案内板には次のような文が書いてありました。
『月の明るい夜に、なんとも言いようのない美しい琵琶の音がきこえてくる。
そんな少し前、目の不自由な法師が美しい妻を連れていたのを
何人もの村人が見ていました。
月の明るい夜、その法師が鬼怒川のすぐ東側にある掘立小屋の中で、
一心に琵琶を奏でていた。
そのすがたは、まるで、
神の化身のように神々しく見えたということです。
ところがしばらくすると、
美しいおかみさんの姿が見えなくなり、
盲目の法師は、日常生活にも困るようになってしまいました。
村人たちが何かしてあげなければと相談している間に、
琵琶法師は鬼怒川の高い崖から身を投げてしまったそうです。
そんなことがあった後も、
しばらくは、月の明るい夜には、
美しい琵琶の音が聞こえていたそうです。
やがてそれもいつの間にか聞こえなくなったそうです。
遠い昔、
この物語のあった勝爪の北の地を村人たちは琵琶峰と呼ぶようになりました。
ここは、そんな悲しい物語のあるところです』
この「琵琶峰」は勝爪の北の地といわれているが、
今、この地名は残っていない。
うっそうとした茂みの間から垣間見る鬼怒川の淵が
蒼い淀みをたたえて、遠い昔の物語を今に伝えている。
そこに立った私には、かすかに琵琶の美しい調べが、
風に乗って一瞬聞こえてきたような気がした。
(つづく)
『月の明るい夜に、なんとも言いようのない美しい琵琶の音がきこえてくる。
そんな少し前、目の不自由な法師が美しい妻を連れていたのを
何人もの村人が見ていました。
月の明るい夜、その法師が鬼怒川のすぐ東側にある掘立小屋の中で、
一心に琵琶を奏でていた。
そのすがたは、まるで、
神の化身のように神々しく見えたということです。
ところがしばらくすると、
美しいおかみさんの姿が見えなくなり、
盲目の法師は、日常生活にも困るようになってしまいました。
村人たちが何かしてあげなければと相談している間に、
琵琶法師は鬼怒川の高い崖から身を投げてしまったそうです。
そんなことがあった後も、
しばらくは、月の明るい夜には、
美しい琵琶の音が聞こえていたそうです。
やがてそれもいつの間にか聞こえなくなったそうです。
遠い昔、
この物語のあった勝爪の北の地を村人たちは琵琶峰と呼ぶようになりました。
ここは、そんな悲しい物語のあるところです』
この「琵琶峰」は勝爪の北の地といわれているが、
今、この地名は残っていない。
うっそうとした茂みの間から垣間見る鬼怒川の淵が
蒼い淀みをたたえて、遠い昔の物語を今に伝えている。
そこに立った私には、かすかに琵琶の美しい調べが、
風に乗って一瞬聞こえてきたような気がした。
(つづく)
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