新宿酒場 ロン (9・2)
島、本宮、絵美、銀さん、洋子ママが金曜の夜、新宿に集まった。
「お題は、消されたシンスケ」
「今、沖縄に逃げていると聞いたが」
「逃亡者じゃないんだから、沖縄の石垣で暮らしているということ」
「お笑いのてっぺんまで登り詰めたが、その後は、断崖絶壁から転落ということだな」
「しかし、この問題の本質というのは何かな」
「菱の代紋との黒い交際ということだが、シンスケの話を信じれば、交際というには弱い」
「しかし極道の妻とは、ズブズブ」
「極心会会長である朝鮮人の姜(カン)のガサ入れをやった際、シンスケの手紙と写真が出てきたというが、それは6年前の話」
「それに繋がる渡辺二郎、シンスケの親友でもある元世界チャンプは恐喝詐欺の裁判中で、シンスケは裁判所に出かけて、渡辺の弁護までやっている」
「昔の裁判だな」
「サツから見れば、お笑い風情がいい気になるなよ、ということか」
「検察サイドから見れば、今年、大阪高裁で有罪判決が出たものに、最高裁まで上告したというのは、司法の権威に逆らう掟破り、だな」
「最高裁は犯罪の証拠認定はしない。憲法裁判所であり、法の解釈の番人だ」
「恐喝のチンピラが上告したというのは、検察から見れば言語道断」
「だから、盟友のシンスケをバーンとやった」
「渡辺に資金援助をしているのではないかという、疑惑」
「お上を恐れぬ不届き者ということか」
「それと同時に、山口組6代目組長の司忍の頂上作戦にも繋がる」
「どういうこと?」
「暴力団と芸能人の交際は、公然の秘密。だからシンスケを一罰百戒として、芸能ルートを断ち切る」
「それはあるな」
「それに吉本サイドから見れば、シンスケは吉本にとって脅威になってきた。若手中堅芸人からの絶大な支持、シンスケの財力、番組への口出し、お気に入りの美人タレントを囲い込む、などなど」
「吉本の本音は、芸人は芸人らしく、しとったらええやん、安く、軽く、お茶の間の電波芸者になれや」
「その矩(のり)をシンスケは大きく、はみ出した」
「日テレの24時間テレビと行列が終わった瞬間、シンスケを呼び出し、(お前、どう落とし前つけんねん)と、吉本から高飛車に言われ、シンスケ逆切れ」
「ほな、辞めてやるわ」
「吉本が想定していたシナリオに従って、シンスケの引退会見」
「芸能界という甘い楽園からの追放やな」
(ムラマサ、鋭く斬る)