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藤原緋沙子著 「紅椿」

2024年09月08日 20時37分05秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「紅椿」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第9弾の作品で、「第一話 雪の朝」「第二話 弦の声」「第三話 東風よ吹け」「第四話 残る雁」の連作短編4篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせ)に雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろう)が、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 雪の朝」
▢主な登場人物
 万寿院(松代)、春月尼、
 楽翁(八代将軍徳川吉宗の孫、元老中筆頭、元白河藩藩主、松平定信)、
 坂巻武太夫・坂巻武一郎・坂巻勇之進(英慧)、
 永井主水(旗本、無役)、増之助、
 佐兵衛・お仲
 栗田徳之進(寺社奉行所徒目付)、千草、

▢あらすじ等
 縁切り寺慶光寺主万寿院は、遠い日に交わした約束を果たしに、お忍びで玉王寺を訪れ、
 英慧と対面するが・・。英慧とは何者?、
 誰もその謎が解けない内に、万寿院の命を狙う事件発生。下手人は?、
 十四郎、藤七等が真相究明に乗り出すが、意外な事実が・・・、
 万寿院がかって旗本坂巻武太夫の養女だった頃の出来事に繋がり、
 増之助が白状、楽翁への逆恨みも明るみになる。
   十四郎は、英慧の最期を思い出していた。万寿院に手をとられて、血の涙をながした英慧の
   姿を・・・。

   あの時、十四郎は、自分の姿を見ているような気がしていたのである

「第二話 弦の声」
▢主な登場人物
 おまつ、
 長吉・お常、伊之助、
 蟹蔵(岡っ引き)、松波孫一郎
▢あらすじ等
 祝言を挙げる寸前に行方不明になった男を探しに江戸に出てきたおまつが爪弾く哀切と
 激しさが迫る津軽三味線の音色に、十四郎の足が止まった。ならず者に囲まれたおまつを
 救った十四郎はおまつを橘屋に連れてきたが、お登勢がテキパキと対応してくれ・・・、

 一方で、橘屋に駆け込んできたお常、不審だらけで、
 十四郎、藤七が真相究明中に、殺害され・・、

 伊之助とは?、長吉とは?
 お登勢、北町奉行所吟味方与力松波孫一郎の計らいで・・・、
   おまつの目も長吉をとらえていた。長吉をとらえたまま、おまつは三味線を引く。
   弦は切れても心の糸は切れぬと言ったおまつの言葉が、十四郎の脳裏を過ぎった。

「第三話 東風よ吹け」
▢主な登場人物
 お春・茂作、作造・お才・忠吉、お妙・辰平
 上総屋儀兵衛、利助、おりつ、
 弥蔵、佐吉、
 マムシの以三(岡っ引き)、木村乙一郎(南町奉行所見習い同心)
▢あらすじ等
 10才で養子に出した我が子利助の幸せをひらすら願う老母お春が、殺人の疑いで
 捕縛されるが、不審だらけの事件・・・、
 お登勢が、十四郎が、藤七が、賢明に真相究明し、
   夕暮れが迫っていたが、冬には珍しく暖かい風が吹いていた。
   「おっかさん」、「利助、・・・利助、お前、こんなところにきちゃ駄目だ、早くお帰り」
   じわりと十四郎は、いわれぬ感慨を覚えていた。


「第四話 残る雁」
▢主な登場人物
 お光、半之助、お浜、
 惣二(惣次郎)、徳兵衛、
 柳庵、
▢あらすじ等
 凶暴な亭主半之助との離縁話で、橘屋に駆け込んできたお光だったが、
 突然お登勢に反感、恨み?、
何故?、十四郎、藤七がその真相を究明していくと、
 そこには、兄惣二のお登勢に対する隠された想いが有った。 

  「私たち二人は残る雁だって・・・」、哀しい言葉が蘇った。
  「そんな筈があるものか、お前の人生はこれからだ」

 お登勢の胸に深く刻まれた亡夫徳兵衛への愛の深さを垣間見た十四郎は、落ち込んでしまうが、
 お登勢は、大切な亡夫の遺品「撥(ばち)」を、富岡八幡宮に納める決意をし、
 十四郎の胸には、新たな灯が灯るのだった。


 


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