大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第60話《お姉ちゃん!?》

2024-01-24 06:35:24 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第60話《お姉ちゃん!?》さくら 




 テイク5で救世主が現れた……。


「あたしが、やってみましょうか?」


 なんと、東亜美役の一ノ瀬薫さんが名乗り出た。

 そして、一度はるかさんの殴り方を見た後キッパリと言った。

「殴る方は問題ないと思います。ふだん人に手を上げたことがない人ならそんなものでいいと思います。変に腰が入っちゃうと、ちょっとケンカ慣れした人間に見えますから……問題は受け身の方ですね。一発張り倒してくれます。思い切りでいいです」

「ほ、ほんとにいいの?」

「ええ、慣れてますから」

 なんせ、このシーンは、はるかがアメチャンを握ったまま張り倒すところなので平手ではなくてグーの握りこぶし、下手をすると怪我をする。それで、どうしても、あたしもはるかさんもわざとらしくなってしまう。

 そこを本気でやれと涼しい顔で言うもんだから、なんだか気楽な流れで、やってみることになった。

 ブン!

 ドン ゴロゴロ

 派手に吹っ飛んだ薫さんが、コンクリの中庭に叩きつけられ、ゴロゴロと転がった。

「大丈夫( ゚Д゚)!?」

 駆け寄るはるかさん。

「ウ……イッテー(>△<)……なんて言ったら、それらしく見えるでしょ?」

 薫さんはニコニコと立ち上がった。

「キミ、すごいね、スタントマンやれるよ!」

 殺陣師のおじさんのお墨付きになった。

「ケンカで、最初やられたフリするのに、よくこの手使ったんです」

 清楚な顔でシラっと言う。

 で、バックと顔の見えないアングルは、薫さんが演ることになった。

 張り倒すシーンは、2テイクであっさりOKが出た。

「じゃ、由香のダメージ顔撮りまーす!」

 カメラに向かう。でカチンコの音で痛い顔をしてひっくり返る。当然地面にはマットが沢山敷いてあって痛くはありません。

 このシーンと薫さんのスタントを繋ぎ合わせCGで、あたしの顔を変形させてできあがり(^_^;)。

 それにしても薫さんはなかなかの人だ。


 そして、その明くる日は大阪駅でロケ。


 ピノキオホールでの帰り道、吉川裕也役の勝呂さんと仲良くホームを歩くシーン。

 簡単なシーンなんだけど、芽生え始めた裕也への気持ちに苦労。なんとかOKが出て。今度は、はるかが、あたしたち二人を見て複雑な気分になるアップ。その後、コーヒーショップでのはるかと裕也の会話のシーン。ここは側で見学。演技の勉強。
 
 すると、ロケ現場の向こうの雑踏、一番線のホームから上がってきた人物が目に留まった。

 え……ええ!?

 フランスに居るはずのお姉ちゃんが、珍しそうにロケを見ているではないか……。



☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 
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鳴かぬなら 信長転生記 161『三蔵法師大説法会プラスアルファ・3』

2024-01-23 13:53:09 | ノベル2
ら 信長転生記
161『三蔵法師大説法会プラスアルファ・3』二宮忠八 




 扶桑と美称される転生の国には二つの学校がある。

 性別が変わった転生者の通う『転生学院』と、元の性別のままの転生者が通う『転生学園』だ。
 転生の国では『学院』『学園』と略す、近ごろでは『イン』『ソノ』と約めて呼ぶ者もいるけど、僕は学院・学園と呼ぶ。

 僕は生まれ変わっても前世と同じくというか、死んだことで中断してしまった研究がしたかったので前世と同じ男として生まれ変わって学園に居る。

 生徒会長の乙女さん(坂本龍馬のお姉さん)が理解のある人で、校舎裏の倉庫を貸してくれて、好きに実験やら研究をさせてくれている。
 もう一度現世に転生しなければできないと思っていた研究ができるんで、もう次の転生はしなくてもいいくらいだよ。

 今度の信長さんの遠征には、この二宮忠八、持てる力の全てを注ぎ込んだ。

 双ヶ岡から射出した紙飛行機は、はるか彼方のタクラマカン砂漠まで飛んでいって、信長さんたちを三蔵法師一行に変態させ、数々の冒険の末に豊盃まで進出させることに成功した。

「紙飛行機が馬に変わったのにも驚いたけんど、馬の付属品にしか見えざった三蔵法師があんなに有能ながにはびっくりしたぜよ」

 日課のように足を運んでくれる乙女さんが土佐之盛の焼き酒粕を齧りながら感激してくれる。その横には信玄さん謙信さんたち学院の人たちも来てくれて、モニターの大画面の中継を見ている。

 モニターには『三蔵法師大説法会プラスアルファ』の中継が流れている。

 大橋(だいきょう)さんのあいさつの後、イントロが長いことで有名なボレロのリズムが続いて、出てきたのが孫悟空・猪八戒・沙悟浄の三人。軽快にボレロのステップを踏み出すと、続いてステージ奥から、衣の袖を閃かせて三蔵法師!
 大説法会の触れ込みなので、有難くも、ちょっと退屈な説法が始まるのかと思っていたけど、予想を裏切って胡旋舞を思わせる情熱的なボレロ!

 さすがは、呉の大橋紅茶妃! 意表を突く粋な演出!

 パチパチパチパチパチパチ!

 モニターの中の観衆も、うちのモニターを見ている学園と学院の人たちも思わず拍手した。

「いや、まだまだこれからだろう……」

 信玄さんが顎を撫でてニヤニヤ、その横では謙信さんがポーカーフェイスのまま方頬で笑っている。

 オオ!

 会場でもこちらでもドヨメキが起こった。

 次にステージに踊りこんだのは学園一番の問題児と言われていたリュドミラだ!

 下手(しもて)から踊りこむと、三蔵法師と三人の弟子を瞬くうちにバックダンサーにしてしまい、プリマドンナよろしく華麗に情熱的にダンスを決めてくれる。

「おお、リュドミラもやるやいか!」

「スナイパーだと思っていたが、こんな才能があるとはなあ……」

 トモエさん(巴御前)も腕を組んで感心している。

「極めれば、踊りも武術に通じるものがある……エエイ!」

 二本の刀を抜いて感動するのは宮本武蔵。

 会場でもこちらでもヤンヤヤンヤの喝采の後、再び大橋さんがステージ端に立って「それでは、いよいよ三蔵法師さまの御説法になります。三蔵法師さま、中央の演壇にお進みください!」

 三蔵法師は合掌でこれに応えて、ステージの演壇に進んだ。

「みなさん、本日は愚禿三蔵の拙い法話のため、かくも大勢集まってくださり、ありがとうございます……」

 ついさっきのボレロの疲れも見せず、穏やかに語り出す三蔵に、観客は一瞬で説法に耳を傾ける姿勢に変わる。

「天竺では万余の経典を読み、数百の学僧高僧の教説を聴聞いたしましたが、それの一つ一つを述べている余裕はありませんし、さして有益でもありません」

 奥ゆかしく話を進める三蔵法師。

「仏の道を知るためには、幾百幾千幾の修業の道があります。それぞれに宗派があって、その道の為に修業に励んでおられます。いずれも尊い道で、極めれば、それぞれに悟りを得ることができましょう」

