2017.11.5 (日)~11.12 (日)の間、HK交通社trapics企画の“新まるごとニュージーラント 8日間”に参加して、ニュージーラント縦断旅行を行った。その旅行記録を兼ねて、以下感想を綴ってみたい。
例によって本稿は、“旅”の印象を“漢詩に詠む”ことを旨としています。漢詩は末尾に挙げました。本文は、漢詩の内容を理解して頂くよう、漢詩の解説を兼ねております。
まず、ニュージーラント(以下、NZ)について、基本事項を押さえておきたい。
NZの位置だが、地球表面を、赤道を折線にして南北折り重ねたとすると、北島の玄関口オークランドは、北茨木-富山を結んだ線上、また南島のクイーンズタウンは、北海道宗谷岬の利尻島とクッチャロ湖を結んだ線上にある。
日本の東北-北海道に当たる地域と言える。したがって気象状況は凡そ類推できます。が、一般に365日中100日は雨と言われているようで、雨は多いようだ。また、経度上30数度東に寄っていて、時差は3時間(9~4月サマータイムで4時間)。この中途半端な時差は、時差調整に難儀を覚える。
NZは、太古に大陸から切り離されて、他の陸地から孤立して、独特の動・植物の生態系を形成している と。その詳細は、追々述べますが、筆者が最も驚いた点は、陸上でコウモリ類以外、哺乳動物が全くいなかったということである。
NZに最初に入植した人々は、ポリネシア人で、9世紀ごろとされ、現在、マオリ族と言われている人々である。人口の14.9%を占めている。一方、大航海時代の17世紀半ばごろ欧州の白人の探検隊が足跡を残している。
1769~1770年には、ジェームス・クックが、エンデヴァー号で3度にわたって訪れ、英国人入植の糸口を作っている。現在、欧州白人(主に英国人)の占める人口は74%で、その他アジア系人が10%超である由。
統計上、NZの面積約26,9万 km2、人口4,693,000万(2016)、人口密度17.5人/km2。一方、日本は、約37,8万km2、127,110,347人 (’15.10)で人口密度336人/km2。
山岳地の占める割合は日本:約70%、NZ:約30%(筆者推定) を考慮するなら、可住・耕作面積当たり人口密度の開きはさらに大きくなる。
なお、日本・NZともに、太平洋造山帯に属していて、地震が多く、温泉の湧出が豊富で、気候条件も含めて、保養に適した国である点、共通しているようである。
以下、NZ旅行の印象を点描していくことにします。
オークランドからバスで235 km、南東に下るとロトルア。その郊外に森林浴を楽しめる森、レッドウッド・フォレストがあり、約30分間散策する(写真1)。高さ4, 50m超のレッドウッド(セコイア杉)が真っ直ぐ天に向かって延び、林立する森である。
写真1
大樹は、樹幹から推して樹齢千年前後かと思われる。この木々の間を透かして見ると、大小さまざまな“木性シダ”の群生が見られる(写真2)。写真3は、他の原生林中に群生した“木性シダ”である。このような“木性シダ”の群生は、NZの至るところの原生林中で見られる風景である。
写真2
写真3
この“木性シダ”は、別名“銀シダsilver fern”と呼ばれていて、NZを代表する植物とされています。葉の表面は緑色であるが、裏が白(銀)色であることから“銀シダ”と呼ばれている。ただ、筆者は、実際に裏の白色を確認していませんが。
現在は、この枝・葉が図章化されて、NZ国を表す象徴として使われている。例えば、NZ航空の機体後方の絵(写真4)、ラグビーのオール・ブラックスの象徴などがそうである。記憶がやや薄れつつあるが、この図章を国旗に と提案されて、国民投票の結果、否決されるということがあった(1998)。
写真4
なお、NZ航空機体尾翼の絵柄は、メリノ種雄羊の角を基にしたデザインの様である(写真5)。
写真5
“木性シダ”について。シダ類の植物は、幹部分の組織に、横方向に太く“成長”する機能がないとのこと。“銀シダ”では、成長するにつれて、生来の“幹”の表面に“根”が重なり、蓄積されていき、一見、太い“木”に見えているのであると。“木性”の冠語が付けられている理由である。
なお、古来、マオリ族の人々は、その葉に“聖なるもの”を感じて、信仰の対象として扱っていた由である。
