子にムラがある」

『え……あ、ほんと』

「それに、ここには地下がある。微妙に空気が流れている……」

 甲斐善光寺の戒壇巡りを思い出す。

 あの真っ暗な中、三村紘一こと課長代理は僅かな空気の流れから秘密の出入り口を発見した。

 それに比べれば、ここの擬装などは初歩的と言える。

 空気の流れに沿って廊下を曲がる。

『行き止まりですよ』

 確かに廊下は行き止まりになって、廊下の突き当りには自然な埃が積もっていて出入りの形跡がない。

 空気の流れもほとんど淀んでいて、他の隙間から出入りしている流れの方を強く感じる。

 しかし、なにかある。

 空気は流れずとも、気が流れた気配がする。

 曰く言い難しだけれど、数日前、ひょっとしたら昨日あたりまで出入りがあったような。

『昨日のように邪魔も入りませんねぇ』

「そうね……」

 空堀の地下道では、多田さんたちの手の込んだ妨害に遭った。

 今日、大阪城に来てからは、まったく妨害にあっていない。

 当たり前なら、見込み違いと諦めても不思議の無い状況。

 しかし、なにも無さ過ぎる。

 

 それが神経を集中させた。

 

 壁の下の巾木。巾木と床板の間には違和感のない汚れと埃が積もっている……指で擦ってみると、あっさり取れた。

 ただのウェザリングだ!

 巾木の下に爪を引っかけて手前に引くと、あっさり持ち上がった。

 そうか、巾木の裏に埃を仕込んでおいて、持ち上げて散布した後に戻したんだ。

 埃を拭いきると、とたんに空気が流れ始めた!

『わたしが見に行きます!』

 言うが早いか、えいちゃんは壁と床板の隙間に潜り込んだ……。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟

 

 

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RE・かの世界この世界:167『冴子!』

2023-07-24 06:03:16 | 時かける少女

RE・

167『冴子!』光子 

 

 

 モニターに映る三つ子ビルは傾きながらも立っている。

 

 三つ子ビルは、異世界を含むこの世の全てを現わす模式図だ。世界樹に似ている。

 一つのビルが崩れてしまうと、影響を受けて他の二つも倒れてしまう。

 そして、それぞれのビルには無数の部屋があって、その無数の部屋が無事であることで安寧を保っている。

 逆に、ビル全体が無事でなければ、一つの部屋を安寧に保っても意味がない。

 それを理解して、わたしは異世界への旅に出たんだ。

 

「世界は無事なんですね……」

「うん、光子ががんばってくれたからな」

「安心はできないけど、しばらくは大丈夫。あなたの周囲も、かなり改善されたわ」

「光子が卒業するまでは無事でいられると思うよ。まだ、やらなきゃならないことはあるけど、もう寺井光子でなくてもいい」

「そうよ、生徒は他にもいるし、時間はまだまだあるしね」

「じゃ……もう、冴子を殺してしまうことは?」

「おこらないわ」

「むろん、光子が殺されることもないし、追い詰められて屋上から飛び降りることもない」

「そ、そうなんだ……よかったぁ……」

 

 安心と同時に涙が溢れてきた。

 

「自分で確かめてみるといいわ。時美とお茶の用意しとくから」

「元気になってからでいいよ、あたしたち、駅前までお茶うけのスィーツ買いに行くから」

「湯沸かしも穴が開いちゃったから新しいのを買いに行くの」

「光子が落ち着いたら行くよ」

「あ、もう大丈夫です。はい! じゃ、わたしも、さっそく様子を見に行きます」

「そう、じゃ、時美、いっしょに出ようか」

「うん」

 三人揃って部室を出る。

「もし、先に戻ってきたら、壁から三つ目の床板を踏んで。扉が現れるから」

「は、はい」

 言われて振り向くと『かのよ部』のドアは消えていた。

 最初にここに来た時はずいぶん驚いたけど、いくつも異世界を経めぐって、もうこの程度の事では驚かない。

 念のため、三つ目の床板を踏んでドアが現れることを確認。フフっと二人の先輩が笑う。

 

 じゃ。

 

 顔を挙げたら、もう先輩たちの姿は無かった。

 時計を見ると、異世界にジャンプしてから一時間も経っていない。

 小6で読んだ異世界ラノベを思い出した。異世界で何十年過ごしてもリアルではほんの一瞬。

 でも、そのラノベは最後には、みんな幸せになる。ご都合主義で評判はもう一つだったけど、ハッピーエンドだったからこそ読み通すことができた。


 旧校舎から中庭に出ると、花群れの向こうに冴子の姿が見えた。


 さすがに緊張してしまうけど、時美先輩の言葉を思い出す。もう、冴子を殺すことも殺されることもないんだ。

 そうだ、普通にいこう、普通に。

 藤棚の前まで来て、冴子が笑顔になって早足になる。

 その笑顔にほとばしるような安心と嬉しさがこみあげてきた。

「冴子!」

「え?」

 目の前の親友は怪訝な顔をした。

「あ……」

「だれ?」


「あ……人違い」


 瞬間で、わたしのことが分かっていないことを理解して人違いにした。

「おお、よしよしよし」

 冴子は、藤棚の向こうのサツキの群れに隠れている子ネコに駆け寄った。

 そうだ、先週から見かけるようになったノラの子ネコだ。

 どっちかというと動物が苦手な冴子。

 その冴子が子ネコをスリスリしている。

 寂しさと安心が同時にやってきた。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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鳴かぬなら 信長転生記 133『紙飛行機西へ』

2023-07-23 14:07:02 | ノベル2

ら 信長転生記

133『紙飛行機西へ信長 

 

 

 眼下に大森林が広がる。三国志と扶桑を隔てる緩衝地帯。境目の大樹林だ。

 

 その向こうには東西に長城が横たわり、所どころの木の間隠れに長城の物見櫓が窺える。

 このまま進んでは、長城どころか、三国志の北半分からは視認されてしまう。

 茶姫の働きで商人たちの行き来は回復したが、潜在的には敵同士、まして我々(信長・市・茶姫)は曹操から敵認定される身。このまま越境するわけにはいかない。

「お兄ちゃん、どこから潜り込むつもり?」

「西へ抜ける」

「西、卯盃(ぼうはい)か?」

「さらに西、天山山脈と崑崙山脈の間だ」

「テンザンサンミャク? コンロンサンミャク?」

「信長くん、それって、ゴビ砂漠ではないのか!?」

「ゴビサバク?」

 市の地理的知識は三国志止まりのようだ。かく言う俺も平手の爺から聞いた西遊記レベルの知識だがな。

「忠八がルート検索をしてくれたのが、このルートなんだ」

 俺も、詳しいルートを知っていたわけではない『飛行ルートはプログラムしてあります、水平飛行になればモニターに表示されます』という言葉に従って風まかせにしているだけだ。これまでの仕事ぶりから言っても奴のやることに間違いはない。忠八は、どちらかと言うと光秀タイプの辛気くさい奴なのだが、サルに対するに近い信頼を感じるのは、俺も少しは練れてきたのかもしれない。

 ビューーーン

 紙飛行機も人目を避けようと思ったのか、猛烈に速度を上げる。

 よくできた紙飛行機で、高速だが安定した姿勢のまま西に飛び続け、やがて高度を取って巡航速度に戻った。

「あ、長城が途切れてきた……」

「陽関だ……」

「羊羹!?」

 思わず虎屋の羊羹を思い浮かべてしまったぞ。

「王維の詩にある『西の方 陽関を出れば 故人無からん』の陽関だ」

「えと、ちょっと難しんだけど」

「万里の長城の西の果て。陽関という街。そこを過ぎると、ずっとゴビ砂漠が続くのみ。さすがの三国志もここで絶え、その先は言葉も通じぬ西域の世界だという意味だ。逆に東に戻れば、蜀の成都に出られる。そうだったな茶姫?」