 穏やかで聞いているだけで心身が浄められる感じがして有り難い。

 だけど、新鮮味はない。

 仏教にはいろんな宗派があって、それぞれに修業に励んで、そのいずれもが正しいと言ってしまっては思考も感性も、そこで尻餅をついてしまう。

「しかし、大半の人々は修業を最後まで成就させることができません。凡夫の悲しさ、人とは忙しく、忘れやすいものなのです」

――ならば、どうすればいいのですか?――

 聴衆から声が上がる。

「信じておれば、いえ、たとえ信じていなくとも、仏は、その臨終の枕辺に顕現され浄土に連れて行ってくださいます。仏の救いに分け隔てはありません」

――何もしなくともよいのですか!?――

「そうです。ただ、ただ人間は心寂しい存在ですので、これでは頼りなく思います。ですから、時には、このように集まって信仰を確かめ、喜びを共有することが望ましいと思います。そして、この世は、人の世は不安で不完全なものです。心穏やかに日々を送り、お浄土に生まれ変わるその日まで、この世を少しでも豊かで穏やかな世の中にしましょう。この世を豊かで穏やかな国にすることが、仏の願いにも、みなさんの幸せにも繋がるのです。さっきのリュドミラさんのボレロに、わたしも弟子たちも、みなさんも穏やかに且つビビットに沸き立ちました。では、どうでしょう、みなさん、もう一度ボレロを踊りましょう。今度は、少しずつメロディーもリズムも変わります。今日、こうしてみなさんと出会えた喜びを体と心で表現してみましょう……ミュージックスタート!」

 再び、ゆっくりとボレロのリズム、それからリズムも旋律も様々に変わる。

 あるところでは盆踊りのように、別のところではアイリッシュダンスのように、またあるところではコサックダンスのように、次にはマイムマイムのように、会場の大慶公園は踊りと念仏と声明のカオスになっていった。

「忠八くん……君はとんでもないものをつくってしまったんだねぇ……」

 美的感覚には人の何倍も優れた古田織部さんが陶然と溜息を漏らす。

「いえ、三蔵法師は、紙飛行機のほんの一部でできたオブジェでしかないんです、とてもこんな……」

「悟空の頭の……緊箍児(きんこじ)と言ったか、あの輪っか」

 信玄さんが身を乗り出して背景に収まっている悟空の頭を指さした。

「信玄も気づいたか……あれは指輪が大きくなったものよ。緊箍児なら、真ん中で切れて端っこが拳のように丸まっているわ」

「なるほど……」

 謙信さんが指摘する。

「忠八くん、あの輪っかを拡大して」

「はい、織部さん!」

 マウスを五回クリックすると緊箍児は画面いっぱいに広がった。

 横にうっすらと花菱の紋が連なっている。

「あれは……御山の紋ではないか?」

 信玄さんが思いついて、みんなが身を乗り出して画面を見つめた。

 

☆彡 主な登場人物
  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主
 
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第59話《大阪府立真田山学院高校》

2024-01-23 07:23:35 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第59話《大阪府立真田山学院高校》さくら 





 連休の後半は大阪だ。


 前半の三日は埼玉H市のホールを借り切ってコンクールのシーンを撮った。そして、四日からは大阪に飛んで、舞台となる大阪府立真田山学院高校を丸三日間借りての撮影。現場近辺のシーンも含めると五十シーンを超える。

 撮りやすいモブシーンから入った。

 テスト中の教室、昼休みの中庭、演劇部の稽古場になっているプレゼンテーション教室、休み時間の廊下、昇降口、職員室。そのほとんどにはるかさんは出ている。自分自身の役とは言え、映画はお芝居だ。現実にいた友達とは違うエキストラのクラスメートを相手に、春、夏、秋のシーンを撮る。当然クラスメートとの距離感が違ってくる。

「カットォ! はるかとの距離の取り方がウソっぽい。興味はあるけど、近寄りがたい。でもってそれぞれの生活感。夕べ見たテレビの話とか、新しく開店した駅前のお店とか、宿題大急ぎでやってるとか……そういう各人の生活出して」

 監督の抽象的なダメを助監督の田子さんが演技プランに変えて一人ずつつけていく。はるかが転校してきたころの教室のシーンだけでも半日かかってしまった。

 いや、半日ですんだというべきか……。

「そこさぁ、目だけ教科書見て、目の端っこで、はるかを見るの。まず顔ね。そいで上半身、下半身、そいで全体の印象。でもって自分やクラスの人間と引き比べて距離感つかむの」

 そうアドバイスしてくれたのは、東亜美役一ノ瀬さんの従姉さん。

 H市のロケだけで終わるはずのエキストラだったけど、意外な演技力があるので大阪まで来てもらった。

 で、これを直接頼み込んだのが、はるかさん。やっぱり見る目と行動力が違うと思った。薫さんて言うんだけど、人の心を掴むのも上手い。休憩時間には自然に他のエキストラと会話して、すぐに本物のクラスメートのようにしてしまった。

「シーン増やすよ」

 監督の言葉で、薫さんとはるかさんの絡みが増えた。

「あのぉ……」

「あ……?」

 最初のよそよそしさから、テスト終了後、目だけで「できた?」「ううん」までやってのけた。で、昼には学級委員長という「役」になり、モブシーンを教室やら廊下で撮った。とりあえず場面のブリッジになるようなシーンばかりで、その多くは編集の段階で切られてしまう。

「薫さん。なんで、そんなに勘いいの?」

 思わず聞いてしまった。

「よくないっすよぉ。ただ、学校じゃ頭打ちながら生きてきたから、いろんなパターンが頭の中にあるだけで(^○^;)」

 気楽にロケ弁代わりの学食ランチを食べながら、なんだか昔からの友だちのように話した。

「このカラマヨドンての、いけますね!」

 わたしも同感だった。丼ごはんの上に唐揚げとマヨネーズと、薄目の出汁がかかっていて、東京じゃ絶対考えられないメニューだった。

「これ、連休明けから十円上がるんです」

 エキストラで、保健委員の役を演っている三好清海(はるみ)さんがグチった。

 清海さんは真田山学院高校演劇部のリアル部長。ちょうどはるかさんと入れ替わりに入学した人で、たった二人になった真田山学院高校演劇部を一人で支えている。
 しょぼくれるのが嫌なんで、「大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ」をネットで流して、内と外からクラブを守ろうとしている。同じ高校生でも、あたしなんかより立派な子がいるのが分かった。

 でも、こんなに集まるのは、やっぱはるかさんの人徳だろうね(^_^;)。


 昼からは、一番むつかしいシーンを撮った。


 わたしの演ずる由香が、はるかに張り倒されるシーン。

 二人ともバイオレンスには縁がない。

 はるかさんは、昔現実にやらかして停学をくらったシーンなんだけど、自分が演技で演るのは別物のようだ。殺陣師の人が入るときれいになるんだけど、高校生らしさが抜けてしまう。

 テイク5で救世主が現れた……。


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • タクミ           Takoumi Leotard  陸自隊員 
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やくもあやかし物語2・026『御息所のおりいった話・1』

2024-01-22 14:53:00 | カントリーロード
くもやかし物語 2
026『御息所のおりいった話・1』 




 ちょっと……ちょっと……ちょっと……ちょっと……ちょっと起きて……


 聞き慣れた声がくりかえしわたしを呼んで、十回ほど呼ばれたところで――あれ?――と思って目が覚めた。

 覚めたと言ってもほんのちょっぴり、まだ半分以上は寝てるんだけどね。

 例えばさ、朝、ラジオかテレビの音がする。いつもお母さんとか、家の人間が点けてるラジオかテレビだったら、気にせずに二度寝とかするでしょ?

 あの番組だったらまだ遅刻する時間じゃない、お母さんがフライングして、半分嫌がらせで点けたとかね。

 ところがさ、そのラジオだかテレビだとかの音がすこし変だとする。

 同じアナウンサーだかタレントだかの声、同じテーマ曲。でも、音の圧が違う。
 いつもと同じところから聞こえてるんだけど、いつもは……そう、たとえば外したヘッドホンから漏れてくるぐらいの音だったのが、イッチョマエのスピーカーから聞こえてるとかだったら――あれ?――とか思って、うっすら目を開ける。そんな感じ。

 なにぃ~~~~

 うっすら目を開けると、じんわりと驚いた。

 だって、声はいつもの御息所だけど、ベッドに腰掛けて、こちらを見ているのは、いつもの1/12サイズじゃなくて等身大。で、ちょっと大人びてる。

『六条御息所ですよ』

 え?