ロトルアからバスで155km西にワイトモの街があり、その郊外にワイトモ鍾乳洞がある。山口県の秋芳鍾乳洞と比較すると特徴が解りやすい。秋芳鍾乳洞では、天井が比較的低く、洞内が横に広がり、池を思わせる水溜まりもある。一方、ワイトモ鍾乳洞は、三角屋根の屋根裏のようで、上下、縦方向に広がり、横幅は比較的に狭い。
想像を逞しくして、切り立った2枚の石灰質の岩盤が、地殻変動により、その天辺部分でくっついて、その間にできた三角屋根状の空洞内の天井部分に鍾乳石が蓄積していったものと考えるとピッタリと来る。
山の中腹にある入口から入り、電光で明るく照らされた洞内を上り下りしながら進む。壁面には、縦長の裂けた、鋭い縁の岩石が乱立しているように見える。ある処では、尖塔のある教会、またある処ではパイプ・オルガン….と目を楽しませてくれる。
写真6は、この鍾乳洞の出口部分の写真である。この写真で、乳房状の鍾乳石の先端や壁面から、太さ1 mm前後、長さ10~30 cmほどの紐が無数にぶら下がっている様子を想像して頂きたい。そのような特徴的な風景も目に付くのである。
写真6
さらに進み、下りの階段を10数m下ると、真っ暗闇の中で、懐中電灯の微かな光で、川淵にいることを知らされる。その川に浮かべたボートに乗って静かに進みつつ、天を仰ぎ見ると、満天に無数の星が散っているように見える (写真7)。
写真7
この写真では平面的で、左程に感興の湧く風景ではない。先述のように、洞内構造は、三角屋根状で、立体的に、天空部分が深く奥まっている。天を仰ぐと、奥まった屋根の頂き部分では、はるか彼方の宇宙から幾光年も経て届いた星々の光を想像させ、神秘的な空間となるのである。
天を仰ぎ、約10分前後、(と想像するが?)、異空間に身を置いて、時空を忘れて、やがて山裾の明るい出口に至り、我を取り戻すのである。
この光は、邦名“土ボタル”、正式名はglowworm (光を発する虫)と呼ばれる“虫”が発するもので、この鍾乳洞を世界的に有名にしている、最も特徴的な風景にしている。
この“土ボタル”だが、大きさ、形状ともに“蚊”に似た“虫”という。暗闇で光を発し、他の虫類をおびき寄せ、捉えて御馳走とする と。先にご想像頂いた“ひも状”のものは、他の虫類を捕らえる“装置”で、ちょうど蜘蛛が巣を張って飛んでくる虫を捕らえるのに似ている と。
なお、洞内、特に、“土ボタル”の鑑賞に当たっては、静粛を保ち、また写真撮影は禁止である。本稿“土ボタル”の写真は、観光用資料の部分コピーである。
ロトルアからNZ航空機で南島のクライストチャーチへ、さらにバスでマウントクックに移動(330 km)。筆者にとっては、この旅のクライマックスを迎えることになる。
通称クック山、正式名称はAoraki/Mount Cook(アオラキ・クック山)の由。Aoraki(アオラキ)は、マウリ語で、「雲の峰 / 雲を突き抜ける峰」という意味であると言われている。クック山は、NZ探検を行った英人James Cookに因んだ名称である。
南島を縦に南アルプスが走っており、その最高峰がアオラキ・クック山で、標高3,724 m、富士山より54 m 低いことになる。この山容も、富士山に劣らず麗しい姿である。
写真8では、碧天の下、雲を突き抜けている姿を捕らえることができました。また夕日に映えるその姿(写真9)も秀麗である。雨天の日が多いと言われるNZで、その秀麗な姿を真近に望むことができ、鳥肌の立つ思いであった。
写真8
写真9
写真10は、その壁面に残る氷河を示しています。写真中央部、右下および左上の方向の崖状の箇所が、やや緑を帯びた青色で透き通るような色を呈しています。氷河の部分です。
写真10
アオラキ・クック山の全容を望まんものと、ケア・ポイント(Kea Point)を目指してトレッキング。写真8および11は、そのコースの様子です。ホテルから出発点まではバスで移動し(写真8)、以後は、大きな岩石がゴロゴロと転がる歩道(写真11)を進みます。
写真11
写真8および11で、谷間の形状は、盆地状で、山また山の間をクネクネと蛇行している様子が伺えます。すなわちU字型の谷間であり、氷河の流れで形成された川床である。大きな岩石は、氷河によって運ばれてきて、置き去りにされたものである と。
通常、水流により形成された渓谷は、水流が狭い幅で、より鋭くまた深く大地を抉っていく結果、V字型の谷間となる。氷河の流れで形成された盆地状のU字谷は、NZの土地を特徴付けるkeywordと言えるようである。