「ああ、そうよ」

「なんだ、成都の隣なんだ」

「1000キロはあるぞ」

「1000キロ!?」

「ああ、安土から白河の関ほどだ」

「白河の関ぃ……奥の細道かぁ( ゚Д゚)!?」

「そのくらい時間と距離をかけて、ほとぼりを冷ましてから三国志に戻れということでしょうね……」

「忠八が練りに練ってくれたルートとプランだ、焦らず確実に進んで行くしかない」

「でもでも、手配書とか回ってるんでしょ? 茶姫・ニイ・シイの三人で人相書きとか出てて『賞金首』とか『Wanted!』とか書かれてるんでしょ!?」

「それは、なにか対策があるんでしょ、信長くん?」

「あ、ああ、いちおう天照が、こんなものを寄こして……」

「え、鍋? にしては取っ手が無い」

「真ん中に穴が……中から見ると尖がってるわね」

「シホンケーキの型なんだそうだ」

「シフォンケーキでしょ?」

「天照はそう言ってた」

「古い神さまだから訛ってんのね」

「これを持っていけば、次第に育っていって、美味いシホンケーキ、いやシフォンケーキが焼けるようになるそうなんだ」

「それから、これをくれたぞ」

「え?」

「指輪?」

「ああ、一言主(ヒトコトヌシ)って神が籠められていて、役に立ってくれるそうだぞ」

「あ、なんでも一言で済ましちゃうって日本一ボキャ貧の神さま!」

「大丈夫なのか信長くん?」

「ああ、コスプレの神でもあるって言ってたから、役には立つんだろう」

「前回はお爺ちゃんの神さまだったし、大丈夫かなあ」

 グラリ

「「「わあ」」」

 グラリと傾いたかと思うと、紙飛行機は左に旋回しつつ砂漠に着陸。忠八の力作だけあって、旋回は急だったものの、穏やかに着陸して、俺たちはタクラマカン砂漠に対曹操リベンジ戦の第一歩を記した。

 

「ペッペッ、口の中に砂が入ったぁ!」

「口を開けっ放しにしているからだ」

「水を飲め」

「うん」

「あ、一口だけだぞ! この先、どこで給水できるか分からんからな」

「え、でも、ヨーカンとかって街の近くなんでしょ?」

――いいや、そうでもないわよ――

 声が遠い……と思ったら、茶姫は砂山に上り、手をかざして地形観察をしている。

 ザクザクザク……

 砂山に並んで、同じように周囲を見渡す。

「だいぶ西に流された、陽関のヨの字も見えない」

「ちょっと、大丈夫ぅ?」

「ふくれるな、陽関が見えないということは、陽関からもこちらが見えないということだ」

「そうね、我々が降り立ったのは誰も見ていないということよ」

「よし、今のうちにコスプレしておくぞ」

「変装って言いなさいよ、遊びに来てるわけじゃないんだから」

「遊びも大事だよ、シイ、余裕を持たなきゃ長旅はもたない」

 俺は、左手を掲げて、指輪に命じた。

「ヒトコトヌシ、この旅に相応しいコスに着替えさせろ!」

 

 ボボボーーン

 

 三連発の音とエフェクトがして、俺たちは瞬間で姿が変わったぞ!

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)

   

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RE・かの世界この世界:166『帰還』

2023-07-23 06:46:38 | 時かける少女

RE・

166『帰還』テル(光子) 

 
 

 ドグァッシャーーーン!!!

 

 カテンの森で野営の準備をしていると、森の奥から百年分の雷が落ちるような音がした。

 反射的に身を伏せると地震のような衝撃が続き、森の鳥や小動物たちが逃げてくる。

 すぐに四号の仲間と共に駆けつけると、トール元帥の戦車部隊がグチャグチャに撃破され、森の木々をなぎ倒して無残な姿をさらしていた。

 

 なんということだ……

 

 最前線で手ひどくやられ、全滅寸前にワープして撤退してきた様子だ。

 戦車と言うものは、外骨格の怪物で、撃破されてもおおよその形は残るものだ。

 それが、超重戦車の六号でさえ、ひしゃげた缶詰のように形を留めていないものがある。缶詰たちの周囲にはバーベキューの途中で放り出された肉のようなものがいくつも転がり、あるいは缶詰からはみ出ていた。

 その残骸と肉たちに囲まれてトール元帥が瀕死の重傷で横たわっている。

「元帥閣下!」

 タングリスが駆け寄る。

 蘇生術を施すのかと思った……が、違った。

 なにを!?

 タングリスは装具を解くと、野戦服まで脱ぎだし、身一つになったかと思うと元帥の上に裸身を投げ出した。

「お、おまえらは見るなあ(;゜Д゜)!!」

 ヒルデが両手を広げて立ちふさがる!

 とても、その小柄な体で隠しきれるものでは無いのだが、その切実さにたじろいでしまう。

 すると、切羽詰まったヒルデの頭の向こう、空の上からポチがクルクルと舞い落ちてくるのが目に入った。

 あ……ああ…………

 慌ただしく立ち止まったせいか、急に空を見上げる姿勢になったためか、数瞬の間に目にした衝撃的な光景のせいか、視界が鈍色の闇に狭窄されて、意識の糸が切れてしまった。

 

 ……さん。

 …井さん。

 寺井さん。

 

 懐かしい名前で呼ばれて、うっすらと目を開けると和室の天井……胸元まで掛けられたお布団の感触。

 これは…………?

「よかった、目が覚めた!」

「もう、戻ってこないんじゃないかと……心配で心配で」

「泣くんじゃないよ美空。光子、ちゃんと戻ってきたんだ」

「う、うん」

 この人たちは……。

「何度もフリーズして、クラッシュを繰り返して……」

「もう、戻って来れなくなってしまいそうで、時美と二人で回収したのよ。このままじゃみっちゃん、寺井さん、もたなくなっちゃうから」

「あ、もう少し寝ていろ、完全に戻って来るには、もう少し時間がかかるから」

 そう言われて、お布団から出した手を見ると、指の先が、まだ半透明だ。

 この二人は……?

 そこで、指の第二関節まで色が戻ってきて思い出した。

「中臣先輩! 志村先輩!」

 数年ぶり、ひょっとして数十年ぶり、数百年ぶりで、こちらの意識が戻ってきた……。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 フェンリル二世     狼族の王子

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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せやさかい・423『小鳥遊先生に呼び出される』

2023-07-22 10:16:11 | ノベル

・423

『小鳥遊先生に呼び出されるさくら   

 

 

 ちょっとマヌケ。

 

 夏休みに入って、もう四日目やいうのに制服着て電車に乗ってる。

『朝から会議だから、いつもの登校時間に来てもらえるかなあ』

 担任の小鳥遊先生に『終業式に出られなくてすみませんでした』の電話を入れて、先生と都合を合わせたら22日のこの時間になった。

 ホームも車両の中も制服の高校生いうのはほとんど居てへん。

 スマホを出して動画を観る。

 こないだ『たこやきテレビ』に出た時の留美ちゃん。

 もう何回も観てるねんけど、親友の晴れ姿は何べん見てもええもんや。

 関連して、他の画像やら映像も観れるしね(^▽^)

 

 留美ちゃんは、うちよりも映える。

 

