閉塞感に満ちた時代にもがく若者たち
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なんと3時間を超える大作です。
まずは、この題名、不思議な題名ですよね。
何のことなのかよくわからない。
これはつまり本作の主人公たちのことでした。
舞台は大正末期、関東大震災のあった直後です。
人々は閉塞感にあえいでいます。
東京近郊の小さな町に女相撲の一座「玉岩興業」の巡業がやってきます。
女相撲の巡業とは珍しいと思うのですが、
この時期は普通にあって、人気もあったのだとか。
そんな中に、夫の暴力に耐えかねて逃げてきた“花菊”(木竜麻生)がいたのです。
そして、この巡業を見に来ていたのが「ギロチン社」の中濱鐵(東出昌大)、古田大次郎(寛一郎)たち。
ギロチン社とは、過激なアナキストのグループ。
これは実在の結社で、人物たちも実在です。
「格差のない平等な社会」を目指す彼らは、要人の暗殺を計画・実行するなどのいわばテロ集団。
しかし幾分インテリの頭でっかちさも目立つ、貧乏なろくでなし集団でもあるのです。
中濱、古田は女力士たちの戦いぶりに魅了され、
花菊や“十勝川”(韓英恵)と親しくなっていきますが・・・。
十勝川は朝鮮人で、あの大震災の時の日本人自警団による大虐殺を辛くも生き抜いて、
この女相撲一座にたどり着いていたのです。
この一座の女たちは、みなそれぞれの事情を抱えてここに流れ着いてきていたのでした。
正義感の強い中濱や古田は、こんな風に虐げられた女たちの境遇に憤りを感じます。
けれども、革命を歌いながら、実際にはこんな女一人をも助けることができない
自分たちの無力さにも打ちのめされる・・・。
一方、「強くなって、自分の力で生きたい」と稽古に励む花菊の姿が、生命力に満ちて美しい。
底辺以下の境遇でも女は強いなあ・・・。
実にうまく時代を切り取り、そこでもがく若者たちの群像劇に仕上がっていました。
そこで思う。
菊とギロチンの「菊」は、天皇を指してもいるのかも・・・。
菊とギロチン[DVD] | |
木竜麻生 | |
ポニーキャニオン |
<WOWOW視聴にて>
「菊とギロチン」
2018年/日本/189分
監督:瀬々敬久
出演:木竜麻生、韓英恵、東出昌大、寛一郎
閉塞感★★★★☆
時代再現度★★★★★
満足度★★★★.5