脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

消防隊と救急救命士

2009年06月05日 | 閑話休題
今日は縁あって、本巣消防の皆さんに講演をさせて頂きました。
皆さんご存知ですよね、救急隊の仕事。
救急活動と消防業務の両方を行うんです。
自らの命をかけた重要なお仕事だと思います。

さて上の写真で、グレーの服を来た人たちがいます。肩の辺りがぴかっと光っていてかっこいいですね。
この人たちは救急救命士さんです。
私は実際に病院内でお会いすることもありますが、実際にどのような資格で、どういうトレーニングを受けているのか、あまり知りませんでした。
少し調べましたので解説します。

救急救命士は厚生労働大臣が認定する国家資格です。
一般の救急隊員との違いは「特定行為」が行えることです。
それには1)AED(自動体外式除細動器)を用いた除細動処置、2)乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保、3)器具を用いた気道の確保、4)薬剤(強心剤)投与、5)気管挿管、があります。
救急の現場は、患者さんの人生を左右する最も重要なところです。
救急救命士が増えて、日本のどこでもレベルの高い救命行為が迅速に行える体制が整ってほしいと思います。

さてその救急救命士の受験資格は
①高校卒業者であって、学校又は救急救命士養成所において2年以上救急救命士として必要な知識及び技術を習得したもの。
②消防法に規定する救急業務に関する講習の過程を修了し、5年以上又は2000時間以上救急業務において1年(現職の救急隊員の場合は6ヶ月)以上救急救命士として必要な知識及び技術を習得したもの
となっているようです。
実際お聞きしたところ、すでに救急業務を十分に行ってきた方が、6ヶ月以上、東京または九州の養成所で特別な訓練を受けて受験資格が得られるということです。
なるのはかなり大変なんですねー。しかもその不在期間はそれぞれの消防隊がカバーするとのことです。
それでもこの本巣消防は現在、すべての救急隊出動に100%救急救命士が同乗するとのこと!
皆さん、勉強熱心で、努力家ですね。
それを管理される所長さんや管理職の方々も大変だと思います。

私自身が救急隊の方に敬意を払っている理由。
それは「自らの命の危険をおかして他人を救う」という点にあります。
以前に金沢大学の濱田先生がパイロットと医師との違いを説かれましたが、救急隊も全く同じです。
私たち医療関係者はあくまでも病院の中で、運ばれてきた患者さんを治療します。
自分の命の危険は一部の例外を除いてほとんどありません。
徹夜で手術したって、自分の命がなくなることはないですから。

しかし火事の現場で人を助け出したり、事故現場で人を救助するのは違います。
自分にはとてもマネができません。
私にできるのは運ばれてきた患者さんを一人でも多く救うことです。
しかし何らかの形で、彼らの仕事を少しでも援助したいと思います。

本日お伺いした本巣消防は、自分の生まれ育った地区を担当しておられ、普段からの感謝の気持ちから講演をさせて頂きました。
もちろん我々が懸命に治療している脳卒中急性期の最新情報をお伝えし、発症後3時間を超えても良い治療法があることをお話ししました。
これからますます連携が良くなるように努力したいと思います。
みなさん、よろしくお願いします。
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早川先生ありがとう!

2009年06月03日 | 人物紹介
昨日は藤田保健衛生大学脳神経外科の早川基治先生が見学に来てくれました!
頚動脈ステント留置術と脳動脈瘤塞栓術をみてもらいました。
治療中にもディスカッションが出来て有意義でした。
治療後、一緒に写真を撮らせてもらいました。
(左から山田、早川先生、船津、私、江頭)

藤田健衛生大学は日本でも最も症例数が多いことで知られています。
ですから「見学だけではもったいない!」ということで、急遽お願いしてレクチャーをしてもらいました。
岐阜市近辺の10名程の脳血管内治療医が集まりました。
テーマは「急性期脳梗塞の治療マネジメント」。
我々が心血注ぐこの領域で、彼らもアクティブに治療を行っていることを知っていたので私がお願いしたのです。
彼らはバルーンでの破砕だけでなく、特殊な異物除去用ワイヤーでの血栓破砕や太めのカテーテルを上げて血栓を吸引する試みを行っていました。
大変参考になりました。

その後、参加者全員にわれわれの前向き登録を紹介して意見をもらいました。
大分いい感じになってきました。

早川先生、ありがとう!
今月からチューリヒに3ヶ月留学されるということですが、実りある滞在になることを祈っています。
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LINNCで得たもの

2009年06月02日 | 閑話休題
今日は印象的なことがありました。
以前重症のくも膜下出血でコイル塞栓術を行った患者さんが今日、久しぶりに私の外来に来ました。
他県に引っ越していたのですが、調子が悪いということで来てくれたのです。
この患者さんはもともと大型の血栓化動脈瘤の破裂だったのですが、一命を取り留めたばかりか、完全に回復されたのです。
しかし半年後に動脈瘤が再開通し始め再治療を勧めてきました。
でも本人も奥さんも拒否され、その後、他県に引っ越すということでそこの専門医のドクターに紹介しました。

今日、診察すると、前はあんなに元気だったのに、ぼーっとして歩きもおぼつかない。
すぐにCTを撮ると動脈瘤が巨大化し、脳を圧迫していました。
以前は開頭手術を勧めていたのですが、こうなるとLINNCで見てきたステントとコイルの併用療法しかない。
もちろん日本には海外のように頭蓋内血管専用のステントはありませんが、冠動脈のものを応用すれば何とかなりそうです。
治療は万全を期して2週間ほど後に予定しました。

上の写真は実際にLINNCで紹介されたステントとコイルの併用療法の写真です。
ステントが非常に柔らかいので曲がった血管にきれいに沿って留置されているのが分かります。
ライブではもっと進んだ治療、つまり「ステントだけで直す」治療が多かったのですが、それに見合うデバイスが日本にはまだありません。
日本ではステントとコイルを併用するのがベストだと考えています。

血栓化巨大動脈瘤が脳の深いところにできると、日本ではまず「治療不可能」ということになってしまいます。
自分も救えなかった患者さんが何人もいます。
もちろん治療にある程度の合併症の確率はありますが、良いステントを使えば根治できる時代が来そうなのです。
この方法は難しい動脈瘤の患者さんの救いの手となるはずです。
早い認可を期待したいところです。
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