ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

マーティ・ペイチ/ブロードウェイ・ビット

2025-01-07 19:23:58 | ジャズ(ウェストコースト)

本日はマーティ・ペイチです。彼については当ブログでもたびたび取り上げてきましたが、本職はピアニストでモード・レコードにトリオ盤を残したりもしていますが、どちらかと言うとアレンジャーとしての活躍の方が目立ちますね。特に歌伴には定評があり、メル・トーメの名盤「シューバート・アレイ」やエラ・フィッツジェラルドの「エラ・スウィングス・ライトリー」等で洒落たアレンジを施しています。ペイチの率いるバンドにはウェストコーストで活躍していたジャズマンが多数起用されており、アンサンブルの間に挟まれる各プレイヤーのソロも聴きモノですね。今日ご紹介する「ブロードウェイ・ビット」はそんなペイチが1959年5月にワーナーブラザースに吹き込んだ作品。ジャズマニアの間では昔から”踊り子”の通称で親しまれている1枚です。内容的には上述のヴォーカル作品群から歌を抜いたような演奏、と言えばイメージがしやすいでしょうか?歌がない分、各楽器にもソロパートがより多く割り当てられており、西海岸の名手達のプレイを存分に味わうことができます。

メンバーは総勢12人で、ステュ・ウィリアムソン&フランク・ビーチ(トランペット)、ビル・パーキンス(テナー)、アート・ペッパー(アルト)、ジミー・ジュフリー(バリトン&クラリネット)、ボブ・エネヴォルセン(ヴァルヴトロンボーン)、ジョージ・ロバーツ(バストロンボーン)、ヴィンス・デローザ(フレンチホルン)、ヴィクター・フェルドマン(ヴァイブ)、ペイチ(ピアノ)、スコット・ラファロ(ベース)、メル・ルイス(ドラム)です。注目はやはりアート・ペッパーですね。彼はペイチ作品の常連でタンパには共同リーダー作も残していますし、ペイチの手掛ける歌伴にもかなりの割合で参加しています。ビッグバンドなので一つ一つのソロは短いですが、フレーズの美しさが一頭抜きん出ていますね。

全9曲。タイトルどおり全てブロードウェイのミュージカルナンバーを集めたものですが、ほとんどの曲がスタンダード曲として定着しており、聴きなじみのある曲ばかりです。1曲目はコール・ポーターの"It's All Right With Me"。テーマ部分の重低音トロンボーンはジョージ・ロバーツでしょうか?その後はフェルドマン→エネヴォルセンらが軽快にソロをリレーします。2曲目の"I've Grown Accustomed To Her Face"は有名な「マイ・フェア・レディ」の曲ですね。たゆたうようなホーンアンサンプルをバックに、ジミー・ジュフリーのクラリネット→ペッパーと美しいソロを取ります。3曲目は"I've Never Been In Love Before"で、様々な楽器がソロを取りますが、何と言ってもペッパーのきらめきに満ちたソロが最高です。続く"I Love Paris"は少し変わったアレンジで、ホーン陣の重低音アンサンブルとクラリネット→ミュートトランペットの掛け合いで曲が進行します。

後半(B面)1曲目は"Too Close For Comfort"。この曲はペッパーが何度も演奏した得意曲で、ここでも彼のきらめきに満ちたソロで始まり、ウィリアムソン→フェルドマン→ジュフリーとソロをリレーします。6曲目はメドレーで前半は”Younger Than Spring Time"でジュフリー→ペッパー→ウィリアムソンのミュートとつなぎますが、途中で"The Surrey With The Fringe On Top"に変わり、ラストは2つの曲がミックスされる凝った作りです。7曲目"If I Were A Bell"はマイルス・デイヴィスで有名ですが、ここでは実際に鐘の音が鳴ります。ソロはジュフリー→ウィリアムソン→パーキンス→フェルドマン→エネヴォルセン→ペッパーの順でしょうか?8曲目"Lazy Afternoon"はフレンチホルンが主旋律を奏でる幻想的な曲でペッパーとフェルドマンのソロが挟まれます。ラストトラックの"Just In Time”はパーキンスがテーマメロディーと最初のソロを吹き、ウィリアムソン→エネヴォルセン→ペッパー→ジュフリーとソロをリレーして締めくくり。