 放送局で思わず眼鏡をとったときの画像。

 アニメ『JK戦士』のポップがロビーに立ってて、それが自分に似てるんで慌ててとったとこを写真に撮られた。

 たしかに、ノッポはメグリン、三白眼はソニー、眼鏡っこは留美ちゃん。

 メグリンとソニーはなんとなくやけど、留美ちゃんはかなり似てる。

 眼鏡っこは、日ごろは無口で恥ずかしがりやねんけど、眼鏡取ったら、めちゃくちゃ雄弁で強くてベッピンさん。

 あんまりベッピンなんで、敵が一瞬見惚れてしもて攻撃のタイミングが遅れてしまうほど。

「見とれてんじゃねえ!」

 ブチギレしながら攻撃するとこがメチャクチャええ! らしい。

 アニメ観て確認したら、まさに留美ちゃんが本気でキレたらこんな感じかなあと思った。

 ポスターの方は、ハンゼイのマスターからもろたパステルカラーのヘルメット姿。

 ベースが淡いエメラルドグリーンで、縁がピンク。

 それが、安全運転を心がけて、ちょびっと緊張してるとこが美しい。

 もう一枚は婦警さんとのツーショット。

 この婦警さんは、瀬川さんいうて、いっつも堺東の駅前で交通指導やら取り締まりやらやってるお馴染みさん。

 この瀬川さんが留美ちゃんに目ぇつけてポスターのモデルになった。

 ちょびっと寂しいのは、いっしょに居てるうちのことは全然目ぇに留まってへんこと。

 まあ、うちのヘルメットは兵隊さんが被ってるようなミリタリー。いかにも戦隊もののモブキャラみたいやし(^_^;)

 

 ニヤニヤしてるうちに駅に着いて学校を目指す。

 

 さすがに部活やら夏期講習やらで登校する聖真理愛の生徒がチラホラ。

 その何人かが日傘差してる。

 うちの感覚では日傘っちゅうのはオバハン以上が差すもんで、JKがさしてるのはちょっと変。

 いま、うちを追い越していった子はキャップを被ってる。

 放課後のグランドでよう見かけるソフボの子。

 めっちゃ日焼けしてて、この子は日傘よりもキャップが似合う。

 うちは、なんにも被ってへん。

 制服の中に帽子が入ってたら被ってたと思う。

 甲子園の入場行進でプラカード持って選手の前を歩いてるJK。

 あの帽子がええなあ。

 御同輩の後姿を観察してるうちに学校に着く。

 

 階段を上がって職員室に向かう廊下。

 

 ちょうどペコちゃん先生が出てくるとこ。

 大きく腕を回して――さあ、がんばるぞ!――的な感じで、向こうの方へ歩き去って行く。

 微妙にタイミングが合わへんで、声をかけそびれる。

「失礼しまぁ……」

 最後まで言い切らんうちに小鳥遊先生が団扇でオイデオイデしてる。

「僕と酒井くんだけやから、ここでええよね」

「はい、めちゃ冷房効いてますし!」

「ハハ、そうやな。今から相談室とか行ったら蒸し風呂やしなあ……はい、通知表と成績伝票。ほかの配布物は榊原さんに預けといたさかい」

「はい、昨日留美ちゃんからもらいました」

 ほんまは通知表とかも預けてもろてもよかったんやけど、こういうとこにキッチリしてる先生はええ先生やと思う。

「あんまりいい成績やないけど、欠点もあれへん」

「わあ、良かった」

「一年やったら『まあ、がんばりやぁ』で済ますねんけどね。もう二年生の夏休み、進学とか考えてるんやったら、ちょっとなあ……」

 痛いとこを突かれた。

「怒られるかもしれませんけど、出たとこ勝負で行こぅと思てます」

「出たとこ勝負なあ……」

「はい、いままでいろいろあったんで、あんまり深刻に将来て考えたことないんです」

「ああ……お家の事は、ちょっとは聞いてるねんけど……暑いなぁ、ちょっと待って、麦茶淹れてくるわ」

「あ、すみません」

 ああ、うちのために間ぁあけてくれはったんや。

 先生は、再任用で、うちのお祖父ちゃんと同い年。ちょっと似てるかも。

「はいどうぞ」

「ありがとうございます」

 出されたグラスは大振りで、日の丸がプリントされてる!

「日の丸は虫よけにきくんや」

「アハハ……」

 微妙に分かってしまうねんけど、スルーしとく。

「声優やっていくつもりなんか?」

「あ、えと……」

「百武真鈴いうえらい先輩もってしもたしなあ」

「真鈴先輩知ってはるんですか?」

「うん、一年の時担任してた」

「え、そうなんですか!?」

「真鈴は才能もあるし、行動力も頭抜けとおる。企画やらプロデュースの能力もすごい」

「はい、そうですね」

「まあ、根はただのイチビリやけどなあ」

「イ、イチビリ!?」

「うん、後先考えへんとこがある。イチビリ根性で百武真鈴と田中真央を使い分けとった。まあ、それだけでも大したやつやねんけどな。ちょっと危うい」

「危ういですか?」

「あいつは、人の才能とか力量とかも見える奴で、生徒会もそっちの仕事もそつがない。あんたも、そんな真鈴に目えつけられた一人や」

 ああ、よう見てはる(^_^;)

「生徒会やる言うた時に、この人の話をしたんや」

 本立てに手を伸ばして新聞を出しはる。

 新聞には二十歳の将棋名人の写真と記事が大きく出てる。

「この名人は何十手、何百手先まで読んで駒を打つ。『真鈴、何十何百とは言わんけど、ちょっとは先の事読んで進めてるんかぁ?』て聞いた」

「なんて答えはりました、先輩?」

「『出たとこ勝負です!』やった」

 やっぱり。

「まあ、そういうことも頭に入れて考えてくれると嬉しいかなあ」

「はい」

「進学を考えるとして、仮の話としてな」

「はい」

「どんな学部を考えるのか、いくとしたら私学でええのか、そこらへんはどうや?」

「あ……えと、いざとなったら坊さんになります」

「あ、そうか、酒井さんとこはお寺やったなあ。宗旨聞いてもええ?」

「はい、浄土真宗です」

「大谷派?」

「本願寺派です」

「そうか……よし。東京と大阪の行ったり来たりやろけど、体に気ぃ付けて頑張ってください。先生で間に合うことあったら、いつでも連絡して」

「はい、ありがとうございました」

 先生もうちも腰を上げて、マウスが動いたんかパソコンの画面が点いた。

「え『JK戦士』?」

『JK戦士』のホームページが出てた( ´艸`)。

「あ、ああ、ちょっと観ててなあ、面白いアニメやなあ(^_^;)」

 微妙に焦ってはるし、それ以上のツッコミはせんと家に帰った。

 

 明日は、東京で収録。早めに台本読んでお昼寝することにする。

 そう決めると、とたんに蝉の声が耳につく梅雨明けの夏空やった。

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 
  • 声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
  • さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)
  •   

 

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RE・かの世界この世界:165『非常食』

2023-07-22 06:18:13 | 時かける少女

RE・

165『非常食』ポチ 

 

 

 

 宿のオジサンがハンマーを振り下ろして……意識が飛んだ。

 

 意識が戻ると、真っ白な中を漂っている。

 もし、真っ白じゃなくて真っ暗闇で、無数の光のドットが点滅していたら宇宙空間に放り出されてしまったのかと思う。だって無重力で浮かんでいるんだからね。

 自分の手足を見ると、もうベスの姿じゃない。フェンと出会った時の女の子の姿。

 他に比較できるものがないので、等身大なのか1/12サイズに戻ってしまったのかは分からない。

 しばらく漂っていると、頭の方から風を感じる……あ、こっちが下なんだ。

 そう思って、頭を巡らすと、真っ白な中に緑が浮かび上がって、緑の先が細かいトゲトゲになっているので森の上に落ちているんだと分かる。

 ちょっと、いろんなものが焦げる臭いと血の臭いがしたかと思うと、緑の真ん中が開けてきて、いろんな戦車の残骸が転がっているのが見える。

 このままでは、残骸たちの上に墜落してしまう!

 体を大の字にしてエアブレーキをかけると落下傘で降りるくらいの速度になった。下の様子が、さらにはっきり見える。

 

 え…………!?

