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脳梗塞の治療 tPA静注療法

2009年03月10日 | 脳梗塞
脳梗塞急性期に行うtPA静注療法。
どのぐらい効くのでしょうか?

前にもお話ししましたが、ある治療の効果を本当に確認するためには
その治療を行うかどうかをランダムに振り分けて
1)治療を行うグループ
2)治療を行わないグループ
を比較する必要があります。

tPA静注療法はこういった振り分け試験を受けて効果が証明されています。
1995年アメリカの国立衛生研究所(NIH)の研究によって、この治療による予後改善効果が認められたのです。
tPAの投与を受けたグループでは状態の良い患者さんが39%、偽薬を使ったグループでは26%と、状態の良い患者さんがtPAの投与により13%増加していました。

というと「え?たったそれだけですか?」といわれそうです。
確かにこの治療を行えば、「良くなる患者さんが増える」のですが、全ての患者さんが良くなるわけではないのです。
その一つの理由は血栓が溶けない場合があることです。
もう一つの理由は血栓を溶かす強力な薬なので、効き過ぎによる脳出血が起きるためです(全体の6.4%)。
「薬の点滴」といっても、リスクなしで治療できるわけではないのです。普通のクリニックで受ける水分補給のためのの点滴とは全く違うのです。

一方、この治療の非常に良い点は、「CTスキャンさえあれば、医師が一人いればどこでもできる」ことです。
それまで血栓溶解を行っていなかった中小の病院でも、CTさえあれば、一人の医師がやる気になればできるのです。
これがtPA静注療法の最大の利点です。

ただ日本は医療大国です。医療レベルは世界一と評価されています。
脳卒中の専門家も非常にたくさんいますし、救命センターや脳卒中センターはたくさんあります。
よほど山の中や離島でなければ、大きな医療機関が短距離に存在するのです。
ですから日本では専門家による治療が短時間で受けられることが多い。
ここがアメリカとの大きな違いです。

私が欲張りなのかもしれませんが、「自分が出会う患者さんは全員良くなってほしい」と思ってしまいいます。
ですからこの治療が新たに承認されたとき、その本当の効果を確認したいと思いました。
なぜならそれまでずっと、私は脳梗塞の急性期にカテーテルを使った血栓溶解療法を行って非常に良い結果を得ていたからです。
点滴だけでどのぐらい溶けるのでしょうか?
次回にその最新の結果をお話しします。

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