なお、ジャケットにはソリストの記載はないので、全て私の推測です。トランペットはステュ・ウィリアムソンではなくフランク・ビーチかもしれませんが、そもそも誰それ?って感じですし、まあ大体合っているでしょう。なお、ワーナーには本作の兄弟盤としてシャワー中の美女がジャケットになった通称”お風呂のペイチ”がありますが、それについても近日中にご紹介します。

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ディジー・アトモスフェア

2025-01-06 18:11:29 | ジャズ(ハードバップ)

1956年11月5日に18歳4ヶ月でデビュー作「インディード!」をブルーノートに吹き込んだリー・モーガンは、翌日にはサヴォイに「イントロデューシング・リー・モーガン」、翌12月にはブルーノートに「リー・モーガン・セクステット」を録音。トランペットのニュースターとして破竹の快進撃を見せます。この時点でモーガンにはソロとして十分やっていけるだけの実力があったと思うのですが、モーガンは並行してディジー・ガレスピーのビッグバンドにも加入し、1958年まで同楽団に所属します。ビッグバンドでは必ずしも自分の思う通りにプレイできるわけではありませんが、尊敬するガレスピーや他の先輩ジャズマン達との共演は早熟の天才モーガンにとって良い経験となったようです。

今日ご紹介する「ディジー・アトモスフェア」はガレスピー楽団所属時のモーガンが同僚メンバー6人と収録したセッションをスペシャルティと言うR&B専門のレーベルが発売したものです。ボスのガレスピーは不在で、各メンバーが対等の立場で参加したいわゆるリーダーレス・セッションですね。録音は1957年2月18日、西海岸ハリウッドで行われており、おそらくガレスピー楽団のツアー中に機会が設けられたのでしょう。

モーガンはまだ18歳7ヶ月でしたが、そのこともあってかジャケットには登場せず、メンバーの中で年長格のアル・グレイ(トロンボーン)とビリー・ミッチェル(テナー)の写真が使われています。ジャズの世界でも年功序列的なものがあったのでしょうね。ただ、年長と言ってもグレイ31歳、ミッチェル30歳なので十分若いですが・・・その他のメンバーはビリー・ルート(バリトン)が22歳、ウィントン・ケリー(ピアノ)が25歳、ポール・ウェスト(ベース)が23歳、チャーリー・パーシップ(ドラム)が27歳です。ビリー・ルートはつい先日「マンデー・ナイト・アット・バードランド」で紹介したばかりですが、フィラデルフィア出身の白人で、ここではテナーではなくバリトンサックスを吹いています。

ただ、実際の演奏ではやはり一番目立っているのはモーガンですね。特にオープニングトラックの"Dishwater"。イントロからいきなり目の覚めるようなソロを取るウィントン・ケリーも大概凄いのですが、その後に登場するモーガンが圧巻の一言。まさに火の出るような、と言う表現がぴったりの強烈なソロを3分間に渡って見せつけます。これで18歳とは恐るべし。まさに天才ですね。その後に続くビリー・ルートのバリトン、アル・グレイのトロンボーンもなかなかエネルギッシュですが、モーガンのインパクトには負けます。

ところでこの曲の作者はロジャー・スポッツと言う人なのですが、本作収録の全8曲中5曲が彼の曲です。他では聞かない名前ですが、調べたところオハイオ出身の黒人ジャズマンで主に西海岸でアレンジャーとして活躍したとか。ディスコグラフィーには70年代のポルノ映画!?のサントラとか、80年代のビッグバンド作品が出てきましたが、ちょっとよくわからない謎の存在ですよね。ただ、作編曲のセンスはなかなかのもので2曲目”Someoe I Know"はまるでスタンダード曲かと思うような美しいバラードで、モーガンの吹くテーマメロディに続くビリー・ミッチェルのテナーソロと編曲も見事です。その他の”D.D.T.""About Time""Rite Of Swing"はアップテンポの曲で、4管のアンサンブルと各楽器のソロが適度に組み合わさったカッコいい演奏。隠れた才能ここにありって感じですね。スポッツ以外にはガレスピー楽団の同僚であるベニー・ゴルソンも自作曲”Whisper Not"とスタンダードの”Day By Day"でアレンジを手掛けていますが、演奏には参加していません。