 

 目を疑った。

 二両の戦車に挟まれたところに大の字に転がったトール元帥。

 そのトール元帥のお腹の上に裸の女の人が寝っ転がっていて、不自然にピクピクしている。

 なんだろうと思っていると、トール元帥が女の人をひっくり返したので顔が見えた。

 え!?

 そのショートヘアーの美しい横顔は……タングリスさんだ!

 関節が壊れた人形のようにグニャグニャになって、体がひっくり返されても首と手足が、すぐにはついてこないで、緩くぞうきんを絞ったように捻じれている。

 何してるの……?……え、ええ( ゜Д゜)!?

 ぞうきんみたいになってるわけだ、タングリスさんの体から中身が抜けてきているんだ!

 上向きになった身体には肋骨が浮かび上がり、腰の所も腰骨でつっぱらかって、手足の肉もしぼんでいっている。

 ムシャムシャムシャ グチャグチャグチャ ズルズルズル ムシャムシャムシャ

 音まで聞こえてきた。

 トール元帥がタングリスさんを食べているんだ((((;'∀'))))!

 

 ダメエエエエエエエエエエエエ!!

 

 叫びながら落ちていくと、トール元帥と目が合ってしまった!

 元帥は、タングリスさんの頭を掴んで、真っ赤な口を開けて丸かじりにしようとしているところだ。

「あ」

 元帥の目が正気に変わったのが分かった。

 元帥の頭に着地する寸前にタングリスさんの頭に抱き付いて横っ飛びに転げる。

 すっかり中身のなくなったタングリスさんは空気の抜けた浮き輪を捩じったみたいになってしまっていた。

 捻じれタングリスさんを体の後ろに隠すと、元帥が上半身を起こした。

 むかし見かけた時ほどじゃないけど、それでも起き上がった上半身だけでも二メートルほどの大きさがある。

 怖いよ(;'∀')。

「すまん、あやうく全部食べてしまうところだった」

「な、なんで、こんなことを!?」

「タングリスと、タングニョーストはわたしの非常食なんだよ」

「カロリーメイトですか(^_^;)」

「大丈夫、骨と皮が残っていれば再生するよ……おまえは、ポチか?」

「う、うん……あ、あたしは食べられるために戻ってきたんじゃないからねえ!」

「タングリスとタングニョーストの他は食べないよ。さ、タングリスをここに入れてくれ」

 元帥はポケットからエコバッグみたいなのを出した。

「そのままでは、みんなビックリするからな。なに、時がたてば回復して出てくるよ」

 骨と皮になったタングリスさんを詰めていると、どこかに隠れていたのか、四号のみんなが集まってくるところだった。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 フェンリル二世     狼族の王子

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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滅鬼の刃・30『栞と来客』

2023-07-21 16:20:36 | エッセー

 エッセーラノベ    

30『栞と来客』   

 

 

『お祖父ちゃん、お友だちがいらっしゃったわよ!』

 

 図書館に行くと言っていた栞が階段の下から呼ばわります。

 ドアホンの調子が悪いので、来客は玄関の戸を叩いています。

「はい、どちらさまでしょうか?」

「○○と申します、大橋さんは御在宅でしょうか?」

「あ、祖父ですね、少々お待ちください」

 というやり取りがあって、最初の『お祖父ちゃん、お友だちがいらっしゃったわよ!』に繋がります。

 

 栞は、こういうところがあります。

 来客があると、その声の調子でおおよそのところを察してしまいます。

 セールスや勧誘などは、いちいちわたしに次げずに対応し、たいていは撃退してしまいます。

 わたしへの来客も、勘なのか、どこかで憶えたのか「町会の○○さん」「公〇党の▢▢さん」「共〇党▢▢さん」「同窓の○○さん」「お友だちの○○さん」と告げる、あるいは呼ばわります。

 小さな家なので、たいてい栞の声も来客に聞こえてしまいます。

 単に「お客さ~ん」とか「誰か来てるよ」ではそっけないと思っているようです。

 来客も「お友だちの~さん」などと呼ばれると気分が良いようで、栞の評判は上々です。

 一度「お友だちの○○さんよ」と言って失敗したことがあります。

 やってきたのは、友人○○の息子でした。

 前の月に○○は亡くなっていて、葬儀の後、遺品の整理やら連絡を手伝ったお礼に息子さんがお礼に来たのを間違えたんですね。声がよく似ていたので、つい間違えたのです。

 栞は恐縮していましたが、息子の方は「ひょっとしたら、親父も付いてきたのかもしれません」と床しく思ってくれました。

 

 さて、今日の来客は武者走といいます。

 

 お気づきになったかもしれませんが、わたしのサブペンネームが武者走で、こいつの苗字をそのまま使わせてもらっています。武者走はずっと高校の先生をやっていたのですが、再任用も五年前に終わって、暇を持て余している不良老人です。

「もう古希も超えてしもたし、ちょっと現役時代のことを振り返っとこと思てなあ。自分で書いてもええねんけど、お前以上に根気も文才もあれへんし、ブログに書いてアクセス少なかったら凹むしなあ。お前やったら、しょっちゅう書いてて慣れてるやろ。気の向いた時でええからさ、まあ、散歩のついでに寄って語る感じでさ、文章にしてくれへんか」

「その気の向いた時っていうのは、俺のか? お前のか?」

「あはは、まあお互さまや(^_^;)」

 

 そこへ、栞がお茶を持ってやってきました。

 

「なんだ、図書館行くんじゃないのか?」

「ふふ、こっちの方が面白そうだし。お祖父ちゃん、引き受けたら?」

「簡単に言うなよ」

「お祖父ちゃんもネタ切れで、ここのところ停まってたじゃない」

「そうか、ひんなら話は決まりや!」

「おいおい」

「おいおい書いてくれるんだそうです」

「そうか、話は決まった。そうや、記念に一杯やろうや。栞ちゃん、お代は俺が持つからデリバリーでなにか頼んでくれへんか」

「あ、やったー! 晩御飯の心配無くなったぁ(^▽^)/」

 

 ピザと寿司と缶ビールで盛り上がり、肝心の記事のネタは次回からと言うことで、迎えに来た息子に介抱されながら悪友は帰っていきました。

 はてさて、どうなることやら。

 

☆彡 主な登場人物

  •  わたし        武者走走九郎 Or 大橋むつお
  •  栞          わたしの孫娘 
  •   武者走                   腐れ縁の友人

 

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・041『テスト休みと終業式と』

2023-07-21 10:02:07 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

041『テスト休みと終業式と』   

 

 

 テスト休みというらしい。

 

「え、うそっ」

 

 小さく叫んでしまった。

 期末の最終テストが終わったホームルーム、藤田先生が「明日から休みだけど……」と切り出した。

 で、あとの説明も聞かずに喜んでしまった。

「この間、先生たちは採点をしたり成績を付けたり会議をしたりする。出来の悪い奴は終業式までに呼び出して指導することもあるから、バイトなんかしてないで家に居ろ」

 付け加えた但し書きは気いちゃいない。

 とにかく、このクソ暑い中、冷房も無い(扇風機すら無い!)学校に来なくていいというだけでラッキー!

 

 テスト休みは四日間。うち二日は冷房の利いた希望が丘の結婚式場で撮影助手のアルバイト。

 

 そして、七月二十日の今日は終業式。

 家と結婚式場の冷房に慣れてしまって、ちょっとゲンナリの予感。

 それで、百均で買った携帯扇風機を持っていく。

 工夫して、日傘の柄にマジックテープで留める。

 これだと、駅のホームとかで畳んでても使える。

 

 パシュ

 

 改札を出て傘を開く。扇風機を顔の位置につけ直して、スイッチオン!

 うん、ちょっとマシ。

 信号待ちで、一瞬お巡りさんの視線を感じる。

 え、なんかした?

