ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

レッド・ガーランド/レッズ・グッド・グルーヴ

2024-12-02 18:41:15 | ジャズ(ハードバップ)

本日はレッド・ガーランドです。ガーランドについては本ブログでもたびたび取り上げてきました。黄金期のマイルス・デイヴィス・クインテットの一員としてかの有名なマラソン・セッションに参加し、ソロ名義でも名門プレスティッジに50年代だけで20枚を超えるリーダー作を吹き込むなど同レーベルの看板ピアニストとして君臨していまいた。ジョン・コルトレーンやドナルド・バードを脇に従えた「ソウル・ジャンクション」「オール・モーニン・ロング」は"もう一つのマラソン・セッション"と呼んでいい名盤ですよね。

ただ、そんなガーランドも60年代に入ると徐々に活動が低調になって行きます。理由はジャズシーンの変化でしょう。この頃はかつての盟友だったマイルスやコルトレーンはモードジャズ、さらにその先のフリージャズを見据えた音楽を追求して行きますが、ガーランドはどうもそれらポストバップ系のジャズとは相容れないものがあったらしく、スタイルを変えることはありませんでした。60年代前半のガーランドはプレスティッジやリヴァーサイド傍系のジャズランドにリーダー作を何枚か残した後、60年代中盤には一旦活動を停止してしまいます。(その後70年代に復活)

ではこの頃のガーランド作品がクオリティが低かったのかと言うと決してそんなことはありません。特に今日取り上げる1962年3月録音のジャズランド盤「レッズ・グッド・グルーヴ」はブルー・ミッチェル(トランペット)とペッパー・アダムス(バリトン)をフロントラインに据え、50年代の「ソウル・ジャンクション」等を思い起こさせる2管入りのクインテット編成でストレートなハードバップを聴かせてくれます。リズムセクションにはリヴァーサイドの看板であるサム・ジョーンズ(ベース)とフィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)。このメンツで悪い作品になるわけがないですよね。

アルバムはタイトルトラックの"Red's Good Groove"で幕を開けます。ガーランド自作のスローブルースで、まずガーランドがブルースフィーリングたっぷりのピアノソロを披露し、ミッチェル→サム・ジョーンズ→アダムスの順でソロを取ります。まさにタイトル通りの良質なグルーヴがたっぷり味わえます。続くスタンダードの”Love Is Here To Stay"も同じような感じで、ガーランドがお得意のブロックコードを使った独特の奏法でバラードを演奏します。3曲目”This Time The Dream's On Me"もおなじみのスタンダードですが、こちらアップテンポでスインギーに料理されています。ソロはガーランド→アダムス→ミッチェル→サム・ジョーンズの順です。

4曲目”Take Me In Your Arms"はドゥービー・ブラザーズで同名の曲がありますが、こちらはフレッド・マーカシュと言う人の書いたスタンダード曲。ユタ・ヒップの「ヒッコリー・ハウス」のオープニングと同曲です。やや哀調を帯びた歌謡曲風のメロディでミッチェル→ガーランド→アダムスと快調にソロをリレーします。続くペッパー・アダムス作の”Excellent"ではアダムスがブリブリと吹く重低音バリトン、ラストのスタンダード”Falling In Love With Love"ではサム・ジョーンズのベースがソロ1番手で大きくフィーチャーされ、ガーランドとミッチェルが華を添えます。結局、ガーランドはこの後プレスティッジに「ホエン・ゼア・アー・グレイ・スカイズ」を残し、活動を休止します。おそらく当時のジャズシーンでは時代遅れとみなされた故でしょうが、今聴いてみるとそんな一時の流行とは一線を画した実に良質なハードバップ作品と思います。

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イントロデューシング・カール・パーキンス

2024-11-30 18:47:04 | ジャズ(ピアノ)

本日は50年代に活躍した黒人ピアニスト、カール・パーキンスをご紹介します。実は同じ時期に全く同じ名前のカール・パーキンスと言う白人ロックンローラーが”Blue Suede Shoes"と言う全米2位のヒット曲を放っているため、一般的な知名度ではそちらの方が高いかもしれませんが、ジャズファン的にはカール・パーキンスと言えばこちらの方ですよね。