『やくものところに間借りしている六条御息所ですよ』

 え……うそ?

 御息所は俊徳丸が退治した鬼の腕を机の引き出しにしまっておいたら、いつのまにか変身していた。フィギュアみたいな1/12サイズの小憎たらしい女の子だよ。こんな等身大の大人の女の人じゃない。
 
 でも、まとってるオーラは馴染んだ御息所。

『これがリアル六条御息所なのです』

 ウ、言葉も大人だし。

『大事な話なので、折り目正しく現れたのです』

「そ、そうなんだ」

 見た感じアラサー……でも、光源氏って若かったよね、たしか19歳ぐらいの設定だったと思うよ。

『七歳年上ですからね』

 七歳上……なら、こんなもんか。

「そか……で、なんの用事ぃ?」

 眠い目をこすって、上半身だけ起きる。

『じつは、デラシネのことで言っておかなければならないことがあるんです』

 グッと寄せてきた顔は、さすがに光源氏に愛された才色兼備の年上美人。めちゃくちゃきれいで、ミテクレとかは17歳でかなぐり捨てたというか諦めたわたしだけど、息が詰まるんじゃないかと思ったほど。

 でもね、50センチぐらいに寄って来るとね、うっすらと目尻に小じわ。光の加減もあるのかもしれないけどボンヤリとほうれい線。

 ほんとうにリアル御息所?

「ちょっと待って」

『ん?』

 枕もとのスマホを取って、パパっと検索。

 すると、六条御息所の年齢には原作の『源氏物語』の中でも矛盾があるとかで二つの説がある。7歳年上説と17歳年上説。

 50センチに迫った御息所は後者の方だ。

 いっしゅんムッとしたようだけど、となりでネルが寝ているのを確認して、ちょっと深刻な話をし始めたよ……。

 
☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン

 
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第58話《ワケ転7ロケのアクシデント》

2024-01-22 06:56:54 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第58話《ワケ転7ロケのアクシデント》さくら 




 この連休はH市で『ワケあり転校生の7カ月』のロケだ。

 
 ドラマや映画は、けして順番通り撮るわけじゃないんだよ。役者やロケ先の都合などで、場合によってはラストシーンを最初に撮ったりする。

 H市のロケは、劇中のピノキオホールでの夏の公演とコンクールでの本選のシーンを撮影する。映画の中盤と終盤の山で、設定は劇中劇の兵庫県ピノキオホールでの『すみれの花咲くころ』の初演を市民会館の中ホール。コンクール本選の公演を大ホールで撮る。

 エキストラの高校生や市民の人たちにリアルな反応をしてもらうために『すみれ』をまるまる一本上演する。本編では両方合わせて10分もないシーンなんだけど、この連休は、この公演とそれに付随するシーンだけを撮るんだ。

 コンクール本選を撮る大ホールの観客席はエキストラの地元の高校生などで一杯。

「まず『すみれの花さくころ』を通して上演しますので、単なる公演としてご覧になって正直に反応してください。ラストだけは大きな拍手お願いします」

 助監督の田子さんが観客席に向かって頭を下げる。

 わたしは、はるかの親友の鈴木由香の役なんで、カレ役の勝呂さんといっしょに客席中央に座っている。後ろには、はるかのカタキ役で、作中の後半で仲良くなる東亜美役の一ノ瀬由香里ちゃん(ユカリン)が座っている。

 由香里ちゃんは、AKRの選抜になったばかりのモテカワ系のアイドルだけど、今回は、ちょっとイメージの違うナナメになった女子高生役。

 衣装合わせじゃ、なんだか学芸会みたいに合わないってか、ヘタクソだった由香里ちゃんがサマになっている。端役なんだけど、この子の本気度はかなりのもんだ。
 なんでも従姉が、この街に住んでいて、なかなかのイケイケネーチャンで、その従姉のところに泊まって、訓練してから本番に臨んでいるらしい。


「ね、その従姉のオネエサン来てんの?」

 本番前にユカリンに聞いてみた。

「あ、この人」

「あ、一ノ瀬薫と申します。よろしくお願いします」

 !?

 びっくりした。

 てっきり筋金入りのヤンキーのオネエチャンかと思っていた。

 入学案内に載っていそうな完ぺきな制服姿、ロングの黒髪に地味なカチューシャがよく似合っている。言葉遣いも物腰も生まれながらのお嬢様風。

「あ、今日は、エキストラなので、地味にまとめてみました。由香里が言うほどのイケイケでもありませんし……ええとぉ、これでよかったですよね?」

「うん、いいと思うけど、田子さーん。彼女ユカリンの従姉さん。エキストラやってもらうんだけど、これでいいですよね」

「え、君が……話とは全然違う清楚さだね」

「イケイケは、全部由香里に貸してありますから」

「うん、よろしくッス<(`^´)>」

 ユカリンの方がイケてるんで、みんな噴き出してしまった( ´艸`)。

「じゃ、あなたはユカリンの横で、少し迷惑そうに座っててくれます? ユカリンが栄えそうだから」

「はい、承知しました」

 折り目正しくお辞儀をすると、お嬢さま系のシャンプーの香りがした。


 アクシデントは撮影のOKが出た直後に起こった。


「テメー、いつまでも昔の傷逆撫でしてんじゃねーよ!」

 ユカリンの従姉は、そう言うとちょっとチャラ目の男子を、観客席から通路に投げ飛ばした。

 ズッドーーン!

「みんな、こいつはこんなにスカシてるけど、イケイケのアバズレでよ、バージ……グホ!」

 そこまで言った瞬間、従姉さんの頭突きをくらって、階段状の通路を舞台鼻まで転がり落ちてきた。スタッフが寄ってきてはるかちゃんをガードするような勢いだった。

「すみません。お騒がせしました」

 従姉さんは、そういうと舞台鼻まで来て、チャラオを引立てて会場から出ていった。

「連れ戻して、このままじゃスキャンダルになる」

 田子さんの声で、スタッフが駆けだし、従姉さんをスタッフの控え室に呼んだ。

「……そう、そんな事情があったんだ。よかったら、話の最初のとこだけ省いてマスコミに話してもらえるかな。スキャンダルじゃなくて、撮影のエピソードで終わらせたいんだ。ユカリンのために頼むよ」

 男は以前付き合っていたチョイワルで、嫌がらせのために参加していたらしい。

「分かりました、後始末は、あたしがつけます(^▽^)」

 この薫という従姉さんは、十人余りの記者の前で、明るく請け負ってくれて、スキャンダルにはならずに済んだ。それどころか、明るくも凛とした態度に惚れ込んだ監督が「役つくるから、君も出てくれないかな!」と目を輝かせたくらいだった(^_^;)。

 従姉さんは丁重に断って帰っていった……。


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • タクミ           Takoumi Leotard  陸自隊員 
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・075『バイト許可願を出しに行く』

2024-01-21 10:36:33 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
075『バイト許可願を出しに行く』   




「あのう……若杉先生の机はどこでしょうか?」


 一番近い席の先生に聞いてみる。

「あ、向こうの三番目。でも、めったにこっちには来られないから国語の部屋か生活指導行った方がいいわよ」

「あ、はあ……」

 生返事になるのは、国語準備室も生活指導室にも行って、似たようなことを言われて、職員室に周ってきたからだ。

 中学も小学校も、先生と言えば職員室に居た。

 用事があったら職員室、それでたいがい間に合った。

 ところが、宮之森高校の先生は一筋縄ではいかない。職員室以外にも教官室とか教科別の準備室とか、先生によっては分掌(進路指導とか生活指導とか保健とか)の部屋があって、そこに籠ってる。かと思ったら、図書室とかで油売ってる先生も居て、一度で掴まえられることは少ない。