山の麓で、U字谷が堰き止められてできた氷河湖は圧巻である。写真12および13はその一つデカポ湖で、遥か先にアオラキ・クック山が望めます。湖水の独特の柔らかい色合いは、水に含まれる岩粉による太陽光の反射の結果である と。
写真12
写真13で手前湖岸の紫色の花はルピナスです。この辺りの国道沿いでは色鮮やかに咲かせた姿がバスの窓越しにもよく見られ“ルピナス街道”と呼ばれているようです。ただ、これは外来植物で、繁殖力旺盛なため、駆逐するのに苦労している由である。(つづく)
写真13
今回の点描は、下記律詩の前半4句に該当しています。漢詩の内容が、“総天然色の静・動画”としてイメージ頂けるなら、本望とするところであります が。
xxxxxxxx
・完整新西蘭 八天游 完整(カンセイ)新西蘭(シンシ-ラン) 八天(ハチニチ)の游(タビ)
碧落雲浮羊歯繁, 碧落(ヘキラク) 雲浮いて 羊歯(シダ)繁る,
群星閃爍岩穴暗。 群星(グンセイ)閃爍(センシャク)す 岩穴(ガンケツ)暗し。
摩天頂雪奥拉基, 摩天(マテン) 雪を頂く 奥拉基(アオラキ),
山脚蓝绿氷水満。 山脚 蓝绿(ランリョク) 氷水(ヒョウスイ)満つ。
遼闊草原羊牛歇, 遼闊(リョウカツ)草原 羊牛歇(ヤス)む,
峡湾绝壁海豚玩。 峡湾(キョウワン)绝壁 海豚(カイトン)玩(アソ)ぶ。
忘飛山鳥無虎豹, 飛ぶを忘れし山鳥 虎豹(コヒヨウ) 無し
基啊噢啦新西兰。 基啊噢啦(キア オラ) 新西兰。
註]
・新西蘭:New Zealand (NZ) の漢字表記
・羊歯:ここでは‘銀シダ’のこと。‘銀シダ’は、NZ特有の”木性”のシダで、葉の裏が白(銀)色である。NZ Air機の胴体やラグビー・チーム、オール・ブラックスのシンボル図は‘銀シダ’の葉を表徴したもの。
・岩穴:鍾乳洞のこと。暗く広い洞窟内には‘土ホタル’が生息していて、満天の下 星が煌くように見える。
・奥拉基:マウリ語でクック山のこと。同山の公式名称は‘アオラギ・クック山’
・氷水:氷河によりできた U字谷で、氷河解けの水で出来た氷河湖の湖水で、ターコイド・ブルーを呈している。
・峡湾:フィヨルド、U字谷に海水が侵入してできた湾
・基啊噢啦:Kia Ora(キア オ-ラ);マウリ語で‘こんにちは’を意味する挨拶語。明るく、おおらかに響き、この一言で心が和む。
<現代語訳>
まるごとニュージーランド 8日間
碧天に白雲が浮き、地上にはNZを代表する銀シダの木が茂る、
暗い鍾乳洞の洞窟内では、満天‘土ホタル’の星が降るように煌いている。
雪を頂くアオラギ・クック山の尖頂は、天に突き刺さらんばかりに、
山裾の氷河湖にはターコイド・ブルーの水が満ちている。
果てしなく広がる緑の牧野には羊や牛の群れが草を食み、また休んでおり、
フィヨルドの湾内では、イルカが遠泳を楽しんでいるようだ。
虎や豹など天敵のいない島、飛ぶことを忘れた鳥が餌を請うて近寄ってくる、
キア オ-ラ と、明るく挨拶を交わす、空気や好しニュージーランドである。
例によって本稿は、“旅”の印象を“漢詩に詠む”ことを旨としています。漢詩は末尾に挙げました。本文は、漢詩の内容を理解して頂くよう、漢詩の解説を兼ねております。
まず、ニュージーラント(以下、NZ)について、基本事項を押さえておきたい。
NZの位置だが、地球表面を、赤道を折線にして南北折り重ねたとすると、北島の玄関口オークランドは、北茨木-富山を結んだ線上、また南島のクイーンズタウンは、北海道宗谷岬の利尻島とクッチャロ湖を結んだ線上にある。
日本の東北-北海道に当たる地域と言える。したがって気象状況は凡そ類推できます。が、一般に365日中100日は雨と言われているようで、雨は多いようだ。また、経度上30数度東に寄っていて、時差は3時間(9~4月サマータイムで4時間)。この中途半端な時差は、時差調整に難儀を覚える。
NZは、太古に大陸から切り離されて、他の陸地から孤立して、独特の動・植物の生態系を形成している と。その詳細は、追々述べますが、筆者が最も驚いた点は、陸上でコウモリ類以外、哺乳動物が全くいなかったということである。
NZに最初に入植した人々は、ポリネシア人で、9世紀ごろとされ、現在、マオリ族と言われている人々である。人口の14.9%を占めている。一方、大航海時代の17世紀半ばごろ欧州の白人の探検隊が足跡を残している。
