本日はレッド・ガーランドです。ガーランドについては本ブログでもたびたび取り上げてきました。黄金期のマイルス・デイヴィス・クインテットの一員としてかの有名なマラソン・セッションに参加し、ソロ名義でも名門プレスティッジに50年代だけで20枚を超えるリーダー作を吹き込むなど同レーベルの看板ピアニストとして君臨していまいた。ジョン・コルトレーンやドナルド・バードを脇に従えた「ソウル・ジャンクション」「オール・モーニン・ロング」は"もう一つのマラソン・セッション"と呼んでいい名盤ですよね。
ただ、そんなガーランドも60年代に入ると徐々に活動が低調になって行きます。理由はジャズシーンの変化でしょう。この頃はかつての盟友だったマイルスやコルトレーンはモードジャズ、さらにその先のフリージャズを見据えた音楽を追求して行きますが、ガーランドはどうもそれらポストバップ系のジャズとは相容れないものがあったらしく、スタイルを変えることはありませんでした。60年代前半のガーランドはプレスティッジやリヴァーサイド傍系のジャズランドにリーダー作を何枚か残した後、60年代中盤には一旦活動を停止してしまいます。(その後70年代に復活)
ではこの頃のガーランド作品がクオリティが低かったのかと言うと決してそんなことはありません。特に今日取り上げる1962年3月録音のジャズランド盤「レッズ・グッド・グルーヴ」はブルー・ミッチェル(トランペット)とペッパー・アダムス(バリトン)をフロントラインに据え、50年代の「ソウル・ジャンクション」等を思い起こさせる2管入りのクインテット編成でストレートなハードバップを聴かせてくれます。リズムセクションにはリヴァーサイドの看板であるサム・ジョーンズ(ベース)とフィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)。このメンツで悪い作品になるわけがないですよね。
アルバムはタイトルトラックの"Red's Good Groove"で幕を開けます。ガーランド自作のスローブルースで、まずガーランドがブルースフィーリングたっぷりのピアノソロを披露し、ミッチェル→サム・ジョーンズ→アダムスの順でソロを取ります。まさにタイトル通りの良質なグルーヴがたっぷり味わえます。続くスタンダードの”Love Is Here To Stay"も同じような感じで、ガーランドがお得意のブロックコードを使った独特の奏法でバラードを演奏します。3曲目”This Time The Dream's On Me"もおなじみのスタンダードですが、こちらアップテンポでスインギーに料理されています。ソロはガーランド→アダムス→ミッチェル→サム・ジョーンズの順です。
4曲目”Take Me In Your Arms"はドゥービー・ブラザーズで同名の曲がありますが、こちらはフレッド・マーカシュと言う人の書いたスタンダード曲。ユタ・ヒップの「ヒッコリー・ハウス」のオープニングと同曲です。やや哀調を帯びた歌謡曲風のメロディでミッチェル→ガーランド→アダムスと快調にソロをリレーします。続くペッパー・アダムス作の”Excellent"ではアダムスがブリブリと吹く重低音バリトン、ラストのスタンダード”Falling In Love With Love"ではサム・ジョーンズのベースがソロ1番手で大きくフィーチャーされ、ガーランドとミッチェルが華を添えます。結局、ガーランドはこの後プレスティッジに「ホエン・ゼア・アー・グレイ・スカイズ」を残し、活動を休止します。おそらく当時のジャズシーンでは時代遅れとみなされた故でしょうが、今聴いてみるとそんな一時の流行とは一線を画した実に良質なハードバップ作品と思います。