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読書案内「最期の言葉の村へ」 ①パプアニューギニア・熱帯雨林の村

2021-03-08 06:40:45 | 読書案内

読書案内「最期の言葉の村へ」 ドン・クリック//著  上原恵//訳
              ー消滅危機言語タヤップを話す人々との30年ー 
  ① パプアニューギニア・熱帯雨林の村

   いかにして古代からの言葉が消えていくのか。西欧文明が村から奪っていったものとは-。パプアニューギニアの村ガプンの人々と寝食を共にし、ネイティブ原語を30年間にわたり調査してきた言語人類学者によるルポルタージュであり、学術書ではない。

 (原書房 2020.1.25刊 第一刷)
  著者は通算30年にもわたり、言語がどのように消滅していくのか調査研究した。
  本の紹介をする前に、書かれた内容理解するため、
  調査対象となったパプアニューギニアのことを調べてみました。

 場所は、オーストラリアの北で太平洋の島国。
 面積は日本の約1.5培だが、未開の地も多い。治安も良くないようだ。
 人口は約600万人で、1㎢に12人の人口密度である。
 日本は1㎢に347人、東京は6015.7人/1㎢と比べれば一目瞭然。
 民族は多民族国家で、少人数の部族に分かれて生活している。
 部族の単位は少ない部族で数十人~数百人で、
 それぞれの部族ごとに独自の言語、習慣、伝統を持っている。
 英語が共通語だが、部族ごとの言語を持っている。
 パプアニューギニアは世界で最も言語の豊富な国といわれ、
    また世界で最も言語の消滅の危険が高い国と言われている。
            
 険しい山岳地帯、湿地帯に阻まれて部族間の交渉が少なかったこともあり、
 小さなコミュニティが独自の文化・言語を発達させ、人口が600万人に対して、
 言語の数は800以上にもなる

 そのうち130の言語の話者が200人以下であり、290の言語の話者が1000人以下である。
                                   (ウィキペディア参照)  
   調査対象となったのは、熱帯雨林の奥深くにあるガンプという村だ。
   かっては村人はタヤップ語(おそらく、ギリシャ語、中国語、ラテン語と同じくらいに古い言語)
   を話していた。
   この国は、世界中のどの国よりも多くの言語を有している。
   800万人余り(ウィキペディアでは600万人となっている)が暮らす地域に、
   1000以上の異なる言語、単に方言や変種だけでなく、まったく別の言語が存在する。
   その大半はいまだ文書に記録されておらず、多くは、500人以下の話者しかいない。
           著者のドン・クリック氏は、タヤップ語はまったく独自の言語で、
   係累がなく文字を持っていない。

現在、この言語(タヤップ語)を積極的に話すのは50人にも満たない。近い将来、タヤップ語は私がこの歳月で残した記録にしか登場しなくなるだろう。話者がいなくなり、言語が忘れられたあと、記禄だけが心霊体のごとく長い間残ることになる。(引用)

   川を船でさかのぼり、幾日もかけて森林を進んだ熱帯雨林の奥深くにどの言語とも関連していな
 いらしい言語を話す小集団があるらしい……。
  言語学者レイコックが現地人から得た情報であるが、
 この言語学者はこの小集団が住むと言われる村に行ったわけではない。
 ガンプと言われるこの村はあまりに遠く、未開の地に在ったからだ。
ガンプの村は、
20ほどの小さな家が狭い空地の真ん中にでたらめに並んでいるような無秩序な場所だった。
大量発生する蚊、ワニ、くねくね動いて人の眼の中に入って行こうとする黒いヒル、
きわめて毒性の強い蛇、果てしなく広がる泥、泥の中にひそむぎざぎざの鋸歯を持つ蔓性植物。
そして、何よりも暑い。
うだるような、情け容赦ない、頭の痛くなる、ぐったりさせる蒸し暑さに、
全身の毛穴から汗が噴き出すような劣悪な環境が彼らの生活環境である。
 身長は五フィート(約150㌢)以下、靴はなく、裸足である。
獲物を獲り、果実を採るために足は重要な道具になるのだろう。
平たく広がり、大きくて足指は物でも摑めるくらいに大きい。

 このガンプ村に著者のクリックが、最初に訪れたのは1980年代半ば、
今から34年前だった。
人類学を学ぶ大学院生として、そこで1年以上暮らすことになる。
以後、彼はこの村での研究に30年の時を費やす。
村での生活は延べ3年にもなる。
彼は述懐する。   

熱帯雨林の真ん中にある湿地の裂け目に形成された、
非常に行きにくい場所にある人口200人の村で生きるのが、
どういうことかを書いたものだ。
村に住む人々が朝食に何を食べ、どのように眠るのか。
村人がどう子供をしつけ、どんな冗談を言い合い、どんな悪態をつきあうのか。
どんな悪態をつき合うのか。
どんな恋愛をし、何を信仰し、どんなふうに口論し、どう死ぬのか……。
そしてまた、ある日どこからともなく表れて彼らの言語に興味があると言い、
しばらくのあいだうろうろする許可を求めてきた白人の人類学者をどう思っていたのか。
 その″しばらくのあいだ〟は、結局30年以上に及ぶことになった。(引用)

  熱帯雨林のなかの、
  孤絶した劣悪な生活環境の中でガンプの人々の言語がどうして消滅していくのか。
  次回は、西洋化の中で村がどのように変わっていき、
  独自の言語がどうしてガンプの村から消えようとしているのか。
  なぜ彼らが自分たちの文化の長い歴史のの過程で生まれた
  自分たちの言葉を話さなくなっていくのかを紹介します。

     (読書紹介№167)                  (2021.1.)

この本も、「誰も閲覧してない本」のコーナーに、読者を待っているかのようにひっそりと収まっていた本でした。



 


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