1769~1770年には、ジェームス・クックが、エンデヴァー号で3度にわたって訪れ、英国人入植の糸口を作っている。現在、欧州白人(主に英国人)の占める人口は74%で、その他アジア系人が10%超である由。
統計上、NZの面積約26,9万 km2、人口4,693,000万(2016)、人口密度17.5人/km2。一方、日本は、約37,8万km2、127,110,347人 (’15.10)で人口密度336人/km2。
山岳地の占める割合は日本:約70%、NZ:約30%(筆者推定) を考慮するなら、可住・耕作面積当たり人口密度の開きはさらに大きくなる。
なお、日本・NZともに、太平洋造山帯に属していて、地震が多く、温泉の湧出が豊富で、気候条件も含めて、保養に適した国である点、共通しているようである。
以下、NZ旅行の印象を点描していくことにします。
オークランドからバスで235 km、南東に下るとロトルア。その郊外に森林浴を楽しめる森、レッドウッド・フォレストがあり、約30分間散策する(写真1)。高さ4, 50m超のレッドウッド(セコイア杉)が真っ直ぐ天に向かって延び、林立する森である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/e3/889a373c90533ae0dfb065acf2023de0.png)
大樹は、樹幹から推して樹齢千年前後かと思われる。この木々の間を透かして見ると、大小さまざまな“木性シダ”の群生が見られる(写真2)。写真3は、他の原生林中に群生した“木性シダ”である。このような“木性シダ”の群生は、NZの至るところの原生林中で見られる風景である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/b5/dbfc37a09dcea9efecb935c70dd0ab04.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/dc/fc58f1f32f54fdd84244e15599a7b1ad.jpg)
この“木性シダ”は、別名“銀シダsilver fern”と呼ばれていて、NZを代表する植物とされています。葉の表面は緑色であるが、裏が白(銀)色であることから“銀シダ”と呼ばれている。ただ、筆者は、実際に裏の白色を確認していませんが。
現在は、この枝・葉が図章化されて、NZ国を表す象徴として使われている。例えば、NZ航空の機体後方の絵(写真4)、ラグビーのオール・ブラックスの象徴などがそうである。記憶がやや薄れつつあるが、この図章を国旗に と提案されて、国民投票の結果、否決されるということがあった(1998)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/ff/507f726e807195d81179b6e4671232df.jpg)
なお、NZ航空機体尾翼の絵柄は、メリノ種雄羊の角を基にしたデザインの様である(写真5)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/7a/e55958876d38447ba243c1b2e07ccd25.jpg)
“木性シダ”について。シダ類の植物は、幹部分の組織に、横方向に太く“成長”する機能がないとのこと。“銀シダ”では、成長するにつれて、生来の“幹”の表面に“根”が重なり、蓄積されていき、一見、太い“木”に見えているのであると。“木性”の冠語が付けられている理由である。
なお、古来、マオリ族の人々は、その葉に“聖なるもの”を感じて、信仰の対象として扱っていた由である。
ロトルアからバスで155km西にワイトモの街があり、その郊外にワイトモ鍾乳洞がある。山口県の秋芳鍾乳洞と比較すると特徴が解りやすい。秋芳鍾乳洞では、天井が比較的低く、洞内が横に広がり、池を思わせる水溜まりもある。一方、ワイトモ鍾乳洞は、三角屋根の屋根裏のようで、上下、縦方向に広がり、横幅は比較的に狭い。
想像を逞しくして、切り立った2枚の石灰質の岩盤が、地殻変動により、その天辺部分でくっついて、その間にできた三角屋根状の空洞内の天井部分に鍾乳石が蓄積していったものと考えるとピッタリと来る。