「ああ、一年五組の写真屋さん」

「え、あ、はい(;'∀')!」

 奥の教頭先生に声を掛けられ、ちょっとビックリ。

「ひょっとしてバイト許可だろ?」
「はい」

 反射的に返事して教頭先生のところに足を運ぶ。

「どうせ、僕の所に周って来る書類だから、受け取っておくよ」

「え、そうなんですか?」

 教頭先生が指差したところには捺印の欄があって、担任、生活指導、教頭、校長の順に並んでいた。

「すみません、それじゃお願いします」

「須之内写真館は長いの?」

「去年の四月から……あ」

 言って、しまったと思った。ほとんど十カ月無届だったんだから。

「ほとんど結婚式場の仕事でしょ?」

「あ、はい。希望が丘の公民館の結婚式場です」

「そうか、あそこなら手堅い仕事だねえ」

「はい、マスターなんかもそう言ってます」

「マスター……ああ、お父さん……須之内も結婚式の写真が一番いいって言ってたなあ」

「その須之内って、宮之森連隊の?」

「うん、同年兵でね同じ班にいたんだ。除隊したらお目出度専門の写真屋になるって言ってた。現在は姪の直美ちゃんが継いでるみたいだね」

「はい、外回りは。写真館の中はマスターです」

「そうか、まあ、勉強との両立を忘れずに励みなさい」

「ありがとうございます。じゃ、失礼します」


 ちょっとかたいお辞儀をして教室に戻る。

 よかった、教頭先生の配慮が無かったら昼休みがつぶれるのを覚悟していたからね。

 それで、昼休はいつものようにお仲間と学食へ飛んでいく。

 
 あれぇ?

 ちょっと拍子抜け。いつも混んでる学食がガラガラ。


「あ、明日から三年は学年末テストだから、今日は午前中だけですよぉ!」

 ロコが喜んでガッツポーズ。

 そうか、高校は三年間ていうけど、三年生は十カ月しかないんだ。

 A定食をトレーに載せて窓際の席へ。

 窓際と言っても、二階まで吹き抜けのガラス張り。それが厨房からの熱気とストーブの熱で曇ってる。ここから見える景色は大きくて学校で一番のオキニ。

 だから、ちょっとだけ魔法を使って曇りを取ってみる。

 見上げた空は、いつの間にか鈍色になって、けっこうな雪が降り始めていた。昭和の空は気合いが入ってると思った。

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
  
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第57話《あかぎ奇譚・4》

2024-01-21 07:46:46 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第57話《あかぎ奇譚・4》惣一 




 その船は……戦艦大和であった。


「対空兵装から天一号作戦時の大和かと思われます……」

「沖縄水上特攻時の姿か……」

「しかし……」

「艦上に人の気配がない……」

 大和は「あかぎ」と500メートルほどの至近距離で併走しており、甲板上の針ネズミのような対空機銃座やブリッジ、対空戦闘指揮所に人が居れば見える距離であった。それが艦上には、まるで人の気配が無い。

 そして、相変わらず「あかぎ」にいくつもあるレーダーには映らないのである。

「所属と艦名を聞け」

「は……」

「待て、この距離なら、発光信号と旗旒信号でおこなえ。C国に傍受されると厄介だ」

 艦長の命令でアナログの信号が送られた……が、返事がない。

「……あの大和は実在なのか?」

「艦長、ビデオには姿が映りません!」

「なに?」

 ブリッジだけでは無かった、我が砲雷科でも何人かがビデオ撮影を試みる。モニターには映るが、映像としては取り込めない。つまりデジタルとしては存在しない船なのである。

「艦長、本艦は左舷に流されています」

 当直航海士が、静かに言った。

「潮の流れではないのか?」

「潮は艦首方向から二ノット。右舷からの影響は、あの大和の縦波の影響かと思われます」

 大和ほどの大型艦が500の距離で併走すると、相手が起こす波が微妙に影響し、反対方向に流される。その物理的な影響は受けていることになる。

 つまりは、幻ではない。

「面舵五度。大和に300まで接近」

 あかぎは、かすかに左舷に傾斜しながら大和に近づいた。全長・全幅で大和とあかぎは、ほぼ同じ大きさだが、艦上構造物、特に46サンチ砲三基の威容は圧倒的であった。

「シーホークを飛ばそう」

 艦長は艦載ヘリのシーホークを飛ばし、全方位的に大和を観察することにした。

 ヘリからも、大和の映像が送られてきた。それはCGなどではない実在感があった。甲板も伝説通り黒く塗装され、甲板の機銃の周りには土嚢が積まれていた。ただ、人の姿が見えない。そしてビデオには映らなかった。

「大和との距離300」

「もどーせ、よーそろ」

 船は、近づきすぎると、僅かに引き合い、放置すれば衝突する。観艦式などで、何隻もの船が単縦陣で併走するのが高度な技術であるのは、このへんの事情による。現在、世界で、これが出来るのは米英海軍と我が海自ぐらいのものだ。

「艦長、ソナーに感あり。両舷後方より二隻(ふたせき)距離フタ千」

 CICから、ブリッジに報告が上がってきた。

「キャビテーションは?」

「ハン級と思われます」

「気づかないフリをしておこう。ここはバカになっておく」

 外国の潜水艦が近づいても、よほど危機が迫らない限り反応しないのが海自のセオリーである。反応すれば、こちらの対潜能力が知れてしまうからだ。

「大和より発光信号!」

 右舷見張り員が叫んだ。そして、ブリッジからの指示を聞くまでもなかった。発光信号であるので、大和を見ていた乗組員にはみんな分かった。

――ヒト分後、機関停止、両舷全速反速サレヨ――

「どういう意味だ?」

 1分後にスクリューを停め、逆回転させろということだ。車で言えば、急ブレーキをかけ、全速でバックで走れということである。

「艦長、ハン級二隻が速度をあげてきました」

 CICが言ってきた。

「真横で浮上して驚かそうという腹でしょう。放置しときましょう」

 副長は独り言のように意見具申した。

「盛大に驚いたフリをしてやろう」

 以前、アメリカの機動部隊の輪形陣の真ん中に、C国の原潜が浮上したことがある。アメリカは艦隊全部で驚いたフリをした。これでC国は、米軍や海自の対潜能力を低く見積もった。で、艦長は、今回も同じであろうと判断したのだ。ただ、両舷から二隻同時にという離れ業……司令部からの指示ではないだろう、現場の撥ねっかえりの思い付き。

「大和より、発光信号。機関停止、全速反速30秒前」

「……」

「艦長……」

 乗員は、大和の意図を計りかねた。

「機関停止、全速反速。総員衝撃にそなえよ!」

 艦長は、大和にかけてみた。

 ガク!

 あかぎは、つんのめったように速度を下げ、十数秒後には停止。すぐに後進になった。艦長の指示がなければ、ほとんどの乗員が転倒していただろう。

「ハン級、全速で我が進路を塞ぎます!」

 ゴゴーン!

 C国のハン級は、あかぎの前方300ほどで急速浮上し、なんと味方同士で衝突してしまった。

「あのまま進んでいたら、どちらかの潜水艦と接触事故をおこしていたところだ」

「ナンクセをつけられるところでしたね……」

 航海長が、汗を拭いた。

 潜水艦は両舷の直近で浮上して、こちらを驚かそうとしたんだ。ところが、あかぎが急停止して後進をかけたので、追い越してしまい味方同士で接触してしまったのだ。

「左舷前方の潜水艦浸水の模様、乗員が避難しつつあり!」

 左舷の見張り員が叫んだ。

 あかぎは、救命艇を出して、C国の乗組員の救助に向かった。そして、それに気を取られているうちに大和の姿は消えてしまった。


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • タクミ           Takoumi Leotard  陸自隊員 
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銀河太平記・200『お岩食堂の物干しにて』

2024-01-20 11:02:44 | 小説4
・200
『お岩食堂の物干しにて』越萌マイ 





 わあ…………ほどよい見晴らしだねぇ!