各メンバーの演奏に戻りますと一番目立っているのは上述の通りリー・モーガンなのですが、アル・グレイとビリー・ミッチェルも伊達にジャケットに写っているわけではなく、グレイはスタンダードの”Day By Day"でロマンチックなバラード演奏を、ミッチェルはアップテンポの”D.D.T."とスタンダードのバラード”Over The Rainbow"で素晴らしいテナーソロを存分に聴かせてくれます。ビリー・ミッチェルは地味ですがサド・ジョーンズの「マグニフィセント」にも参加していますし、良いテナー奏者ですよね。以上、若き日のモーガンの天才っぷりはもちろんのこと、ロジャー・スポッツの知られざる作編曲の手腕、グレイ、ミッチェル、ケリーらの好演と聴きどころたっぷりの傑作です。

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デクスター・ゴードン/ザ・ジャンピン・ブルース

2025-01-05 10:14:28 | ジャズ(ハードバップ)

デクスター・ゴードンについては本ブログでもたびたび取り上げてきましたが、40年代のビバップ期に頭角を現し、50年代は麻薬依存で苦しんだ後、60年代に入って鮮やかに復活。ブルーノートを中心に立て続けに傑作を発表します。ただ、彼がアメリカで演奏活動を行ったのは1962年の「ア・スウィンギン・アフェア」までで、早くもその年の終わりにはパリに移住。続く「アワ・マン・イン・パリ」「ワン・フライト・アップ」はブルーノート盤ながら録音はパリで行われています。その後はデンマークのコペンハーゲンに定住し、1976年に帰国するまで14年間をヨーロッパで過ごします。理由としてはアメリカで主流となりつつあったポストバップ系のジャズとゴードンのスタイルが合わなかったことに加え、まだまだ人種差別が残るアメリカよりもミュージシャンとしてリスペクトを受けられるヨーロッパの方が居心地が良かったのが大きいようです。

とは言え、本国アメリカとの縁が完全に切れたわけではなく、特に1969年に名門プレスティッジ・レコードと契約後はたびたび帰国し、1973年までに10枚を超えるリーダー作を同レーベルに吹き込んでいます。今日ご紹介する「ザ・ジャンピン・ブルース」はその中の1枚で1970年8月27日にニューヨークで録音されたものです。ワンホーンカルテットでリズムセクションはウィントン・ケリー(ピアノ)、サム・ジョーンズ(ベース)、ロイ・ブルックス(ドラム)。ジャズファン的にはおそらく最初で最後の共演となるウィントン・ケリーとの組み合わせが貴重ですね。ケリーは翌年に癲癇の発作で39歳の若さで亡くなるため、これが最後のレコード収録になるようです。

全6曲。オリジナル、バップスタンダード、歌モノがバランス良く配置された構成です。1970年当時のジャズシーンと言えば、前年にマイルスが「ビッチェズ・ブリュー」を発表し、ウェイン・ショーターらがウェザー・リポートを結成する等エレクトリック楽器によるフュージョン・ブームが巻き起こっていましたが、ここではデックスとケリーがそんなブームなどどこ吹く風とばかりにオーソドックスなジャズを聴かせてくれます。

オープニングはデックス自作の"Evergreenish"。これがなかなか魅力的な曲で、ゆったりしたテンポの優しい旋律をデックスが悠然と吹き上げて行きます。ケリーも晩年(と言っても38歳ですが)の演奏ながら落ち着いたサポートぶり。続く"For Sentimental Reasons"はナット・キング・コールで有名な歌モノですが、インストゥルメンタル・バージョンは珍しいですね。この曲と5曲目タッド・ダメロンの"If You Could See Me Now"ではデックスとケリーがバラードの名手ぶりを存分に発揮します。

その他は定番スタンダードの"Star Eyes"、セロニアス・モンクの代表曲"Rhythm-A-Ning"、カンザス・ブルースの巨匠ジェイ・マクシャンがチャーリー・パーカーと共同で書いた"The Jumpin' Blues"とそれぞれタイプの異なる楽曲をデックスとケリーが快調に料理して行きます。全体的にリラックスした雰囲気の演奏で、やたら革新的な音楽が持て囃されていた当時のジャズシーンにあって一服の清涼剤のような作品です。

