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脳動脈瘤 その20 外科手術 1. クリッピング術 「どのように進んでいくのか?」

2020年11月05日 | 動脈瘤
前回は脳の表面がどのように見えるかを紹介しました。
では、脳の表面から動脈瘤までどのように進んでいくのでしょうか?

前回見えた「脳のすきま」を分けていくのです。
上の図を見てください。脳と脳の隙間には半透明の膜が張っています。
これが「くも膜」です。
これをハサミで少しずつ切っていくと、脳と脳の隙間が広がって、奥が見えるようになるのです。
こう説明するととても簡単そうに思われるかもしれませんが、実際には脳や血管を傷つけずにすきまを開いていくのには一定の技術が必要です。
ハサミだけではくも膜はうまく切れません。ちょうどティッシュペーパーをハサミできるような感じでうまくいかないのです。
ではどうすればいいのか?

ティッシュペーパーを切ろうと思ったら、両側を引っ張ってつっぱった状態にすれば切れます。
ちょうどそれと同じような状態を手術中につくりだせば良いのです。
具体的には脳ベラと吸引管でこのような状態を作り出します。
また、私たちはまったく血が出ない「無血状態」で手術を進めていくことを理想としています。
なぜなら、血液のまったくない綺麗な術野で手術を進めていけば、脳や神経、血管など、すべてがクリアに観察できるからです。当然、このような状況なら安全な処置が可能です。
では、どのようにトレーニングすれば綺麗な手術ができるのか?
その詳細についてはここでは割愛しますが、良い指導者について、手術の手順をしっかりと理解すること、丁寧な手技を心がけること、そして私がスイスで経験したようなバイパス手術などのトレーニングをしっかりと積んでいくことが重要なのです。
そのようにして多くの経験を積んだ術者の手術は芸術のようなものです。当然、手術の成績も良好です。
このような術者になることを目指して私たち脳神経外科医は修練を積んでいるのです。
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2 コメント

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4ミリの動脈瘤 (吉村 紳一)
2020-11-12 23:09:55
了解しました。次回、本編で紹介しますね!
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Unknown (佐藤)
2020-11-11 12:20:48
はじめまして
昨年11月に右側のクリッピング手術をおこないました
そして左側にも4ミリの見破裂動脈がありますが
主治医はクリッピングをと進められ
執刀医は経過観察をといわれました。
吉村先生は4ミリと言う大きさ
どの様におもわれますか
返信する

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