とは言え、肝心のジャズファンの間でもそこまでメジャーとは言えないのが悲しいところ。理由は彼が西海岸を拠点に活動していたためでしょうね。共演歴は結構華やかで結成当初のブラウン=ローチ・クインテットにも参加(「イン・コンサート」参照)していますし、その後もチェット・ベイカーの「ピクチャー・オヴ・ヒース」、アート・ペッパー「ジ・アート・オヴ・ペッパー」をはじめ多くのウェストコースト名盤に顔を出しています。50年代の西海岸の黒人ピアニストの中ではハンプトン・ホーズが別格で、その次に来るのがソニー・クラークとこのパーキンスだったのではないでしょうか?ただ、クラークがその後東海岸に移り、ブルーノートで次々とリーダー作を発表したのに対し、パーキンスは西海岸で主にサイドマンとしての活動に留まりました。

今日取り上げる「イントロデューシング・カール・パーキンス」は彼が唯一残したリーダー作でドゥートーンと言うマイナーレーベルに1955年に吹き込んだ1枚です。このドゥートーンに関しては以前にデクスター・ゴードンカーティス・カウンスの作品を紹介しています。トリオ作品で共演はリロイ・ヴィネガー(ベース)とローレンス・マラブル(ドラム)。3人とも黒人で白人中心のウェストコーストジャズの屋台骨を支えた面々です。

全11曲、うち5曲が自身のオリジナル、後は歌モノやバップスタンダードです。自作曲はグルーブ感たっぷりの"Way Cross Town""Westside"、ブルースフィーリングが横溢する"Marblehead""Carl's Blues"等で黒っぽさが全面に出ています。普段は白人ジャズマンとの共演が多かった彼らが、黒人だけのトリオで思う存分にプレイしたのでしょうね。

一方、スタンダードでは”You Don’t Know What Love Is"”It Could Happen To You””Lilacs In The Rain”と言ったバラード曲ではカクテル調のロマンチックなピアノを披露しますし、”The Lady Is A Tramp””Woody’n You""Just Friends"での躍動感溢れるスインギーな演奏もお手の物。ウォーキングベスの名手リロイ・ヴィネガー、西海岸黒人ドラマーの代表格ローレンス・マラブルも堅実なサポートぶりで、充実したピアノトリオ作品となっています。これほど豊かな才能を誇ったパーキンスですが、1958年に29歳で短い生涯を閉じます。理由は麻薬の過剰摂取とされていますが、自動車事故説もあるようです。彼と西海岸で腕を競ったソニー・クラークもその後31歳で亡くなりますし(こちらも麻薬)、本当にこの時期のジャズマンには短命が多いですよね・・・

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アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ/キャラヴァン

2024-11-29 19:22:32 | ジャズ(モード~新主流派)

1950年代後半から60年代前半にかけてのジャズ・メッセンジャーズは基本的にブルーノートと蜜月関係にあり、同レーベルから発売された「モーニン」「チュニジアの夜」「モザイク」と言った傑作群は今でも多くのジャズファンに愛されています。実は彼らはこの時期にリヴァーサイドにも3枚のアルバムを吹き込んでいるのですが、ブルーノート盤と違ってあまり取り上げられることはありませんね。3枚のうち2枚は「ウゲツ」「キョート」と日本にちなんだタイトルで、日本公演で熱烈な歓迎を受けたブレイキーがすっかり日本好きになって作ったアルバムですが、内容的にはこの時期のジャズ・メッセンジャーズらしい3管編成のモードジャズです。

残るもう1枚のリヴァーサイド作品が今日ご紹介する「キャラヴァン」で、収録日は1962年10月24日です。メンバーはフレディ・ハバード(トランペット)、ウェイン・ショーター(テナー)、カーティス・フラー(トロンボーン)、シダー・ウォルトン(ピアノ)とまさに黄金のメンバーですが、ベースが「モーニン」からの不動のメンバーだったジミー・メリットからレジー・ワークマンに交代しています。