 挨拶する前に劉宏は感動した。

 お岩食堂の物干しは天井の高い店舗部分の上に継ぎ足しで作られた二階部分のその上にある。
 普通の建物の基準で言えば四階建の屋上にあたるから、学校の屋上ほどの高さ。

「士官学校も物干場(ブッカンバ)は屋上にあってね、ちょうど高さもこんな感じ……あ、ブッカンバというのは物干しのことね。日本語の言語設定にすると軍隊用語のまんまで……ちょっと変えるね」

 コクンと頷くような仕草。

「オフの時は、このボディーのデフォルトにしてるの」

「元は、王春華なのよね」

「うん、春華も大統領秘書なんかやってたから大人ぶってたけど、ベースはこんな感じ。春華はもういないけど、せめてオフの時はね」

「そうね、それがいいわね」

「身に合わない高さから見てると……」

 判断を誤る?

「疲れるでしょ……洗濯物の匂いも素敵、シキシマ石鹸かな?」

「日本の洗剤も分かるの?」

「士官学校では青島石鹸使ってたの。青島石鹸はシキシマが漢字の敷島だったころに技術移転したから同じなのよ。絹物とかには向かないけど木綿や化学繊維には絶大な洗浄力。なんと言っても安いしね」

「そうなんだ、青島っていえばビールかと思ってたけど、洗剤もあったのね」

「わたしはね……漢明と世界の関り方を見直そうと思ってるの」

「関わり方?」

「うん、中国というのは古来統一と分裂を繰り返してきた。今の漢明は東北部や西部を手放しているわ」

「え、ひょっとして、今度は漢明じゃなくて大唐帝国にでも拡大するつもり?」

「ああ、それはナイナイ(^〇^;)」

 両手をワイパーのようにハタハタさせる、この可愛さは反則だ。

「ただね、離合集散は東アジアの生理みたいなものだから、大統領のわたしがドーコー言っても抗えるものじゃないと思うの。日本が古来から一つにまとまっているのも生理だと思う。それと同じ、っていうか、現象的には真逆だけどぉ、これから一つになっていこうとするのを押しとどめるのは、かえって漢明にも、周囲の国々にも良くない気がする」

「うん、半分分かるかなあ……」

「それぞれの国や地方が自治権を持ったままで、ゆるやかな国家連合的な?……みたいな?……ぽいもの? そんな感じ」

「アメリカ的な?」

「南北戦争とかはしたくないし」

「むつかしいねぇ……」

「まあ、その第一歩として西之島といい関係でありたいわけですよ」

「それは同感……でも、なんで、そんな話をわたしに? 食堂の物干し場で話すことでもないような気がするけど?」

「あ、そうね。石鹸の匂いが同じなんで、ついね、話が膨らんじゃった(^_^;)」

「フフ、よかったら、あとで釣りでもする? 神社の裏良く釣れるし、魚はこの食堂でいくらでも調理してくれるし」

「あ、うん、いいね!」

「よし!」

 話がまとまったところで、下からお岩さんの呼ぶ声。


 お偉いさんが、みんな集まって来てるよお!


 ふたり、手を振ったり頭を下げたりして下りていった。


 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第56話《あかぎ奇譚・3》

2024-01-20 07:01:05 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第56話《あかぎ奇譚・3》惣一 




 案の定、あかぎは南西諸島海域への哨戒任務に回された。


 このことの意味は大きい。海自最大最新の護衛艦を哨戒任務に就かせると言うことは、我が国の「本気度」を一段階上げたことになる。当然周辺諸国を刺激する。まあ、それも任務なのだから仕方がない。

 しかし、政府の煮え切らない姿勢が、ここでも出てしまった。「あかぎ」は空母型の護衛艦で、現状ではヘリコプターしか積んでいないが、将来的にはオスプレイやF35の搭載も視野に入れた艦で、飛行甲板の材質や強度などのスペックは極秘になっている。

 この極秘こそが周辺諸国には脅威なのである。種子島の南海上で、第七艦隊と合流して、ヘリとオスプレイの離発着を何度かやった。現実にはやっただけで、べつに米軍機が「あかぎ」に移動してきたわけではない。C国の監視衛星などがこれを見ている。C国は、この移動のフリを恐怖心から過大に評価する。ここに狙いがある。つい先日アメリカの大統領が「尖閣諸島は明確に、日米安保の保証の中にある」と言ったばかりである。C国としては神経質にならざるを得ない。

 しかし「あかぎ」の行動は単艦なのである。普通空母が移動するときには対空対潜能力の優れた駆逐艦数隻を付けるのが常識で、アメリカならば複数のイージス艦を必ず随伴させる。
 でも、それをやれば、見てくれは機動部隊になってしまい刺激しすぎるという判断である。正直素人の心配である。「あかぎ」単艦での行動の方が、「あかぎ」にどれだけの能力や搭載機があるか分からない状況では、誇大にその能力や意図を解釈される恐れがある。

 案の定、黄海に入ったとたんにC国の哨戒機が頻繁に接触してくるようになった。Y-8DZが二機べったりとはりついている。これは日本の新聞社なども撮影「高まる南西諸島方面での緊張!」とかの記事になり、A新聞などはそのお先棒になることは目に見えていた。

 脅威は潜水艦である。これは新聞社の飛行機からは見えない。米軍も「あかぎ」もC国の潜水艦の接触には気が付いているが、詳細は公表できない。こちらの対潜能力知られてしまうからだ。「潜水艦も展開している模様」としか公表はできない。

 もう一つ怖いのは、漁船などの小型船舶に擬装した監視というよりは妨害である。これらの小型船舶の多くは木造小型で、水上レーダーにもかかりにくい。半分捨て身で接触されると沈没させてしまう可能性もあり、そうなると、「あかぎ」がC国の漁船を沈めたと騒がれるのは目に見えている。


 宮古島の西にでたところで、濃霧と言っていい霧が立ちこめ始めた……。


「対水上監視を厳となせ」


 艦長の警戒命令が出た。本来の監視要員以外の者も哨戒任務に就く。

 信じられないだろうが、この21世紀の最新護衛艦でも、最後の哨戒は視認によるものである。簡単に言えば双眼鏡でひたすら海を見続けるという百年前の日露戦争と変わらない方法によっている。

「右舷後方五時より大型船接近しつつあり!」

 杉野曹長が信じられないことを叫んだ。
 
 わたしは直後双眼鏡を向けた……。

 確かに五海里の彼方で、緑と赤の幻灯が光っているのが見える。それが次第に近づいてくる。本艦は15ノットの巡航速度だが、相手は20ノットは出しているだろう。商船としては高速と言える。

 さらに驚いたことに、これだけの船がレーダーに写っていない。ブリッジは混乱していた。

「対水上監視を倍にしろ、手空きの乗員は、上甲板で視認に努めよ!」

 艦長の指令が艦内に響き、乗員の半分が右舷の最上甲板に集まった。


 そして、それは、十分後には「あかぎ」の右舷後方に姿を現し、併走するようになった。


 信じられないが、その船は……少なくとも、その外見は戦艦大和であった。



☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • タクミ           Takoumi Leotard  陸自隊員 
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魔法少女なんかじゃないぞ これでも悪魔だ こ 小悪魔だけどな(≧ヘ≦)!5『ダークサイドストーリー・1』

2024-01-19 15:12:58 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃないぞ これでも悪魔だ こ 悪魔だけどな(≧ヘ≦)!

