ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ホレス・シルヴァー/ザ・トーキョー・ブルース

2024-10-30 20:26:19 | ジャズ(ハードバップ)

本日はホレス・シルヴァーが1962年にブルーノートに吹き込んだ「ザ・トーキョー・ブルース」をご紹介します。着物姿の美女2人に囲まれて笑みを浮かべるシルヴァーが印象的な1枚ですね。1960年代になると経済成長著しい日本に多くのジャズマンが訪れるようになり、また彼らを日本のジャズファンも熱烈に歓迎しました。代表例がアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズで、例の「蕎麦屋の出前持ちが"Moanin'"を口ずさんだ」という伝説が生まれたくらいです。日本ツアーを機に大の親日家となったブレイキーは帰国後に「ウゲツ」「キョート」と日本語をタイトルに冠した作品を発表しています。同じくファンキー・ジャズの代表的グループであるホレス・シルヴァー・クインテットも同様で、1962年始めに日本ツアーを行った半年後に本作を発表しています。

メンバーはブルー・ミッチェル(トランペット)、ジュニア・クック(テナー)、ジーン・テイラー(ベース)とこの頃のクインテットの不動のメンバーが名を連らねています。唯一ドラムがロイ・ブルックスではなく、ジョン・ハリスと言うあまり知らないドラマーが加わっています。

全5曲。全て日本にちなんだオリジナル曲です。ただし、サウンド的には日本の伝統音楽を取り入れているわけではなく、ホレス・シルヴァーの十八番であるファンキー・ジャズの流れを組むものです。ただ、1962年という時代を反映してか、モードジャズの影響も濃厚に感じられます。1曲目”Too Much Sake"はそんな本作の雰囲気を代表する曲で、モーダルで魅力的な旋律です。2曲目”Sayonara Blues"は12分を超える長尺の曲で、ちょっと哀愁漂うミステリアスなナンバー。3曲目はタイトルトラックの”The Tokyo Blues"で、静かに燃え上がるファンキーチューンです。4曲目”Cherry Blossom"はシルヴァーにしては珍しいスローバラード、と思ったら作曲はピアニストのロンネル・ブライトでした。なかなか叙情的な旋律を持つ曲で、ミッチェルとクックがお休みの中、シルヴァーがトリオでしっとりとしたバラード演奏を聴かせます。最後の”Ah, So!"は変なタイトルで思わず笑ってしまいます。日本人がよく言う「あっそう」という相槌がよほど印象に残ったのでしょうね。ちょっと不思議な曲で、冒頭はピアノとシンバルで奏でるお寺の鐘みたいなゴーンゴーンと言う音で始まり、ちょっとフリーっぽいトランペットとテナーのユニゾンを経て、その後はいかにもシルヴァーらしいエネルギッシュなファンキージャズが繰り広げられます。全体的に曲名以外で日本的な要素はあまり感じられませんが、この頃のホレス・シルヴァーのモード混じりのファンキージャズを味わえる作品と思います。


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