 お巡りさんは一瞬だったけど、信号待ちの人たちがチラチラ見てる。

 あ……ああ、JKの日傘は、ちょっと珍しいんだ(^_^;)。

 

「え、なに、そのカワイイの!?」

 

 机に突っ伏していると真知子の声。

「子どものおもちゃ? でも、アイデアねえ!」

「あ……」

「ああ、ピンポイントでも、けっこう涼しい!」

「あ、こっちもこっちも」

 お馴染みが寄って来て、ちょっと取り合い。

「このサイズなら単三電池なんでしょうが、どこから入れるんでしょうねえ?」

「あ、分解しないでね(^_^;)、ちなみに、充電式だから」

「おお!」

 ロコが大げさに感動する。

「この軽さで充電式! メーカーは?」

「あ、たぶん中国」

「中国?」

 え、なんで不思議? 十円男もこっち向くし。

「充電はどこから……」

「あ、そこ、USBで」

「「「USB?」」」

「え、ああ、ゲーム機とかパソコンとか……」

 言いながらしまったと思った。

 この時代、ゲーム機もパソコンも無い。きっとUSBなんかもないんだ。

「さすがは人民中国、毛沢東語録だけじゃなかったんだ!」

 変な感動をする十円男、ちょっとヤバイ。

 

『全校集会、全校集会、校庭で終業式をやるので、全校生徒は校庭に集合しなさい』

 

 校内放送がかかって、扇風機騒動は中断。

 やれやれ……。

 

 でも、ピーカンの校庭で終業式とかやる!?

 ついこないだは光化学スモッグとかで外に出るなって言ってなかったぁ?

『一年生は、ようやく学校生活にも慣れ、二年生は中だるみ。三年生は、いよいよ受験が射程距離に入って臨戦態勢です』

 のっけから校長はカマシてきた。

『世の中では四当五落とか言いますが、四時間睡眠では身が持ちません。昼寝も含めて六時間は寝るようにしてください。四時間五時間の睡眠では、脳が十分には覚醒しません。覚醒しきっていない状態での勉強は苦痛なものです。勉強が苦痛だと刷り込まれてしいまうと、その反動で大学に進学してから勉強も研究もしないダ学生になります。ダ学生のダとは駄目の駄、堕落の堕の云いであります。有意義な夏休みを心がけて……』

 もっともな話なんだけど、みんなあまり聞いてない。

 騒がしいというんじゃないいんだけど、選挙期間中、横断歩道で青信号待ってる間に聞きたくもない選挙演説聞かされてる感じ。

 次に朝礼台に立ったのは、生活指導の若杉先生。

『先日、駅向こうの雀荘から「授業時間中にマージャンをやってる生徒がいる」と通報があった。出かけると、本校生三人と他校生一人で卓を囲んでいたので指導した』

 三年生から、微妙に不穏な騒めき。

『未成年の雀荘出入りは、県の条例でも禁止されている。金銭を賭けていることは確認できなかったが、賭けていたとしたら賭博行為にあたり、完全に違法で……』

 次に保健室の先生の注意。

『中には万博に行く人もあるでしょうが、万博の会場は、殺人的な混雑です。六月に入ってから日射病で緊急搬送される人が大勢出ています。万博に限りませんが、夏休み中に出かける人は十分に気を付けてください。水分補給に留意するとともに、日差しを避けるように。帽子、日傘などが有効です』

 日傘のところで、クスクスと笑いが入る。

 やっぱ、この時代、JKの日傘はギャグに近いみたい(^_^;)。

 

「ねえ、万博の件だけど」

 

 教室に戻って、藤田先生が来るまでにお仲間で相談。

 話して見ると、みんな旅費を稼ぐのにバイトを入れている。

「まあ、旅費を稼ぐのに三週間以上はかかるから、出発はお盆過ぎだね」

 たみ子が副委員長らしく提案してくれて大筋が決まる。

「宿は、大阪に親類がお寺やってるから交渉してみる」

 佳奈子がいちばん気がかりな宿泊問題に解決策を言ってくれて、ほぼ解決した。

 

 一学期最後のホームルームで成績表をもらう。

 数学が平均点を下回ってたけど、まあまあの点数。

 めでたく一学期が終わった(^▽^)/。

 

彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
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RE・かの世界この世界:164『瀕死のトール元帥』

2023-07-21 06:36:58 | 時かける少女

RE・

164『瀕死のトール元帥』テル 

 

 

 

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 
 少年巨人族のアドバイスで野営のテントを張り終えたとき、森の中央あたりでとんでもない音がした。

「え、なに?」

 ペグを打つ手が止まって、目を向けた時にはヒルデもタングリスも駆け出している。

「ケイト、行くぞ!」

「うん!」

「わたし」

「ユーリアは少年と残れ! ロキもだ!」

 ペグもハンマーも放り出し、ケイトと並んでカテンの森を奥に向かって走る。

 ヒルデたちの姿は見えなくなっているけど、森の真ん中と思われるあたりから煙が立ち上っているので、それを目当てに奥を目指す。

 奥に近づくにしたがって、鉄と油と肉の焼ける臭いが濃くなって息苦しく、目もシカシカしてくる。

 

 うわあ……………………(;'∀')

 

 言葉にならなかった。

 学校の校庭ほどの範囲に木々がなぎ倒され、その木々を押しつぶしたり下敷きになったりして数十両の戦車が擱座している。煙や炎を噴き出しているものや、これでも戦車かと目を疑うようなひしゃげ方をしたものばかりで、まともなものは一両もないありさまだ。

 そして、その戦車のことごとくがトール元帥の部隊の所属を示すミョルニルハンマーのマークがついている。火や煙を噴いている車両からは肉の焼ける臭いがして、戦車の周囲には半ば焦げた戦車兵たちの骸が転がっている。

「あ、あそこに!」

 タングリスの声がして、わたしたちも、そこを目指した。

 砲塔が吹き飛んだ五号戦車の横にトール元帥が横たわっている。

「元帥、しっかりしてください!」

 タングリスが駆け寄ってトール元帥を抱き起す。ヒルデは比較的無事な車両からAEDを取り出して、元帥の軍服の胸をはだけようとする。

「姫、そのようなものでは、もう間に合いません……」

「元帥!!」

 ヒルデの呼びかけに、元帥はようやく目を開けた。

「わたしの手にも負えないところまで来ております、なんとかカテンの森まで撤退してきましたが……ここまでです……姫たちはお逃げなされ……別の次元に……異世界に……」

「じい、死ぬな!」

「間もなく、敵の追手が……」

「元帥!」

 ちょっと違和感……トール元帥が普通の人間の大きさになっているのだ。

 そうか、デミゴッドの呪いめいたものが元帥にまで影響しているんだ。

 若返って消えてしまわないのは、トール元帥の神性によるものなのかもしれない。

「元帥、タングニョーストは?」

「激戦の中で行方がしれません……おそらくは、退路を確保するために……」

「元帥、アルティメイトリカバリーを」

「タングリス(‘꒪д꒪’)!」

 ヒルデが目をむき、元帥が息をのんだ。

「このために、自分は存在しているのです」

 そう言うと、タングリスは軍服を脱ぎ始めた。

「タン……グリ……」

 数秒で美しい裸身を晒したタングリスはトール元帥の上に覆いかぶさっていく。

「お、おまえらは見るな!」

 わたしたちの存在に気付いたヒルデが体を張って隠そうとする。

「あ、あわわわ……((;゚Д゚))」

「すまない!」

 ショックを受けているケイトを引きずって焦げた木の陰に隠れる。

 
 ア! アッ! アア……アアアア……!

 
 苦痛とも喜悦ともとれるタングリスの声が森の中に木霊する。

 この声を聞いてはいけない! 聞かせてはいけない!

