映画と本の『たんぽぽ館』

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奇蹟がくれた数式

2016年11月13日 | 映画(か行)
天から降りてくる公式



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「アインシュタインと並ぶ天才数学者」と言われた、インドの天才数学者ラマジャンの物語。



1914年イギリス。
ケンブリッジ大学の数学者ハーディ教授(ジェレミー・アイアンズ)のもとに、
インドからの手紙が届きます。
それはインドで事務員をしているラマジャン(デブ・パテル)からのもの。
全く知らない相手でしたが、そこに書いてある数式に才能を感じ、
大学に招聘することになります。
しかし、身分も低く学歴もないラマジャンを他の教授たちは拒否。
周囲の偏見や孤独に晒され、やがてラマジャンは病に倒れてしまいますが・・・。



数学者、というのはよく映画の題材に使われますね。
いったい何を言っているのやら、私などには及びもつかない内容ながらも、
数学の計り知れない深淵と美しさを彼らは追い求める。
そんな姿に何やら心打たれてしまうのです。



さて、ラマジャンはインドではその数学の才能を活かす職業などあるはずもなく、
すがる思いでイギリスの大学へ幾つかの自分の見出した公式を送ります。
それが認められて、妻を残したまま、遥かイギリスへの旅。
そこまでは、希望に満ちていました。
けれども、予想はつきますが、ラマジャンはひどい偏見にさらされてしまいます。
彼は間違いなく天才。
しかし天才であるがゆえに、理屈なしで公式がひらめいてしまう。
ハーディ教授には、このままでは発表はできない、
人にそれを認めさせるには「証明」が必要だと、酷評されてしまうのです。



さて、このハーディという人はガチガチの数学者とでもいうのでしょうか、
彼が信じているのは数字と正しい理論。
曖昧な「神」などは信じません。
そんなわけで、人付き合いが苦手で、ちょっと偏屈なんですね。
だからラマジャンに偏見を持っているわけではないのですが、
彼がどれだけ偏見に晒され、孤独を感じているのかもわかっていないのです。
彼が結婚していることすら知らなかったし、
宗教上食べられないものが多くて食堂では食事できないでいることもわかっていない。


そんな彼が少しずつ変わっていくのは、ラマジャンが病に倒れてから。
何しろ、ラマジャンが病で次第に弱っていくのにも気づかなかったのですから・・・。
しかし教授は、そこではじめてラマジャンが
ただの数学の天才ではなくて、一人の人間であることに気づくわけです。


もし教授に奥さんがいたら、奥さんがきっとラマジャンのことをあれこれ気遣っただろうなあ
・・・などと、まあ、これは言っても仕方のないことですが。



けれど、一旦そういうことに気づいたハーディ教授は行動的です。
ようやく、二人の友情はここからはじまる。
どんな才能がどこに埋もれているかわからない。
だから、教育は大事だし、世界は手をつなぎ合わなければ・・・。
差別や偏見は宝石の原石をそれと知らずに捨てるようなもの・・・。
大切にしたい物語ですね・・・。
ラマジャンがもっと長く生きていられたら、
もっと多くの素晴らしい公式が生み出されていたのかもしれません。


「奇蹟がくれた数式」
2015年/イギリス/108分
監督:マシュー・ブラウン
出演:デブ・パテル、ジェレミー・アイアンズ、デビカ・ビセ、トビー・ジョーンズ、スティーブン・フライ

才能のきらめき度★★★★☆
偏見との戦い度★★★☆☆
満足度★★★★☆