 

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マンデー・ナイト・アット・バードランド

2025-01-03 12:24:36 | ジャズ(ハードバップ)

モダンジャズ黄金期のニューヨークでは毎晩のように綺羅星の如きスタープレイヤー達がどこかのジャズクラブでライブを行っていました。ヴィレッジ・ヴァンガード、カフェ・ボヘミア、ファイヴ・スポット・カフェ、ハーフ・ノート、ヴィレッジ・ゲートetc。ジャズファンならそれらの名門クラブの名前がライブ盤のレコードと一緒に頭に浮かぶと思います。52番街にあったバードランドもそれらのクラブの代表格の1つですね。同クラブでは何と言ってもアート・ブレイキーの「バードランドの夜」が真っ先に思い浮かびますし、ジャズ・メッセンジャーズの「ジャズ・コーナーで会いましょう」含め3作品、他にチャーリー・パーカー、カウント・ベイシー、ジョン・コルトレーンらがライブ盤を残しています。同クラブを題材にジョージ・シアリングが作曲した”Lullaby Of Birdland”はジャズ・スタンダードとして多くのジャズマンにカバーされていますし、ジョー・ザヴィヌルがウェザー・リポートのために書いた”Birdland”も有名ですね。いわばモダンジャズのアイコン的存在と言って良いクラブです。

今日ご紹介する「マンデー・ナイト・アット・バードランド」も同クラブの輝かしい歴史の1コマを伝える1枚。1958年4月21日と翌週の28日のライブの模様をルーレット・レコードが2枚のレコードに分けて収録したものです。厳密に言うと28日のライブは「アナザー・マンデー・ナイト・アット・バードランド」と別タイトルなのですが、実質2枚組として扱って良いでしょう。メンバーは凄いですよ。フロントがリー・モーガン(トランペット)、ハンク・モブレー&ビリー・ルート(テナー)、カーティス・フラー(トロンボーン)の4管編成、リズムセクションがレイ・ブライアント(ピアノ)、トミー・ブライアント(ベース)、スペックス・ライト(ドラム)です。今から振り返ると良くこんな大物ばかりを集めたなと思いますが、この時点では最年長のスペックス・ライトが30歳で後は全員20代以下(モーガンに至っては19歳!)でしたので、まだまだ若手扱いだったのでしょうね。

 

全8曲。シンフォニー・シドと言うだみ声のおじさんの司会を皮切りに各メンバーが熱いソロを繰り広げます。バードランドと言えば「バードランドの夜」のピー・ウィー・マーケットの甲高いMCが有名ですが、この日は違ったようですね。演奏曲目は21日のライブがスタンダード、28日のライブがオリジナル中心です。21日の方はオープニングがマイルス・デイヴィスで有名な”Walkin'"、次いで歌モノの”All The Things You Are”、ミルト・ジャクソンの”Bag’s Groove"と続き、再び歌モノの”There Will Never Be Another You”で締めます。どの曲も超が付くほどの定番曲で、一歩間違えればありきたりの演奏になってしまうところですが、さすがにこのメンバーだとエキサイティングな演奏に仕上がっています。中でもリー・モーガンのトランペットが絶好調ですね。彼はまだこの時20歳にもなっていなかったのですが、既にブルーノートで6枚のリーダー作を残していただけあってプレイに風格すら感じさせます。モブレーもいつもながらまろやかなテナーを聴かせてくれますし、前年にデトロイトからニューヨークにやって来て一躍トロンボーンの人気一番手となっていたフラーも安定のパフォーマンスぶりです。唯一ビリー・ルートだけがあまり馴染みがありませんが、フィラデルフィア出身の白人サックス奏者で当時ディジー・ガレスピー楽団でリー・モーガンと一緒にプレイしていました。周りを黒人の若手スターに囲まれている中、遜色ないプレイを繰り広げていると思います。

