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脳梗塞の治療 tPA静注療法:再開通率 

2009年03月15日 | 脳梗塞
tPAを点滴した時にどの程度つまった血管が開通するのでしょうか?
まずこの治療が日本で認められた時に私自身が抱いた疑問です。
それまでカテーテルを使った動脈内注入療法で良い成績が出ていたからです。

このtPAという薬は「血管の中にできた血栓を溶かして再開通させる」作用があります。
この薬は点滴により体内の全ての血管を巡りますが、前回の図に書いてあるようにフィブリンという血栓に含まれる物質のみに効く性質を持っています。
このためカテーテルを使ってつまった頭の血管の中に直接注入しなくても、点滴だけするだけでいいのです。
すばらしいですよね!
でももしそれまでの方法より効きが悪かったら患者さんが気の毒ですよね。
それに私自身が絶対に許せません。
なぜなら脳の血管が詰まっている時には、早く開通するほど後の回復がいいからです。
なのにアメリカで始まったこの研究は血管が再開通するかどうか調べずに認可されているのです。

それでこの治療をする患者さんを全員脳血管撮影室に搬入して、治療前から点滴中ずっと血管撮影を行うことにしました。
どのぐらい詰まっている血管が通るのか?
その結果、27人中6人、たった22%しか再開通しなかったのです。
この数字には衝撃を受けましたし、大変残念ですが現実です。
この結果は学会でも注目されています。

しかし実はこの調査が進行するより前に現場のスタッフたちは気づき始めていたのです。
私たちのチームはいつも動注とバルーンカテーテルを使った治療で、詰まった血管を再開通させてきました。
だからtPA静注療法をはじめてわずか数例で「この治療法は効果が少ない」と気づき始めていたのです。

でもアメリカのFDAが認可した、高いレベルのエビデンスのある治療です。
日本でも私の尊敬する山口武典先生をはじめ、トップレベルの脳血管内科医、脳神経外科医が中心となって推し進めている治療薬です。
どうしたらいいのでしょうか?


コメント (1)
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