 テルの頭を抱えるようにして木の陰に蹲った。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 フェンリル二世     狼族の王子

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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銀河太平記・171『緊急招集かぁ!?』

2023-07-20 14:16:34 | 小説4

・171

『緊急招集かぁ!?』緒方未来 

 

 

 明日からまたパスカルの診療所。

 

 めちゃくちゃ気が重い。

 鉱山の医務室で発見したメディカルストックの不正会計。

 金額は知れている。一年分の操作でわたしの給料一か月分ちょっと。

 あくる朝には「適性」な数値に書き換えられていたから放っておいても、そうそうまずいことにはならない。

 この程度のことは開発の重点が月から火星に移った百年以上昔からある。

 しかし、いっしょに確認したのが、軍警の三等兵、いや三等軍曹で幼なじみのダッシュ。

 それに、老中だったお祖父ちゃんの顔もチラつくしね。

 月よりもマシな火星の中でも、扶桑はとびきり清廉な国だ。

 国民の九割が日系、政体は征夷大将軍を元首にいただく幕府の体制。

 そこで育った人間として、やっぱ見過ごしにはできない。

 重い腰を上げてシャトル便の時刻を調べる。

 医局の車が使える身分じゃないし、レンタカー借りてまでとは思わないしね。

 まあ、帰りにプラトンのショップに寄って、月面宙返りのグッズでも漁って見よう。

 

 うう……30分に一本しかない上に時間が迫ってる。

 

 エイ!

 

 気合いを入れて玄関を出ようとしたらハンベが鳴った、それも緊急公用の赤を点滅させながら。

 ググ……どこぞで大事故とか起こって緊急招集かぁ!?

『ミク、非番のところすまない』

 ゲ、人工音声のオペレーターじゃなくて、所長の肉声だ!

「で、事故現場はどこですか!?」

『いや、救急じゃない。文化局から直接のオファーなんだ』

「文化局ぅ!?」

『ああ、ほら、なんて言ったかな……月面道路の重力を地球並みにした実験線……Moon Gravity Control……か? その開発技師のシンポジウムがあるそうなんだが、言葉に癖があるそうで、通訳が必要なんだそうだ。その通訳に緒方君、君をご指名なんだ、講師は……』

「なんで医局が通訳を……え、講師の名前、もう一回……」

『平賀照、真っ平ごめんの「平」に賀正の「賀」、照は天照大神の「照」だ』

「わ、分かりましたぁ!」

『迎えの車が、そっちに行くから。間もなく着くから、宿舎の玄関前で待っていればいいそうだ』

「ガッテン!」

『よかったぁ、じゃあ、頼んだぞ!』

 

 そうか、テルが来るのか。

 テルは天才だけど、そろそろ十五になろうかと言うのに癖のある幼児言葉。

 あの子の言葉は翻訳機では無理だ。

 よしよし、ミクおねえちゃんが完ぺきに訳してあげよう(^▽^)/

 こんなことなら、ダッシュも呼んであげられたらいいんだけど、奴は軍人だしね。

 まあ、シンポジウムなんて、さっさと終わらせて遊びに行こう!

 

 で、宿舎の玄関に迎えに来たのは軍の車を運転するダッシュだった。

 

☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
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RE・かの世界この世界:163『フギンとムニン』

2023-07-20 06:17:01 | 時かける少女

RE・

163『フギンとムニン』ポチ 

 

 

 ……ちょっと予定が狂った。

 
 オーナーのオジサンがうつむいたまま呟いたよ。

 あんまり密やかな声なんで、どこかに人が隠れていて、思わず漏れた声かと思ったくらい。

 でも、すぐに顔を上げて、あたしとダグ(フェンリル二世)の顔を見たんで、オーナーだと分かった。

「仕方がありません、ここで処理しましょう」

 オバサンもゆっくりと顔を上げたよ。

 ダグはどうしているのかとチラ見したよ。

「え……ダグ?」

 ダグは「ところで、オーナーさんたちは半神族じゃありませんね……」の、最後の「ね……」の顔のまま固まってしまっている。

「いやはや、おどかしてごめんね、ポチ」

「ポ、ポチ( ゚Д゚)!?」

 いきなり真名で呼ばれてしまったんで、思わず両手で頬っぺを挟んで、ムンクの『叫び』みたいに驚いてしまったよ。

「あなた、この子の今の名前はポナですよ」

「ああ、そうだったな。ポナ……」

「いえ、わたしはルポライターのエリザベス……」

「もういいのよ、あなたは素直な子だから、フェンの言うままに、ここまで来てしまったのよね」

「フェンは悪い奴じゃないんだけど、思い込みがきつくて、自分の目的の為に人を巻き込んでしまう」

「もう、フェンの力だけで立て直せるほどユグドラシル(世界樹)は簡単じゃないのよ」

「フェンには、少し眠ってもらって、ポナは姫のところに戻ってもらう」

「でも……いえ、あの、いったい、お二人は?」

「主神オーディンに仕える者だよ」

「あなた、それは……」

 オバサンがオジサンの手を握った。なんだか、あたしが聞いてはいけない話のようだ。

「いいじゃないか、また出会うこともあるだろう。わたしはフギン。家内はムニンという」

「おじさんがフギン、おばさんがムニン」

「もともとはトール元帥の部隊に居たんだけどね。さまざまな異世界に飛んで情報を集めるのが仕事なんだ」

「時の女神は、もうユグドラシルには居ないわ」

「え、ええ(꒪ȏ꒪)!?」

「姫が、このままブァルハラに進まれても何も解決しない。オーディンから姫の進むべき道を示すように命じられてきたんだけどね、わたしたちの姿は、もう姫には見えないんだ。それで、こちらの世界にやってきたポチ(ポナだって(^_^;))に頼もうと思ったんだけどね、フェンが先に……」

「それで、ここに宿を作って、ね……」

「今夜、眠っている間にケリをつけるつもりだったんだがね」

「フェンが余計なことを言うから」

「まだまだ、こいつは子どもだからな」

「じゃ、あなた」

 オバサンがカウンターからトンカチのようなものを取り出した。

「釘でも打つんですか(^^;)?」

「まあ、釘をさすってとこかな」

 オジサンが釘を出して、オバサンに差し出した……そのトンカチ、見覚えがあるよ。

「ミョルニルハンマー・プチ」

「トール元帥の部下だったって言ったでしょ」

 釘はオバサン、ハンマーはオジサンに持ち替えられた。ちょっと儀式めいている。

「これから起こること、しっかり見ておくんだよ。ポチが人形になって、そして、原寸大になったのは意味のある事なんだから」

「う、うん」

「じゃ……」

 オバサンが目の高さに持ち上げた釘をオジサンがハンマーで打ち付けた。

 ガシッ!

