映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

オケ老人!

2016年11月25日 | 映画(あ行)
音楽は競うものではなく、楽しむもの



* * * * * * * * * *

明らかに「ボケ老人」という言葉を意識したと思われるこの題名に惹かれ、
本を読んでみたのは・・・
2011年、5年も前のことでしたか!

→「オケ老人」荒木源

当時の私のブログ中にも、
本作は「ちょんまげぷりん」よりも映画向きなどとかかれています。
ともあれ、もうほとんど忘れた頃に、映画で出会えるとは思ってもいませんでしたが、
主役が杏さんというのにも心惹かれて、見てみました。
たしか、原作の主人公は男性だったと思います。



梅が丘高校に赴任した数学教師千鶴(杏)は、
学生時代からオーケストラでバイオリンを弾いていました。
彼女は地元のアマチュアオーケストラの演奏に感銘を受け、入団を決意します。
ところが、彼女は勘違いして「梅が丘交響楽団」に申し込みをしてしまったのですが、
そこは老人ばかりのヨレヨレ楽団。
そもそもほとんどオーケストラの体も成していません。

しかし、若い人が入った!と大歓迎されてしまい、間違いだとは言い出せなくなってしまいました。
おまけに、指揮をしていた野々村老人(笹野高史)が病に倒れ、
代わりに指揮者として楽団を率いなければならない立場に・・・。



ポンコツオーケストラの指揮をしながらも、まだバイオリンの道を諦めきれず、
本命「梅が丘フィル」への入団を目指して必死に頑張る千鶴もなかなか良いです。
しかし、がむしゃらに頑張れば良いと言うものでもない。
音楽は競うものではなくて、楽しむもの。
そういう原点に帰っていくのがいいですよね。
その結果として、上達につながるのならなおよし。
現実は甘くない?
まあ、いいじゃないですか。
これはそういう物語なのですら。



野々村老人の孫娘役の黒島結菜さんが良かったなあ。
千鶴の生徒なんですが、妙にしっかりしていて、まるで千鶴よりもお姉さんみたい。
千鶴の恋を後押しするところなど、なかなかのものです。
そしてその千鶴の恋の相手は、同じ高校の教師だけれど年下の坂下くん(坂口健太郎)。
この恋の顛末がまた、傑作。
いやあ、面白かった・・・!



やはり、本で読むよりも実際に音があるので、
クラシックに詳しくない私などには最適でした。
原作には何やら怪しげなスパイが登場したりするのですが、
映画ではそういうエピソードがバッサリ削られています。
でも、そのほうが焦点が絞られてよかった。



「オケ老人!」
2016年/日本/119分
監督・脚本:細川徹
原作:荒木源