ハードバピッシュ&アレグロな日々

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ソニー・ロリンズ/ザ・サウンド・オヴ・ソニー

2024-10-11 19:30:47 | ジャズ(ハードバップ)

1950年代後半に全盛期を迎えたソニー・ロリンズはさまざまなレーベルに怒涛の勢いでリーダー作を発表しますが、1957年頃から演奏にも実験的な要素が加わり始めます。当時は異例だったピアノ抜きのトリオ演奏がまさにそれで、「ウェイ・アウト・ウェスト」「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜」「フリーダム・スイート」と次々とピアノレス作品を発表します。当時のロリンズはテナーの第一人者としての評価を確立していましたが、現状維持を潔しとしない求道者的な性格が、新たなスタイルの開拓に駆り立てたのでしょう。この後、1959年からロリンズは3年間の充電期間に入りますが、ニューヨークの橋の下でひたすら練習を繰り返したのは有名なエピソードです。

一方で、この頃のロリンズは上記のピアノレス作品群とほぼ並行してオーソドックスなスタイルの作品も次々と発表しています。ブルーノート盤「ニュークス・タイム」や西海岸のオールスターを集めた「コンテンポラリー・リーダーズ」に加え、今日ご紹介するリヴァーサイド盤「ザ・サウンド・オヴ・ソニー」もそうですね。それらの作品は総じてスタンダード曲多めで、ロリンズも朗々とテナーを吹いており、ジャズ初心者でも十分に楽しめる内容です。

本作「ザ・サウンド・オヴ・ソニー」の録音年月日は1957年6月。タイトルにあるように、もう1人のソニーことソニー・クラーク(ピアノ)が加わっているのが最大の売りですね。2人の共演はこれが最初で最後ではないかと思います。ベースは曲によってパーシー・ヒースとポール・チェンバースが交代で務めており、ドラムはロイ・ヘインズです。

全10曲。2曲を除いて後は全てスタンダードです。基本的にはオーソドックスなピアノ入りのカルテット演奏ですが、1曲目の”The Last Time I Saw Paris"はピアノレストリオ、8曲目の”It Could Happen To You"はドラムもベースも抜きの無伴奏テナーソロでこの頃のロリンズのチャレンジングな姿勢が垣間見えます。”Just In Time"”What Is There To Say"”Dearly Beloved"”Ev'ry Time We Say Goodbye”あたりは有名スタンダードをシンプルに演奏しており、中でもバラードの”What Is There To Say"が秀逸ですね。

ただ、個人的イチ押しは3曲目の"Toot, Toot, Tootsie, Goodbye"。1920年代にアル・ジョルソンが歌った曲のようですが、インストゥルメンタルで演奏されることはほぼありません。youtubeで聴いたジョルソンの歌も他愛のないポップソングとしか思えませんが、これが見事なジャズになっています。ソニー・クラーク率いるリズム・セクションをバックに力強いテナーソロを繰り広げるロリンズが最高ですね。9曲目”Mangoes"も前年にローズマリー・クルーニーがヒットさせたラテンソングですが、こちらも出色の出来です。自作曲では7曲目”Cutie”がおススメ。可愛らしいタイトルどおり歌詞を付けたくなるような親しみやすいメロディを持った曲です。ラストの”Funky Hotel Blues"はCD用のボーナストラックだけあってまずまずの出来です。

 


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