4月28日の「アナザー・マンデー・ナイト」の方は1曲目だけが歌モノスタンダードの”It’s You Or No One"ですが、続く”Jamph”はカーティス・フラーのオリジナル。同年にフラーが参加したブルー・ミッチェル「ビッグ6」でも演奏されたソウルフルな曲です。3曲目”Nutville”はホレス・シルヴァーにも同名の曲がありますが、こちらはモーガンの曲。ただし、モーガンが参加した同年収録のティナ・ブルックス「マイナー・ムーヴ」ではブルックス作となっています。どちらが真の作者か分かりませんが、なかなか切れ味鋭いハードバップでモーガンがトランペットソロで暴れん坊っぷりを見せつけます。ラストはデンジル・ベストのバップの古典”Wee”で締めくくり。ライブだけあってどの曲も10分を超す長尺の演奏ですが、各メンバーによる熱のこもったアドリブのおかげでダレることなく最後まで楽しめます。こんな素晴らしいメンバーのライブを気軽に味わうことのできた50年代のニューヨークにはあらためて羨望の念を抱かずにはおれません。

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ケニー・バレル&ジミー・レイニー/トゥー・ギターズ

2024-12-31 21:21:08 | ジャズ(ハードバップ)

前回「エンカウンター」で60年代のプレスティッジについて解説しましたが、同レーベルの絶頂期が50年代半ばだったのは衆目の一致するところですよね。この頃のプレスティッジが得意としていたのは同じ楽器を複数集めたジャムセッション形式の作品で、トランペット2本の「トゥー・トランペッツ」、同3本の「スリー・トランペッツ」、トランペット2本とテナー2本の「インタープレイ」、テナー3本の「ウィーリン・アンド・ディーリン」、同4本の「テナー・コンクレイヴ」、アルト2本の「アルト・マッドネス」、同4本の「フォー・アルトズ」、アルト2本とトランペット2本の「ペアリング・オフ」等々です。どれも同レーベルに所属するスタープレイヤー達が競演したハードバップ黄金期ならではの作品です。

今日ご紹介するのはギター2本の競演作、その名もズバリ「トゥー・ギターズ」です。1957年3月の録音でリーダーはケニー・バレルとジミー・レイニー。バレルは前月に「ブルー・ムーズ」を吹き込むなどプレスティッジのハウス・ギタリスト的存在でしたが、ジミー・レイニーはスタン・ゲッツやボブ・ブルックマイヤーとの共演で知られる白人ギタリストでこの手のハードバップ系のセッションでは珍しい人選です。ギタリスト2人だけで十分だと思うのですが、ここにさらにドナルド・バード(トランペット)とジャッキー・マクリーン(アルト)を加えるのが全盛期プレスティッジならではの贅沢さで、マル・ウォルドロン(ピアノ)、ダグ・ワトキンス(ベース)、アート・テイラー(ドラム)のリズムセクションと合わせて超強力なラインナップですね。

全7曲。歌モノスタンダードは2曲のみで、後は全てメンバーのオリジナルです。特に前半の3曲"Blue Duke""Dead Heat""Pivot"は全てマル・ウォルドロンの作曲で、実質的な音楽的リーダーシップは彼が握っていたことがわかります。本作に限らずこの頃のプレスティッジのジャムセッションはマルが陰のリーダーになっていることが多いですね。どの曲もリーダー2人のギターにバード、マクリーン、マルが入れ代わり立ち代わりソロを取る構成。ギターの聴き分けですがジミー・レイニーのソロは正直そこまで馴染みがないですが、バレルの方は一発でわかりますね。いつもながらのスインギー&ソウルフルなソロが最高です。

その他のオリジナル曲はまずマクリーンの"Little Melonae"。マクリーン自身のほか、マイルス、コルトレーン、ジャズ・メッセンジャーズも取り上げた彼の代表曲です。マクリーンのいかにも彼らしいファナティックなアルトの後、マル→レイニー→バレルとソロをリレーします。ダグ・ワトキンス作の"This Way"は個人的に本作のベストトラックで、11分超の長尺ながらバレル→バード→マクリーン→レイニー→マルの順でハードバピッシュなソロをたっぷりと披露し、聴く者を飽きさせません。スタンダードの2曲はバードとマクリーンは参加せず、さらにギターも1人のみ。"I'll Close My Eyes"はバレル、"Out Of Nowhere"はレイニーがそれぞれマル・ウォルドロンのトリオをバックにじっくり聴かせます。

 

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