アルバムはまずタイトルトラックの"Caravan"で幕を開けます。言わずと知れたエリントン楽団の名曲で初っ端からブレイキーが怒涛のドラミングを披露し、ハバード→ショーター→フラーが熱のこもったソロをリレーします。後半にもブレイキーの2分半にも及ぶドラムソロが挟まれます。ただ、個人的には2曲目以降の方が充実していると思いますね。注目はメンバーのオリジナル曲で、中でもショーターが作曲した”Sweet 'N' Sour"と”This Is For Albert”が素晴らしいです。その後マイルス・クインテットへの参加や、ブルーノートでのソロ活動、70年代のウェザー・リポートと第一線で活躍し続けるショーターですが、個人的にはジャズ・メッセンジャーズ時代のショーターが一番好きです。演奏ももちろんですが、何より曲が良いんですよね。ハードバップとは明らかに違うし、それでいて後年のような難解さもなく、クール&ファンキーなモードジャズが純粋にカッコいいです。

一方、2曲あるスタンダードも悪くないです。どちらもバラードで特定のソリストにスポットライトを絞っており、シナトラで有名な”In The Wee Small Hour Of The Evening"はカーティス・フラーの暖かみのあるトロンボーンを、ホーギー・カーマイケルの名曲”Skylark"ではフレディ・ハバードのブリリアントなトランペットを大々的にフィーチャーしています。ラストはハバード作の切れ味鋭いモーダルナンバー”Thermo"でビシッと締めくくって終わり。あらためてこの頃のジャズ・メッセンジャーズにハズレなし!を実感させてくれる1枚です。

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ジョン・コルトレーン/コルトレーン

2024-11-27 19:05:13 | ジャズ(ハードバップ)

モダンジャズの歴史に輝かしい足跡を残したジョン・コルトレーンですが、彼のキャリアはどちらかと言うと遅咲きでした。彼が飛躍へのきっかけを摑んだのは1955年のマイルス・デイヴィス・クインテットへの抜擢ですが、その時点で28歳。18歳でデビューしたリー・モーガンは特別にしても、マイルスやクリフォード・ブラウン、ソニー・ロリンズらが皆20代前半で頭角を現しているのと比べると決して若いとは言えません。

その後も順調にスターダムを上ったかと言うとそうでもなく、プレスティッジを中心に多くのセッションに呼ばれる等仕事の依頼は多かったものの、リーダー作の機会はなかなか回ってきませんでした。彼が記念すべき最初の単独リーダー作「コルトレーン」をプレスティッジに吹き込んだのは1957年5月、30歳の時です。

ソロデビュー作のメンバーも意外と地味です。ピアノは前半3曲がマイルス・クインテットでも一緒だったレッド・ガーランド、後半3曲がプレスティッジのハウス・ピアニストだったマル・ウォルドロン、ベースがポール・チェンバース、ドラムがアルバート・ヒースとリズムセクションについてはそこそこ豪華なラインナップですが、フロントラインが地味です。まずはバリトンサックスにサヒブ・シハブ。後にヨーロッパに渡ってそこそこ活躍しますが(過去ブログ参照)、お世辞にもメジャーとは言えませんよね。何よりトランぺッターのジョニー・スプローンが謎です。彼については本当にこのアルバムでしか名前を見たことがなく、ペンシルヴァニア州ハリスバーグ出身と言うことぐらいしかわかりません。おそらくコルトレーンとはフィラデルフィア時代の知り合いだったのでしょうね。ちなみにサヒブにしろスプローンにしろ、ソロを取る機会は限定的でどちらかと言うとアンサンブルを充実させるための起用のようです。

アルバムはカル・マッセイ作の"Bakai"で幕を開けます。マッセイもフィラデルフィア出身で、同郷のコルトレーンやリー・モーガンに多くの曲を提供しています。サヒブ・シハブのバリトンが印象的なエキゾチックなオープニングの後、まずガーランドが2分半にも及ぶ長尺のソロを披露した後、満を持してコルトレーンが登場。得意のシーツ・オヴ・サウンドで吹きまくり、サヒブのバリトンソロへと繋げます。続く"Violets For Your Furs"は一転して珠玉のバラード演奏。歌手としても有名なマット・デニス作の名曲で、「ユタ・ヒップ・ウィズ・ズート・シムズ」と並んでこの曲の決定的名演です。バラードの名手コルトレーンの絶品のテナーソロに続き、ガーランドが得意のブロックコードを駆使したピアノソロでロマンチックな雰囲気を演出します。3曲目”Time Was”はあまり聞いたことのない曲ですが、原曲は”Duerme"と言う名のメキシコのポップソングらしいです。ミディアムテンポの軽快なナンバーで、コルトレーン→ガーランド→チェンバースとソロをリレーします。