「え!?」

 息をのんだ。

 釘を打つ音は、ごく小さい『カツン』という音なんだけど、『ガシ』って音は、となりで固まってるフェンの頭からしたんだよ。

「え、ええええ!」

 直接釘が撃ち込まれたわけでもないのに、フェンの額にヒビが入って、みるみる全身に広がって行ったかと思うと。

 パリン

 儚い音を立てて、フェンは無数のポリゴンになって崩れていってしまった。

「さあ、こんどはポチの番だ」

「え?」

「大丈夫、死ぬわけじゃないから」

 オジサンがハンマーを一振り……目の前が真っ白になった……。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 フェンリル二世     狼族の王子

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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くノ一その一今のうち・65『再びの秀長さん』

2023-07-19 10:54:56 | 小説3

くノ一その一今のうち

65『再びの秀長さん』そのいち 

 

 

 豊国神社の秀長さんに挨拶してから本丸に向かった。

 

 秀長さんは詫びてばかりだった。

『そうか、空堀はフェイクでしたか……いやはや、はんぱなことを教えてしまって、かえって木下に利用されてしまいましたね、申しわけない』

「いえ、お守りのお蔭で助かりました」

『少しでも役に立ったのなら嬉しいです……確かに天守の北側に抜け穴を作るという話はありました』

「あったんですね?」

『北側には、元々、大川の水を引き込んで舟入にしたところがあったんです。建築資材やら城内で入用なものを運ぶには便利です。大阪湾から直接船で運べますからね。でも、それは城の内側に作られていて、外側への連絡はありません』

「船で侵入されることは想定していなかったんですか?」

『同様な舟入は石山本願寺のころからあります。総見院様も、ここを何度かお攻めになりましたが、大手口の千貫櫓同様、最後まで陥せませんでした』

「千貫櫓?」

『はい、石山合戦で攻めあぐんだ総見院様が「あの櫓を陥した者には千貫文の褒美をやるぞ」とおっしゃって付いた名前です。今の貨幣価値で一億円以上でしょうか。櫓の名前は兄が引き継ぎ、徳川も使って今日に至っています。あ、そうそう、舟入ですね。その舟入まで、兄は秘密の通路を作っていて、一部は穴になっています』

「それが抜け穴なんですね!?」

『寧々さんは「禿鼠のヌケヌケ穴」と呼んでましたがね』

「ヌケヌケ穴?」

『アハハ、兄は通路を通ってヌケヌケと女の元に通っていたんです。抜け穴を使うことで寧々さんには内緒というサインにしたんですねえ』

「え、あ、どういうことでしょ? 関白太政大臣なんだから、なんでもできたでしょうに?」

『ポーズですよ。天下の秀吉でも女房の寧々さんには頭が上がらず、抜け道を使って女通いをしているという。ある時などは、わざと情報を漏らしましてね、会議の後、家康殿がここを通るように仕向けておいて、わざと見つけさせたんです』

「え、なぜなんですか?」

『狼狽えてみせるんですよ。わたしも前田殿もいっしょだったんですが、小袖を尻っぱしょりにして頬かむりの兄は傑作でした。「い、いや、これは違うんじゃ、大川でウナギが取れるというんでな、夜に取れるんじゃ。のう小一郎、尾張のの中村でも、よう尻っぱしょりで取ったろうがあ(^_^;)」って、顔を赤くして。「兄者、ウナギなら、そのユルフンの隙間から顔を覗かせておるぞ」と指さしてやると、みんなで大爆笑になりました』

「プ( ´艸`)」

『いちおう「寧々にはナイショ(≧〇≦)!」と言うんですが、噂は、あっという間に広まります。これで、寧々さんも兄者を責めにくくなりますし、兄の人気も上がります。それに、舟入の守りは盤石だという噂にもなります。千貫櫓と同じです。名前や噂で「あそこは責めにくい」と評判が広まります』

「え、かえって抜け道を教えることにならないですか?」

『後日、ほんとうに家康殿を誘って遊女屋に行っています。家康殿自身、舟入の守りを見て、攻略の難しさを自覚するという寸法です。そして、密かに南への抜け穴も指示し、これは秘密にします。天下は南の方こそ本物だと思います。まあ、そういう虚々実々の話でみんなを煙に巻いて楽しんでいたんです。あ、そうそう、抜け穴……いや、埋蔵金の隠し場所ですね……』

 

 気が付いたら日が傾いている。

 

 秀長さんは、昨日の失敗で、少しナーバスになりかけていたのを解してくれた。昨日のしくじりを引きずっていたら、きっとうまくいかなかっただろう。

 わたしは閉館間近の天守閣に上ってあたりを付けた。

 最後に秀長さんは、スマホのマップを見ながら、いくつかのポイントを示してくれていた。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
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RE・かの世界この世界:162『街はずれの宿』

2023-07-19 06:25:51 | 時かける少女

RE・

162『街はずれの宿』ポチ 

 

 

 

 あれ…………?

 そう言ったきり、ダグ(フェン)は車を止めてしまった。

 

「どうかしたの?」

「街の様子が変わってしまってるんだ……大きくなってるし……」

 わたしは初めてだから、大きいもなにも分からないんだけど、ダグの表情から、うかつにデミゴッドブルクには踏み込めないということは分かった。

「さっきの車で、てっきりデミゴッドブルクは縮んでいると思ったんだが……」

「どういうこと?」

「あの婆さんは命のあるうちに葬られようとしていた。半神族は肉体が滅ぶと神になる。だから肉体には未練が無いんだ……だから、肉体のための街や世界にも未練がないんだと思っていたんだが……それが、このありさまだ。うかつには踏み込めない」

 市街地からは一キロほど手前だけども、建設中の機械や工事車両の音が聞こえてくる。

「今まで通って来たところは、あんまり人気(ひとけ)は無かったでしょ」

「ああ、やつらは、さっさと肉体を捨てて、ヨトゥンヘイムを征服するんだとばかり思ってたからな……どこかで宿をとって考えよう」

 

 しかし、なかなか宿はとれなかった。どこも、工事関係者が泊っていて空き部屋が無かったのだ。

 

 街はずれの四軒目で泊まることができた。

 築五十年ほどの二階建てのホテル。豪華でもきれいでもないけど、清潔で品のいいコロニアル風。街はずれでクラシックなところが敬遠されるんだろうか。

「先日までは工事関係者で一杯でしたが、ようやく落ち着きました。ごゆっくりお休みください」

 フロントの、たぶんオーナーのおじさんが、のんびりと言う。

「こちらへは、お仕事ですか?」

 部屋のキーを渡しながらオバサンが続ける。

「ああ、デミゴッドブルクのルポをね。ぼくらは、夫婦そろってルポライターなんだ」

「それはそれは」

「静かだということでは、スヴァルトアルムヘイム随一ですので、記事をお書きになるのにはうってつけです」

「よかったわね、ダグ」

「さ、お部屋へご案内いたします」

「どうも」

「ところで、オーナーさんたちは半神族じゃありませんね……」

 

「「…………!」」

 

 ダグの一言でオーナー夫妻が固まってしまった……。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 フェンリル二世     狼族の王子

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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鳴かぬなら 信長転生記 132『忠八の慰労会』

2023-07-18 11:35:36 | ノベル2

ら 信長転生記

132『忠八の慰労会織部 

 

 

「そがなことなら、うちが案内しょう」

 

 乙女会長は気安く腰を上げ、わたしと武蔵の前を歩いた。

 学園に二宮忠八を訪ねたんだけど、約束の時間になっても現れない。それで生徒会室に行ったら、生徒会長自らが案内してくれることになったんだ。

「いやあ、あそこは、学園の中でもいちばんややこしいところにあるきなあ、案内無しではぜったい迷うぜよ」

「忠八くんは、ずいぶんと忙しいようですね」

「もうしわけない。飛行部は場所をとるんでクラブハウスには収まらんき、奥の奥に行ってもろうちゅー。いまは、クラブ予算の折衝の時期やき、ちっくと走り回っとるんや思う。校内放送も頼んじょいたきね」

『飛行部の二宮忠八くん、二宮忠八くん、御来客ですので至急部室にお戻りください。繰り返します……』

「あ、さっそく……」

「生徒会役員や部長はGPSをつけろという声もあるがやけんど、勘弁してもろうちゅー。GPSは防犯カメラとリンクしちゅーき、行儀悪うしちゅーとこなんか見られたらかなわんきね。あ、足もと気ぃ付けて。そこ、頭打たんように……」

「おっとっと……」

「こんどはこっちを……」

 

 安全対策さえしておけばテーマパークのラビリンスになりそうなところを抜けて、くたびれた倉庫の前に出る。

 

「まあ、放送もかかったし、ざんじ来るぜよ。それじゃあね(^▽^)」

「お世話になりました」

 不愛想な武蔵の分も合わせて礼を言って頭を下げる。振り返って倉庫を仰ぐと背後で「ウワア!」と乙女会長の悲鳴とガッシャーンと物の崩れる音。

「大丈夫ですかぁ?」

『アハハ だいじょぶ だいじょぶ(^_^;)……』

 

