チャンス、努力、信頼・・・
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パリ、北駅に置かれた1台のピアノ。
だれでも自由に弾くことができるように置いてあります。
マチュー(ジュール・ベンシェトリ)は、時々そこでピアノを弾いていました。
そこへ通りかかった音楽学校のディレクター・ピエール(ランベール・ウィルソン)が興味を示し、
連絡をほしいと声をかけます。
そのときはそのままだったのですが、その後マチューはある家に盗みに入ったところを捕まり、
実刑を免れる代わりに無償奉仕をすることになります。
そして、音楽院の清掃にやってきたマチューは、
ピエールや“女伯爵”と呼ばれる厳しい教師・エリザベスの手ほどきを受けることに・・・。
マチューは家が貧しく、正規のピアノのレッスンを受けることができなかったのです。
駅のピアノを見ればつい弾いてしまうくらいにピアノは大好きなのですが、
自分の将来と結びつけることはなかったし、
だからこそ、夢もなく、近所の悪ガキたちとつるんでは悪事を繰り返していたわけです。
冒頭のシーンがなかなかイケているんですよ。
駅でピエールに声をかけられたマチューに何人かの警官が近づいてくる。
それを認めたマチューはいきなり駆け出し、彼を警官たちが追い始めます。
取り残されたピエールはただ呆然。
マチューは逃げて逃げて逃げまくり、ついに地下鉄に乗ったフリで警官たちを地下鉄に乗せ、
駅を出た地下鉄車両内の警官をホームからニヤリと笑みで見送る。
なんだかワルそうだけれど、でも、このマチューを私はとても好きになってしまいました。
音楽院でのレッスンも、マチューが前向きに受け入れたかといえばそうでもないのです。
レッスンを受けないのなら、無償奉仕の受け入れを断るなどと脅されて仕方なく・・・という感じ。
エリザベスも「彼の才能は認めるけれど、努力しない天才はあり得ない・・・」と、さじを投げる寸前。
そんなマチューを本気でやる気にさせたのはなんと、ガールフレンドなのでした・・・!
いかにも「男子」なのもいいなあ。
マチューに入れ込んだピエールは院内で孤立し、次第に進退極まって来たり、
いきなり仲間を抜けて音楽院などに通い始めたマチューに複雑な思いを抱く友人たちの存在もあったり・・・、
なかなか見所も多いのです。
自らの夢をつかむためには、チャンスと、努力と、そして周囲の人たちとの信頼か必要なのでしょう。
ピアノに限ったわけではなくて。
ステキな作品でした。
そしてもちろん、ピアノ曲も楽しめます!!
大好きです。
<シアターキノにて>
「パリに見出されたピアニスト」
2018年/フランス・ベルギー/106分
監督:ルドビク・バーナード
出演:ランベール・ウィルソン、クリスティン・スコット・トーマス、ジュール・ベンシェトリ、カリジャ・トゥーレ
ピアノの魅力度★★★★☆
満足度★★★★.5