後半の最初はコルトレーンのオリジナル”Straight Street"。コルトレーンに続き、ジョニー・スプローンがようやくトランペットソロを披露しますが、腕前的には可もなく不可もなくと言ったところでしょうか?ピアノはこの曲からマル・ウォルドロンに代わっています。5曲目”While My Lady Sleeps”は再びスタンダードのバラード。そんなにメジャーな曲ではないですが、チェット・ベイカーが「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」で歌っていました。ソロはコルトレーンのみでじっくりとバラードを歌い上げます。ラストはコルトレーン自作の”Chronic Blues"。サヒブ→コルトレーン→スプローン→マルとソロを展開しますが、実は3管がソロを取るのはこの曲だけだったりします。以上、コルトレーンのその後の傑作群に比べるとまだまだ発展途上感は否めませんが、それでも内容的には十分傾聴に値する作品だと思います。

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ロイ・ヘインズ/クラックリン

2024-11-26 18:56:49 | ジャズ(モード~新主流派)

先日(2024年11月12日)ロイ・ヘインズが亡くなりました。御年99歳。天寿を全うしたと言えるでしょう。以前にベニー・ゴルソンのところで存命中のジャズジャイアントについて述べましたが、そのゴルソンも9月に亡くなりましたし、ヘインズの3日前にルー・ドナルドソンも亡くなりました。残る90歳越えはソニー・ロリンズとケニー・バレルぐらいでしょうか?少しでも長生きしてほしいものです・・・

さて、本日は追悼の意味も込めてヘインズの60年代の代表作をご紹介します。プレスティッジ傘下のニュージャズに1963年4月に吹き込まれた「クラックリン」です。1940年代のビバップ期から活動を開始し、チャーリー・パーカーやバド・パウエル、ワーデル・グレイらのレジェンド達とも共演するなどこの時点でベテランとも呼べるキャリアを刻んできたヘインズですが、60年代に入ると時代の波に乗ってモードやフリー系のミュージシャン達とも共演し始めます。前年の1962年には鬼才ローランド・カークを迎えて「アウト・オヴ・ジ・アフタヌーン」をインパルスに残し、本作でもブッカー・アーヴィン(テナー)、ロニー・マシューズ(ピアノ)、ラリー・リドリー(ベース)とハードバップの枠に収まらない人材を起用しています。

全6曲、基本的にメンバーのオリジナル中心です。1曲目はブッカー・アーヴィン作の”Scoochie"。ホレス・パーランの「オン・ザ・スパー・オヴ・ザ・モーメント」でも”Skoo Chee"のタイトルで収録されていた名曲です。ヘインズの激しいドラムをバックに熱いソロを繰り広げるアーヴィンとマシューズが素晴らしいですね。2曲目はロニー・マシューズ作の”Dorian"。匂いが強烈な果物のドリアンではなく(あちらはdurian)、何でもドリアン・モードと呼ばれる音楽理論に基づき書かれた曲のようです。私もドリアン・モードについてネットで調べてみましたが、正直良くわかりませんでした。楽器を演奏する方ならわかるかもしれませんが、私は聴く専門なので・・・理論的なことはともかく、ちょっとエキゾチックで不思議な感じの曲です。

3曲目”Sketches Of Melba"は個性派ピアニストで作曲家のランディ・ウェストン作。エリック・ドルフィーも演奏した曲ですが、これがなかなか美しいバラードで、”Scoochie"と並ぶ本作のハイライトと言って良いでしょう。クセ強系テナーのブッカー・アーヴィンが珍しくストレートにバラードを歌い上げています。4曲目マシューズ作の”Honeydew"はR&Bっぽいソウルジャズで特筆すべきところはありません。5曲目"Under Paris Skies"はどこかで聞いたことある曲ですが、フランス映画「巴里の空の下セーヌは流れる」の主題歌で、エディット・ピアフやイヴ・モンタン等のシャンソン歌手が歌った曲です。お馴染みの哀愁漂うメロディをモード風に演奏しています。ラストの”Bad News Blues"はヘインズ作のブルース。アーヴィンがお得意のウネウネしたテナーソロを聴かせます。以上、全体としてはまずまずの出来ですが”Scoochie"”Sketches Of Melba”はなかなかの名曲名演と思います。

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