山の中腹にある入口から入り、電光で明るく照らされた洞内を上り下りしながら進む。壁面には、縦長の裂けた、鋭い縁の岩石が乱立しているように見える。ある処では、尖塔のある教会、またある処ではパイプ・オルガン….と目を楽しませてくれる。
写真6は、この鍾乳洞の出口部分の写真である。この写真で、乳房状の鍾乳石の先端や壁面から、太さ1 mm前後、長さ10~30 cmほどの紐が無数にぶら下がっている様子を想像して頂きたい。そのような特徴的な風景も目に付くのである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/18/0942c138873a48d8fea2c2772d8a97e7.png)
さらに進み、下りの階段を10数m下ると、真っ暗闇の中で、懐中電灯の微かな光で、川淵にいることを知らされる。その川に浮かべたボートに乗って静かに進みつつ、天を仰ぎ見ると、満天に無数の星が散っているように見える (写真7)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/1a/5b6f9d76bafcb4f05d8c5e8b094daaae.jpg)
この写真では平面的で、左程に感興の湧く風景ではない。先述のように、洞内構造は、三角屋根状で、立体的に、天空部分が深く奥まっている。天を仰ぐと、奥まった屋根の頂き部分では、はるか彼方の宇宙から幾光年も経て届いた星々の光を想像させ、神秘的な空間となるのである。
天を仰ぎ、約10分前後、(と想像するが?)、異空間に身を置いて、時空を忘れて、やがて山裾の明るい出口に至り、我を取り戻すのである。
この光は、邦名“土ボタル”、正式名はglowworm (光を発する虫)と呼ばれる“虫”が発するもので、この鍾乳洞を世界的に有名にしている、最も特徴的な風景にしている。
この“土ボタル”だが、大きさ、形状ともに“蚊”に似た“虫”という。暗闇で光を発し、他の虫類をおびき寄せ、捉えて御馳走とする と。先にご想像頂いた“ひも状”のものは、他の虫類を捕らえる“装置”で、ちょうど蜘蛛が巣を張って飛んでくる虫を捕らえるのに似ている と。
なお、洞内、特に、“土ボタル”の鑑賞に当たっては、静粛を保ち、また写真撮影は禁止である。本稿“土ボタル”の写真は、観光用資料の部分コピーである。
ロトルアからNZ航空機で南島のクライストチャーチへ、さらにバスでマウントクックに移動(330 km)。筆者にとっては、この旅のクライマックスを迎えることになる。
通称クック山、正式名称はAoraki/Mount Cook(アオラキ・クック山)の由。Aoraki(アオラキ)は、マウリ語で、「雲の峰 / 雲を突き抜ける峰」という意味であると言われている。クック山は、NZ探検を行った英人James Cookに因んだ名称である。
南島を縦に南アルプスが走っており、その最高峰がアオラキ・クック山で、標高3,724 m、富士山より54 m 低いことになる。この山容も、富士山に劣らず麗しい姿である。
写真8では、碧天の下、雲を突き抜けている姿を捕らえることができました。また夕日に映えるその姿(写真9)も秀麗である。雨天の日が多いと言われるNZで、その秀麗な姿を真近に望むことができ、鳥肌の立つ思いであった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/25/b3110f55f1f1089ef0208295f1506d61.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/ef/d3e96c919e9cc8afcce2dae882c85305.jpg)
写真10は、その壁面に残る氷河を示しています。写真中央部、右下および左上の方向の崖状の箇所が、やや緑を帯びた青色で透き通るような色を呈しています。氷河の部分です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/70/614460b6a6c493d4d4cdb7c15e3e2246.jpg)
