雨あがりのペイブメント

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読書案内「1968」 三億円事件

2019-01-10 07:30:00 | 読書案内

 読書案内「1968 三億円事件」アンソロジー・短編集
         幻冬舎文庫 日本推理作家協会編2018.12.10刊                         
                    ( 事件から丁度50年目に出版されています)
    三億円事件を題材に以上の短編を収録。
    今野 敏以外はマイナーな作家だが、同一テーマで
    編集されると作家の力量が一目瞭然だ。
    本書は「小説幻冬」に掲載された作品を再構成した文庫オリジナル 


  三億円事件とは
 東京府中市で1968(昭和43)年12月10日に発生した窃盗事件である。1975(昭和50年)12月10日に公訴時効が成立し未解決事件となった。日本犯罪史において最も有名な犯罪の一つにも数えられ、「劇場型犯罪」でありながら完全犯罪を成し遂げたこともあり、この事件を題材としてフィクション・ノンフィクションを問わず多くの作品が制作されている。 (ウィキペディア)

 (事件当時公開された犯人のモンタージュ写真。1971年に「犯人はモンタージュ写真に似ていなくてよい」と方針を転換、問題のモンタージュ写真も1974年に正式に破棄されている。しかし、その後も本事件を扱った各種書籍などでこのモンタージュ写真が使用され続けており、犯人像に対する誤解を生む要因となっている)。(ウィキペディア)
 事件当時(昭和43年)の3億円は、現在の20~30億円ぐらいに相当するようです。
 この3億円どこへ消えてしまったのか?
  (犯行現場に残された偽装白バイ)

 アンソロジーの内容
 50年も前に起きた超有名な未解決事件でもあり、多くの作家によって小説に書かれ、
ネタも尽きたようです。
今さらどんな料理方法があるのか?
作家の力量とアイデアがものをいうアンソロジーだ。
この文庫本は、幻冬舎の月刊誌「小説幻冬」に数度に渡って掲載された「三億円事件もの」の短編を
集めて出版されたアンソロジーだ。
こうした形式のアンソロジーはテーマに沿って安易に集めてしまえば、凡打に終わってしまう。
しかも、選択の幅が自社の「月刊誌」という範囲では、優れた作品を集めることが難しい。

  ① 下村敦史 …… 楽しい人生
   事件当日、事件現場にいて、偽装白バイに乗った犯人の顔を見てしまった少年の話。
   不良グループの一員だ。札付きのワルたちの集団の一員である少年も当然、
   容疑者の一人として警察の取り調べを受ける。
   犯人が盗んだ三億円を横取りした少年は、この三億円をある場所に隠してしまう。
   犯罪に途中から加わった不良少年視点を変えて、描いた良作。
   意外な結末がラストに用意されている。三億円は何処へ消えたのか……。

  ② 呉 勝浩 …… ミリオンダラー・レイン
   元学生運動の闘士から誘われる「現金強奪」。爆破予告の脅迫状。現金輸送車を襲う。
   偽装白バイ等綿密な計画。決行日が近づくが……。
   予想もしなかった事件が発生し、彼らが立てた計画は実行されずに終わった。
  
  ③ 池田久輝 …… 欲望の翼
   香港で起きた三億円事件を真似た強奪事件、ということだが、この短編を「三億円事件」の
   アンソロジーに加えるにはいささか強引だ。

  ④ 織守きょうや …… 初恋は実らない
         初めて恋をしたのは、十一歳の冬。雨の日だった。
       昭和四十三年十二月十日、午前九時三十分、府中市栄町三の四、府中刑務所の北。
   学園通りといわれている通りの狭い歩道を、私は一人、学校に向かって歩いていた。
   物語の冒頭の一節である。
   三億円事件が起きた場所、同時刻。遅刻して学校へ向かっていた少女。
   少女は偶然にもこの強奪事件の現場に遭遇し、偽装白バイに乗った犯人の顔を目撃してしまう。
   そして、あろうことかこの男に恋をしてしまう……。
   目撃者の少女の視点で描かれる「三億円事件」。アイデアが面白い。

  ⑤ 今野 敏 …… 特殊詐欺研修
   三億円事件をこんな形で描く意外性が面白い。
   設定された舞台が「特殊詐欺研修」の研修中に発生するという。
   読後の爽快感が何とも言えないが、これ以上の紹介はネタバレになってしまうので、
   興味のある方は読んでみてください。

   参考:私が読んだ三億円事件をテーマにした小説。
    〇 『小説三億円事件「米国保険会社内調査報告書」』
                  松本清張(『水の肌』所収 新潮社 1978年刊
    〇 『時効成立―全完結』  清水一行 角川書店 1979年刊
    〇 『閃光』        永瀬準介 角川書店 2006年刊
             ※ どれも面白く読むことができました。
    (2019.1.9記)          (読書紹介№135)
 

 

 
 
 
 
 

 


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