 やっと乙女会長の気配が消えると、今度は武蔵。

 

「殺!」

 剣呑な気合いと共に太刀を抜く。

 慣れっこになっているので、肩に手を置いて制止する。

 見上げると、瓦礫とスクラップの山の向こうからハングライダーで忠八が降りてくるところだった。

 

「いやあ、すみません、予算折衝であちこち飛び回っていたので、申しわけありませんでした」

「いいよいいよ、こっちも朝に電話を入れたとこだったし」

「どうぞ、散らかしていますが、お入りください」

 クキ クキ ガタピシ ギーー

 大戸の脇の潜り戸を、忠八以外では絶対開けられないだろうという感じで開け、パチンと電気のスイッチを入れる。

「おお……」

「散らかっていて、申しわけないです(^_^;)」

 並のちらかりようではない。

 一見、無造作無分別に散らかされているようだけど、物づくりの勢いと、その試行錯誤が結晶したようなスゴミがある。

 わたしは、数々の名品を手に入れ、あるいは手に入れることができずに垂涎の眼で見てきたが、その名品のあれこれが作り上げられたのは、こういう設えの構えがあったからだろうという感じだ。

 焼き物に窯変をおこさせる窯の中、火が周って薪や炭が朱く火照りながら崩れ始めた、そんな案配を感じさせる。

「写真に撮っていいか?」

「え、あ、恥ずかしいです。あ……武蔵さん?」

 ブン!

 わ!

「いきなり抜かないでくれる!?」

「許せ、この有様に、この剣を対峙させたくなったまでだ」

「あ、あ、そうですか(^_^;)」

「忠八」

「はひ」

「この武蔵、お前のことは単なる酔狂者と思っていたが、この情熱と有様は佐々木小次郎に匹敵するぞ」

「佐々木小次郎ですか、あの、燕返しの!?」

「ああ、剣の他にはなにも分からぬ武蔵だが、これには感服いたしたぞ」

「あ、ありがとうございます!」

 褒めるにしても、自分に負けた小次郎に例える……まあ、これも武蔵の面白さだけどな。

「感心ばかりしていても仕方ない、今日は、見事に双ヶ岡から三人を飛ばした技師殿の慰労に来たんだ。いろいろ作ってきた、宴会をしよう!」

「え、あ、あ、え? そうだったんですか!?」

「ああ、そうだ!」

「いや、僕は、また、その、まだまだご不満があって来られたんだと、それなら、工場に全部揃ってますから、話が早いと思って……そうか、そうなんですか。だったら、ここは宴会には向いてませんから、そうだ生徒会室を借りましょう!」

 ということで、再びラビリンスを通って生徒会室に戻る。

 無駄足をさせたと言うので、恐縮しきりの忠八だったが、わたしも武蔵も満足だった。

 

「いやあ、ほんなら皿鉢料理も出さんとならんろ(^▽^)!」

 

 乙女会長は目をへの字にして歓待してくれ、副会長の巴御前たちも加わって陽気な慰労会になる。

 

 思えば、信長がやってくるまでは、ここまで学院と学園の交流は無かった。

 転生への覚悟とコンセプトが違うからと、互いに敬遠するところがあったが、それは違った。

 市といい、リュドミラといい、いっしょに行動すると、とってもいい奴だった。

 茶姫を扶桑に連れ帰ったのは、事の成り行きと言えば身もふたもないが、自然な成り行きにさせたのは、信長と、扶桑、三国志の熱い男や女たち。

 やはり、秋が動き始めた。

「ほお、おまんらも行くか!」

「はい、陰ながら道を付けます、下準備の根は張ってきましたから」

「そうか、出来るなら戦はしたくはないが、避けられんものならやらんとならんろう」

「わたしも行きたいなあ」

「巴、おまんは義仲さんを待たんといかんやろう」

「分かってる、義仲どのが転生された暁にはな」

「しかし、大丈夫ですか、武蔵さん殺気に満ち満ちてきましたけど」

「なあに、これがある」

「ちょ、織部、これは国境を超える時でいいだろ!」

「いや、何事も準備が大事だ……えい!」

「え、あ、わ!?」

 もう慣れたもので、あっさりと武蔵の目にカラコンをハメてやる。

「「「おお!」」」

 

「あ、あ…………そんなに見つめられると、ムサ、困ってしま……(*´△`*)」

「ああ、そうや、武蔵はムサちゃんに変身するがやった!」

 

 武蔵をムサちゃんにして学園を後にし、国境を目指した。

  

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)

   

 

 

 

 

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RE・かの世界この世界:161『棺の中から』

2023-07-18 06:10:21 | 時かける少女

RE・

161『棺の中から』ポチ 

 

 

 

 四人とも固まってしまったよ(;゚Д゚)。

 
 吸血鬼がベッドに使っているのでなければ死体が収まっているはず。その棺桶から声がしたんだからね。

 でも、固まり方が違う。

 あたしはオカルト的な驚き、フェンは犯罪の証拠を見てしまったように驚き、中年夫婦はちょっとした隠匿物資を見つけられたような驚きだったよ。

 

『あ……だれか、人がいるのかい?』

 

 気まずそうに棺の声が続いた。

「実は……棺の中は母なんだ。死亡予定日には間があるんだけど、仕事の都合で、今日しか墓地にいけなくってね……そりゃあ、死亡前埋葬は違法だけども、みんなやってることだし……むろん、母の意思は確認したよ」

「そうなの、そもそも言い出したのはお義母さんの方からなの。そうでしょ、お義母さん?」

 すると、ほとんど音もなく棺の蓋が開いて、顔色の悪いお婆さんが上体を起こした。

「よっ……こらしょっと。そうなの、言い出したのはわたしよ。息子は公務員で、内容は言えないんだけど、とっても忙しい仕事をしているの。それが、来週……グズグズしてたから、もう明日からかしらね、とても忙しくなるの。国や社会にとっても大事な仕事でね、この春に課長になったばかりで、繁忙期に休むわけにもいかないし。それで、わたしから言ったのよ。通りすがりのお人なんでしょうけど、これも縁だと思ってちょうだい。この通りだから」

「あ、え、死に装束で手を合わされましてもね(^_^;)」

「じゃ、頭を下げるわ。これ、この通り。ほれ、あんたたちも」

「わ、分かりました。見なかったことにします。見なかったんだから、エンコしてることにも気づかないわけだから、修理は他の人に見てもらってください。じゃ、いこうベス」

「う、うん」

 回れ右した後ろから、小さく「ありがとう」の声がするけど、気持ちは「手を貸してくれたっていいじゃないか」が感じられ、なんだか、あたし達の方が悪いことをしたみたいで、面白くないよ。

 フェンが車を出すのを待って声をかけた。

「生きたまま葬るってありえあないでしょ」

「死んだら神さまだからね、そんなに抵抗はないんだろう。棺も生前葬仕様で、最長一年の生命維持ユニットが付いている。違法なことなんだけど、半神政府も実質は見て見ぬふりなのさ」

「公務員って言ってたわよね。公務員だったら、有給ぐらいなんとでもなるって気がするんだけど」

「あいつは、情報管理局だ。以前、潜り込んだ庁舎で見かけたことがある。なにか大きな動きがおこる前兆なのかもしれない」

「半神族って、わけわからない」

「ちょっと探りを入れてみよう」

 ニヤリと方頬で笑うフェン。

「フェン、変な笑い方しないでよ」

「フェンじゃない、ダグだよ。ベス」

「そうだったわね」

 フォルクスオーパーはデミゴッドブルク方面行きの車線に移っていった……。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
 ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 フェンリル二世     狼族の王子

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

コメント
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