5『ダークサイドストーリー・1』 
 
 本作は旧作『小悪魔マユ』を改作したものです




 この時間は、いつもこうだ。


 誰も授業を聞いてねえ。


 英語の片岡先生の授業だ。


「……というわけで、接続詞の用法はわかったかなぁ」


 ほんの一瞬、みんなは先生の方を向くが、すぐにそれぞれ勝手な事を始める。

 マンガやラノベを読む奴。ヒソヒソ声で話す奴。スマホを教科書で隠してメ-ルを打っている奴。むろん率先してやっているのはルリ子たちだけどな、マユの友だち、沙耶、里依紗、知井子さえも、この授業の間は内職をやってやがる。
 
 聖城学院は、そこそこの私学で校則も厳しくて授業もちゃんとしている……数人の先生の授業以外はな……その数人の先生の中でも、片岡先生は無視を超えて蔑ろにされて、ワルプルギスの夜のように無秩序だ。

 無秩序というのは小悪魔にとっては望ましい状況なんで、マユは好きだ。

 マユも、この時間は、魔法とも言えないイタズラをして楽しんでるぞ。

 ラノベに熱中すると膝が開いてくるルリ子の取り巻きの一人に、ちょいと指を動かす。足許から風が巻き上がり、スカートがひるがえる。アミダラ女王のパンツが丸見えになる。 

 ルリ子の仲間は、みんなアミダラ女王のパンツらしい。『スターウォーズ』の3Dを見てファンになり、わざわざ輸入雑貨専門のネットショッピングでアメリカから取り寄せたそうだ。その子のアミダラ女王と目が合って、片岡先生は一瞬ドキリとしたが、並の男が感じるドキリとは違った。

 え?

 マユは、少し意外だったぞ。

 メールをやりとりしていた美紀とルリ子のスマホの画面にはいきなりダースベーダーのドアップを3Dで出してやった。

『おまえは、すでに暗黒面に取り込まれた!』

 ダースベーダーが一喝。

「キャーー!」「キャハハ、うっけるぅ!」

 美紀は悲鳴をあげた。が、ルリ子は喜んで嬌声をあげた。

 スカートめくりよりも教室は賑やかになったけど、片岡先生は我関せずと、気のない授業を続ける。

 片岡先生のあまりな無気力さが面白くて、マユは先生の心を覗いてみたぞ。
 
――え……読めねえ――

 マユに見えた先生の心は具体性のない闇だ。闇と言ってもダースベーダーのような力はねえ。

 普通の人間の心を覗くと、散文的な不満や、不安や、欲望が見えてくる。それが、先生の心からは見えてはこねえ。

 ちょうど四時間目の授業だったんで、授業が終わったあと、マユは先生の後をつけていった。

「マユ、食堂……フグッ(;'×')」

 呼びかける知井子の口にチャックをした。知井子は友だちとして親切で言ってくれてるんだけどな、お楽しみの邪魔になったら容赦はねえ。

 廊下を歩く片岡先生の心は空虚だ……闇じゃねえけど、濃い雨雲の中みてえに気持ちの悪い空虚さ。

 階段の踊り場で、ちょっと魔法をかけたぞ。

 ガチャガチャガチャ……

 片岡先生の手からチョーク箱やえんま帳やらが滑り落ちて、階段を下の階まで落ちていった。

「あ、ああ……」

 さすがに、片岡先生は声をあげ、オデコに手をやってため息ついて階段を下り、ノロノロと商売道具を拾い集めようとした。階段の下にいた生徒たちがそれを手伝いやがった。

 一瞬、片岡先生の心にイメージが浮かんだ。

 それは、一人のブルネットの若い女性……スッピンのアミダラ女王に似てる。

「はい、先生」

 最後のチョークを拾い上げたのは、落第天使の雅部利恵だったぞ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生 

 


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RE・かの世界この世界:225『タングリス吠える』

2024-01-19 07:29:59 | 時かける少女
RE・
225『タングリス吠える』テル 


 

「背嚢の中で話しは聞いた、戻ろう!」

 手早く衣類を身に着け装具を整えるとタングリスは吠えた!

 お産で言えば、いささかの早産。入学したての高校一年生ほどの体格に、軍服の袖も裾もまくり上げ、凛々しくも可愛いマナジリを上げた姿は、頼もしいというよりは痛々しい。

「ダメだ! まだ蘇えったばかり、それではまともに戦うことなんて……」

「できるできないではない! 姫とタングニョーストが体を張って……!?」

 ウオーーン……グギャァァン……カキンカキーンカキーン……

 そこまでタングリスが吠えた時、洞窟の奥の方から雄たけびと剣戟の音が木霊してきた!

「戦闘になっている!」

「待てタングリス!」

 伸ばした手は空を掴む。

 未熟で再生したぶん身が軽くなっている。あっという間にタングリスは奥に進んで行く。

 羨道の奥、剣戟や打撃の閃光が花火のように煌めき、鬼どもの影が明滅する! 四人の姿はほとんど見えない!

 ウワ!

 玄室の戦いはたけなわ、玄室から男神とヒルデが押し出されてくる。

「テル、タングリスが中へ! タングニョーストも!」

「戻りましょう! 助けなければ!」

 自分の立場も忘れてイザナギさんが目を血走らせる。

『二人を頼むぞー!!』『逃げろーテル!』

 タングリス、タングニョ-ストの声が響く。

「時間を稼いでくれている、ここは逃げるんだイザナギ殿!」

「見捨てることはできない!」

「たとえ一人になろうと、国生み神生みは道半ばではないか! 創造神としての自覚を持たれよ!」

「それはそれ、これはこれです!」

「ヒルデ、わたしが二人を連れ戻す、イザナギさんを外に!」

「すまん! 無理はするな!」

「テルさん!」

「イザナギ殿っ!」

 イザナギさんをヒルデに任せ、玄室に走る!

 人一人がやっとの羨道に雄たけびと鬼どもの奇声、イザナミの怒声が響く。

 まだ無事なようだが、鬼どもの方が勢いづいている。

 急がなければ!

 オリャアアアアアアア!!

 渾身の雄たけびを上げ、弾丸のように空を切って突き進む!

 ズガ! ビシベシ! ドゲシ! ドゴ! ベシビシ! ズサ! ビシビシビシ!

 我ながら、電光石火! 乾坤一擲! 獅子奮迅!

 二秒足らずで数十匹の鬼を切り伏せぶちのめして活路を開く。

「逃げろ二人とも!」

 ビシビシビシ!

 声は無いが了解という感じでソードが一閃、鬼どもがわずかに身を引いた!

 今だ!

 シャキン! シャキン!

 後ろざまに羨道に駆け戻り、ソードにXを描かせて天井と側壁を切り崩す!

 ムヘン以来さまざまな危機を乗り越えてきた。とは云え本性は文系のJK、我ながらどこにそんな力があったのかと驚くが、トラック一杯分ほどには岩を切り崩して羨道を塞いだ。

 ……無我夢中、やっとの思いで開けたところに戻る。

 身に着けたばかりの軍服を血みどろのズタボロにしたタングリスは戻っていた。

 だが、タングニョーストの姿が無かった。


 
☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――
  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ
―― この世界 ――
 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 
 

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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第55話《あかぎ奇譚・2》

2024-01-19 05:03:45 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第55話《あかぎ奇譚・2》惣一 




「護衛艦カレーグランプリ イン よこすか」


 三面記事のコラムあたりで、ご存じの方もおられるだろうが、わが「あかぎ」も無謀ながら参加した。
 15隻の艦艇から、各艦ご自慢のカレーの店を出し、お客さんの投票でトップを決めようという、市民との交流を主眼に置いたイベントである。

 これに、なんと「あかぎ」の烹炊長がノってしまった。

「あかぎ」は、船こそ海自で最大最新の護衛艦であるが、それは護衛艦としての能力である。烹炊にかけては、古い艦の方に分がある。

 海自のカレーは旧海軍の伝統を引き継いだもので、その目的は、曜日感覚が鈍くなる海上勤務で、曜日感覚を無くさないため、海自の各艦は、金曜日のメニューはカレーと決まっている。