アオラキ・クック山の全容を望まんものと、ケア・ポイント(Kea Point)を目指してトレッキング。写真8および11は、そのコースの様子です。ホテルから出発点まではバスで移動し(写真8)、以後は、大きな岩石がゴロゴロと転がる歩道(写真11)を進みます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/42/90a2a800a7ab4df570302b7f3cf9ab70.png)
写真8および11で、谷間の形状は、盆地状で、山また山の間をクネクネと蛇行している様子が伺えます。すなわちU字型の谷間であり、氷河の流れで形成された川床である。大きな岩石は、氷河によって運ばれてきて、置き去りにされたものである と。
通常、水流により形成された渓谷は、水流が狭い幅で、より鋭くまた深く大地を抉っていく結果、V字型の谷間となる。氷河の流れで形成された盆地状のU字谷は、NZの土地を特徴付けるkeywordと言えるようである。
山の麓で、U字谷が堰き止められてできた氷河湖は圧巻である。写真12および13はその一つデカポ湖で、遥か先にアオラキ・クック山が望めます。湖水の独特の柔らかい色合いは、水に含まれる岩粉による太陽光の反射の結果である と。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/44/50/3fb6b3fc7a7f221c490bc823d1f0f07c.jpg)
写真13で手前湖岸の紫色の花はルピナスです。この辺りの国道沿いでは色鮮やかに咲かせた姿がバスの窓越しにもよく見られ“ルピナス街道”と呼ばれているようです。ただ、これは外来植物で、繁殖力旺盛なため、駆逐するのに苦労している由である。(つづく)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/1f/5672d7c00b028bd9b21b214146f54282.jpg)
今回の点描は、下記律詩の前半4句に該当しています。漢詩の内容が、“総天然色の静・動画”としてイメージ頂けるなら、本望とするところであります が。
xxxxxxxx
・完整新西蘭 八天游 完整(カンセイ)新西蘭(シンシ-ラン) 八天(ハチニチ)の游(タビ)
碧落雲浮羊歯繁, 碧落(ヘキラク) 雲浮いて 羊歯(シダ)繁る,
群星閃爍岩穴暗。 群星(グンセイ)閃爍(センシャク)す 岩穴(ガンケツ)暗し。
摩天頂雪奥拉基, 摩天(マテン) 雪を頂く 奥拉基(アオラキ),
山脚蓝绿氷水満。 山脚 蓝绿(ランリョク) 氷水(ヒョウスイ)満つ。
遼闊草原羊牛歇, 遼闊(リョウカツ)草原 羊牛歇(ヤス)む,
峡湾绝壁海豚玩。 峡湾(キョウワン)绝壁 海豚(カイトン)玩(アソ)ぶ。
忘飛山鳥無虎豹, 飛ぶを忘れし山鳥 虎豹(コヒヨウ) 無し
基啊噢啦新西兰。 基啊噢啦(キア オラ) 新西兰。
註]
・新西蘭:New Zealand (NZ) の漢字表記
・羊歯:ここでは‘銀シダ’のこと。‘銀シダ’は、NZ特有の”木性”のシダで、葉の裏が白(銀)色である。NZ Air機の胴体やラグビー・チーム、オール・ブラックスのシンボル図は‘銀シダ’の葉を表徴したもの。
・岩穴:鍾乳洞のこと。暗く広い洞窟内には‘土ホタル’が生息していて、満天の下 星が煌くように見える。
・奥拉基:マウリ語でクック山のこと。同山の公式名称は‘アオラギ・クック山’
・氷水:氷河によりできた U字谷で、氷河解けの水で出来た氷河湖の湖水で、ターコイド・ブルーを呈している。
・峡湾:フィヨルド、U字谷に海水が侵入してできた湾
・基啊噢啦:Kia Ora(キア オ-ラ);マウリ語で‘こんにちは’を意味する挨拶語。明るく、おおらかに響き、この一言で心が和む。
<現代語訳>
まるごとニュージーランド 8日間
碧天に白雲が浮き、地上にはNZを代表する銀シダの木が茂る、
暗い鍾乳洞の洞窟内では、満天‘土ホタル’の星が降るように煌いている。
雪を頂くアオラギ・クック山の尖頂は、天に突き刺さらんばかりに、
山裾の氷河湖にはターコイド・ブルーの水が満ちている。
果てしなく広がる緑の牧野には羊や牛の群れが草を食み、また休んでおり、
フィヨルドの湾内では、イルカが遠泳を楽しんでいるようだ。
虎や豹など天敵のいない島、飛ぶことを忘れた鳥が餌を請うて近寄ってくる、
キア オ-ラ と、明るく挨拶を交わす、空気や好しニュージーランドである。
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