 で、百年あまり続けていると、単なる習慣を超えて、ほとんど軍事機密。各艦で独自のレシピがあって、部外秘になっていることが多い。

 自然艦齢の古い艦ほど、磨きが掛かっていて、レストランで言うと、そこらへんのファミレスと、戦前から続く老舗ほどの違いがある。


「勝負はともかく、乗員の士気を高めるには、杉野君の結婚と同じくらい効果がある」


 艦長の決裁で決まってしまった。烹炊科のメンバー始め、乗組員はみな張り切ったが、オレはいやな予感がした。

――オレと杉野曹長はかり出される――

 杉野曹長のカミサンは某放送局の美人アナ。でもって、新婚。こないだの結婚式での元大和の乗り組みだったお祖父さんの話はネットでも流れ、アクセスはかなりのものがある。放送局が、これにのってこないわけが無い。

 それに、オレの妹は女優のタマゴ。つい先日『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』の映画に脇役ながら主役の親友役として出ることが決まったことでもあり、その線からの脅威も排除できなかった。

「杉野君と、佐倉君も出てくれるね?」

 予想通り艦長は命じてきた。



「なんで、こんなエプロンなんですか!?」

「はあ、家内が、どうしても、これを付けろと言うものでありますから」

 早くも尻に敷かれた杉野曹長が、カレー色に「あかぎ」のロゴと、なぜか萌えキャラのプリントがされたエプロンを差し出した。

 この日ばかりは、岸壁やら沖に停泊した護衛艦は、ただの背景になり果てている。
 なんと言っても百年の伝統のカレーである。カレーに関しては日本で一番古いのが海自である。開場一時間前には、長蛇の列が出来ていた。

 で、案の定、開場と同時にネットで面の割れた杉野曹長と、そして同じエプロンをした俺の「あかぎ」のテント前に人が殺到した。むろん、その先頭は某放送局である。

「今日は『護衛艦カレーグランプリ イン よこすか』に来ております。こちらが自衛隊最新最大の護衛艦『あかぎ』のブースになります」

 杉野のカミサンであり、看板女子アナである彼女が語り始めると、吉本のタレントが、特徴のあるメガネをかけて、MCになってしまった。

「みなさ~ん。この純子アナと杉野さんは、他人行儀な顔をしてますけど、つい先日ご結婚されたばかりです。今日のエプロンも純子アナのお手製とか。まあ……この胸の萌えキャラは『ガルパン』の西住みほじゃあーりませんか! これ、やっぱり奥さんの趣味ですか?」

「は、家内は陸と海の区別もつかんようで。でも、こういうことは家内まかせですので……」

「ハハ、どうやら『あかぎ』は中辛カレーのようです」

「こちらのイケメンの方が、何を隠そう、今売り出し中の女優佐倉さくらさんのお兄様です。こんにちは佐倉さん。今日は妹のさくらさんは?」

「は、あいつも何かと忙しいようで……」

「忙しいお仕事の一つが、今日の『護衛艦カレーナンバー1グランプリ イン よこすか』のレポートです!」

 なんと、さくらが別のテレビクルーを連れてやってきた(-_-;)。

「今度『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』に出演させていただくことになりました。それを記念して、みんなで『フォーチュンクッキー』一発やっておこうと思います。むろん先頭は、わたしの兄の佐倉三等海尉です。では、はりきっていきましょう!」

 放送局が、いつのまにか設置した機材から、大音量の「フォーチュンクッキー」。あっという間に数百人の踊りの輪になってしまった。さくらのやつは、オレが二尉に昇進したことを忘れててるし……。

 で、扱いこそ、大々的であったが、肝心の勝負は、某潜水艦にもっていかれてしまった。

 艦長の目論見通り、親睦と士気の高揚という目的は、オレの恥さらしという犠牲の上に成功裏に終わった。


 しかし、このほのぼのとした空気は、南西海域への出航任務で消し飛ぶことになる……。



☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • タクミ           Takoumi Leotard  陸自隊員 
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くノ一その一今のうち・94『月が綺麗だぞ』

2024-01-18 10:43:58 | 小説3
くノ一その一今のうち
94『月が綺麗だぞ』そのいち 




 ――月が綺麗だぞ――


 いきなり思念が飛び込んできた……動けない。


 姿も気配も完ぺきに隠していた。

 実戦では多田さんにも敵わない。まして、その棟梁の猿飛佐助には勝てない。これまでにも何度かぶつかったことはあるけど、勝負にならなかった。

 でも、手出しをせずに見ているだけなら気づかれることは無い。

 これでも風魔流の統帥なんだ、自分の力量は分かっている。

――そこはな、ムクドリの休憩場所なんだ。その休憩場所にムクドリの気配がない。ということは、そこに誰かが居る。すっかり気配を消していたんだろうけど、今ので動揺して気配が漏れてソノッチだと分かったぞ――

 ク……そういうことか。

 立ち上がると最短距離で佐助の横に座る。

「大胆だな」

「見つかってしまったのなら、少しばかりの距離を置いても同じですから」

「そうだな、的確な判断だ」

「どうしたんですか?」

「満月と云うのは魂の道しるべという言い伝えがある。星々でもしるべにはなるんだがな、満月は星の何十倍も明らかに死者の魂を冥界に誘ってくれる」

「はあ……」

「太閤殿下が身罷られた時はあいにくの曇り空で、月はおろか星も出ていなかったという……太閤殿下の御霊は、往生できずに淀の方様に憑りついて豊臣の家の行方を誤ったと言われている」

「そうなんですか?」

「どうだ、月をしるべに飛んで行く魂が見えないか?」

「え?」

 何を言ってるんだ、昼間の戦闘で命を落とした者たちのことか? いや、佐助は人の死にいちいち感傷を抱くような男ではない……!?

 ハッとして俯せている王子の方に目がいく。

「王子は眠らせてある、動揺が激しいんでな」

「?」

「国王が死んだ」

「え……ええ!?」

「腹上死だ」

「フクジョウシ……?」

『愛し合っているうちに突然死することですッ』

「え(#'∀'#)」

 えいちゃんが教えてくれて、あたしは狼狽えて佐助は声を出さずに笑った。

「ノッチ、お前はいい助手をもったな」

 しまった。

「王子に全権を握らせるために、国王は好きにさせていた。王子については十分すぎるほどに気を付けていた。必要な時は、こんな風に俺が代役をやっていたしな。しかし、親父の国王はノーマークだった。まだ52歳だし、健康には何の問題も無かったしな……草原の国は戦争どころでは無くなってしまった」

「どうするんですか?」

「国王の死は伏せてあるが、じきに知れてしまう。医者と側室には『極秘』を言い渡してあるがな、どこまでもつか……しばらくは混乱が続く。我々は当分手を引く」

「え、そうですか」

「おまえ……」

「はい?」

「こういう時でもタメ口にならないんだな」

「え、あ……」

「忍びにあるまじき美点だ」

「はあ」

「褒めてるんだぞ」

「ども……あの……」

「なんだ」

「素朴な質問なんですが、どうして国王に化けなかったんですか? 最高権力者は国王なんだから、国王に化けた方が確実じゃないですか?」

「アハハハ(ᵔᗜᵔ*) 」

「なんで笑うんですかぁ!?」

「まあ、しっかりやれ、俺たちが次の手を考えるまではな」


 ほんの一瞬月が陰ったかと思うと佐助の姿はかき消えていた。

 

☆彡 主な登場人物
  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
  • ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)
  • アデリヤ         高原の国第一王女
  • サマル          B国皇太子 アデリヤの従兄

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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第54話《あかぎ奇譚・1》

2024-01-18 07:21:47 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第54話《あかぎ奇譚・1》惣一 





 なにから話せばいいだろう。


 まあ、どこから話しても、めでたい話が一つと何一つ記録も証拠も残っていない話なので気楽にいこうか。

 まずは、めでたい話から。

 この春に昇進したボースン(熟練下士官)杉野曹長が結婚した話。

 陸に上がると、杉野曹長は杉野さんだ。なんといってもメンコ(在職年)が違う。オレも、この四月に二尉に昇進したけど、メンコは防大を入れても8年にしかならない。ところが杉野さんは、6の前に20が付く。艦長に並ぶくらいのメンコの数だ。

 この自衛隊と結婚したような杉野曹長がリアルにおいても結婚した!

 それも相手は十五も年下のテレビ局のアナウンサー。

 どうも去年「あかぎ」の一般公開のときに、何だかきっかけがあったようだ。

 おれは、妹のさくらのために、AKBのフォーチュンクッキーを踊らされて恥をかいたことしか記憶にないが、そのとき、いっしょに乗艦していたテレビ局のオネーサンとできてしまったらしい。


 事実を知ったのは、四月一日に陸に上がる寸前だった。


「杉野君の披露宴のスピーチ、これでいいかなあ?」

 士官食堂で、艦長から、そう言われたのが最初だった。

「す、杉野って、うちのボースンですか( ゚Д゚)!?」

 聞くまでもない。「あかぎ」の乗り組みで杉野というのは、あの杉野曹長しかいない。


 披露宴で、新郎の席に着いた杉野さんはとても四十代半ばのオッサンには見えなかった。なんともブキッチョに緊張した姿は、少年のようにウブだった。花嫁さんは、アナウンサーだけあって、あか抜けたウェディングドレスで、にこやかに微笑んでいる。

 艦長が、海自の士官としては申し分のないスピーチをやってのけたが、新婦側のゲストはみんなマスコミ関係、ウィットも話題も豊富で、海自側は押され気味だった。特に、オレのスピーチの直前に出たディレクターのオッサンが、こともあろうに妹のさくらのことを話題にしたので、若者用語で言えばテンパッテしまった。

「えー、ここで初披露になりますが、新郎杉野さんの上官であられる佐倉二尉の妹さん佐倉さくらさんが、『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』の実写版に出演されることになりました……」

 おかげで、オレのスピーチは急遽妹のことから入らざるを得なくなり、「あいつが入ったあとのトイレは格別に臭く……」などとやってしまった。ネイビーの士官のモットーは、スマートとウィットである。トイレの話はウケたが、我ながら品性に欠ける。

 そのあとも、新郎側は押されっぱなしだった。

 とどめに出てきたのが新郎の祖父、もう百歳になろうかというしなびた老人であった。完敗を覚悟した。

「ええ、本日は……不肖の孫のために……ゴホンゴホン(ここで痰を切った)我が家は、私の祖父の代からのネイビーでありますが、三代目のわたしが不甲斐ないために、海自のみなさんには戦後ずっと肩身の狭い思いをさせてまいりました。艦長はじめ乗り組みのみなさんには……」

 あとの言葉は明瞭ではなかったが、旧海軍の出であるということで、我々の背筋が伸びた。

「なんの船に乗っておられたのか?」

 艦長が、司会を務めていた砲雷長に聞いた。驚くべき答が返ってきた。


「大和だそうです」


 艦長が起立した。

「お祖父さまは、大和の乗り組みであられた。総員起立、敬礼!」

 しなびたお爺さんの背筋が五センチほども伸び、見事な答礼を返された。

 期せずして、新郎側の一発逆転になった。しかし、その二日後にお爺さんは、静かに逝かれた。あの答礼で、ネイビーのなんたるかを自分達に伝えて逝かれたような気がした。



☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • タクミ           Takoumi Leotard  陸自隊員 
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オビツ150『葬送のフリーレン』のフリーレンをアニメ版にしました

2024-01-17 12:46:37 | イレギュラーマガジン

10年目のオビツ150


 ☆ 新しいヘッドと衣装にしました。


 8年前に買ったカットウィッグの髪を少しセットし直し、ドールアイと衣装を替えてみました。3000円ぐらいのカットウィッグ(ヘッドマネキン)ですが、すこし手を入れるだけでずいぶん変わります。特にキャラを設定していませんが、愛着のあるヘッドです。右二つは6年前、まだドールアイを入れていないころのもので、プラカラーで描いてあります。

     


     ☆彡 これまでの作品(一部上の作品と重なります)

       

      

 これらは、身長(胴)を10センチ伸ばす改造をした同じ素体を使っています

 

 出来心でオビツ150を買って10年以上になります。

 外皮はソフビ、ヘッドは硬質ビニール(だと思うのですが)で出来ていて、骨格はホームセンターでも売っている塩ビパイプ、関節はポリカーボネイトという組み合わせで、重量はほぼ10キロだと思います。

 1/3や1/4のドールと異なり、ポリカーボネイトの間接はボルトで締められていて、その締め具合でポーズが保持できるように出来ていますが、その締め具合が難しい!

 締めるとポーズは保持できるのですが、度を超すと、ポーズを変ええる時に無理な力が加わって骨折させてしまいます。肘と膝の間接を折ってしまい。オビツさんから二度パーツを譲っていただくことになりました。

 程よく締めたつもりでも、部分やポーズにもよるのですが、緩んできてポーズを保持できなくなります。

 何度かやって悟ったのですが、着替えさせるたびに部分によってはボルトを締め直す方がいいようです。

 

☆ 緩みやすい箇所

 肘と肩   特に肘のボルトがいちばん緩みやすいいような気がします。

 腰     着替えさせるとき、特に上から着せる衣装の場合、座らせることが多いのですが、この時腰の間接は90度動かすことになって、すぐに緩んでしまいます。

純正のヘッドはわりと重量がありますので、お腹を突き出すようにしてそっくり返ってしまいます。

 

☆ 分解に慣れておきましょう

 緩んだボルトを直すためにも、分解して組み立てる作業に習熟しておきましょう。最初の内は腕をボディーに付けるのに難渋しますが、少し慣れると、マネキンのように衣装を着けてから袖口から腕を通して、手探りで腕をボディーに装着できるようになります。五六回やれば、コツが掴めると思います。

 

☆ ヘッドのバリエーション

 純正は、ノッペラボウと彩色ヘッドと、別売りのドール風のがありますが、いずれも着脱の旅に頭蓋部分を外して、ネジを緩めたり締めたりしなければなりません。

 それに、数を揃えるのには、ちょっと高いですね。

 中には、シリコンのヘッドを載せている方もおられますが。これはさらに重量があります。

 わたしは、純正のノッペレラボウと改造したカットウィッグを使っています。

 カットウィッグの改造は、簡単にいいますと、首から下を切り落として、詰め物の半分を取り出し、ドールアイをはめ込みます。これについては稿を改めて書くことにします。

 

☆ 胴を10センチ伸ばすと、これくらいの違いになります

    

 左はオリジナルのままでXSの衣装を着せたもの。どうもモッサリして腕も長すぎるようです。右側は胴を10センチ伸ばし、ウィッグだけ別物にして同じ衣装を着せたものです。欲を言えば、もう5センチ伸ばしたいのですが、これくらいが限界のようです。

 

☆ 膝関節のトラブル

 七年直立させていましたので、膝関節がヘタって、鳥の脚のように逆方向に曲がってしまいました。

   

 

 これは、逆方向への屈曲をソフビの外皮だけで止めているために、外皮がヘタって曲がってしまうためです。

 ピアノ線でコの字のストッパーを作って、ちょうど膝が直立する位置で膝関節に二か所穴をあけ、ストッパーを差し込んで逆方向に曲がらないようにしました。

 ☆……リコリスリコイルの井ノ上たきなです

 今年(22年)上半期で一番おもしろいと思ったアニメ『リコリスリコイル』の井ノ上たきなにしてみました。

 ナイーブさと不器用さ、思い定めたら動かない性格が出ているといいのですが。

 2000円のヘッドマネキン(髪の毛の無いカットウィッグ)を使っていますが、目にはドールアイを入れて、百均のファンデーションとペンシルでメイクして、ツケマを施してあります。カットウィッグは表皮がシリコンなので純正のヘッドよりも格段にメイクしやすいですね。

    

 

 ☆……ニーアオートマタの2Bにしてみました

    

 井ノ上たきなの一つ前の姿です。関節をきつく締められないので立ち姿はにあまり変化を付けられませんが、バストアップや座らせると少し変化を付けられそうです。

 

  初出:2015-08-30 13:47:27


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