幻の傑作
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七月七日午後七時に服毒死を遂げた新進作家。
密室、アリバイ、盗作……様々な要素を絡め、著者が自信を持って仕掛ける超絶のトリック。
記念すべきデビュー長編の改稿決定版!
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あまりなじみのない作家さんだなあ・・・と思いつつ読み進み、
女性の言葉使いが「~ですわ。」などとなっているので、
かなり古い作品なのかと思い当たりました。
私、予備知識も何もナシに読み始めてしまいましたが、
本作、1971年、著者の長編デビュー作なのでした。
その後幾度か題名を変えて書き直され、現在の形の文庫版が出たのが2004年。
そして今、改めて「幻の傑作」として売り出されていました。
ちなみに、著者は2009年にすでに亡くなっています。
さて、ではどこが「幻の傑作」なのか。
坂井正夫という売れない推理作家が自死します。
けれどもそのことに納得がいかない編集者・中田秋子と、
ルポライター津久見伸助がそれぞれに別のアプローチで真相を探り始めます。
・・・というようなストーリーなのですが、
実は重大な「騙し」が仕組まれているのです。
著者から読者への目くらまし、というか騙し。
叙述トリックというヤツです。
しかも本作はそれが2つもしかけられている・・・。
叙述トリックは、昨今のミステリではそう珍しいものではありません。
でもこれ、先に挙げたとおり1971年の作品なんです。
「本格ミステリ」などという言葉のなかった時代。
推理小説といえば「社会派」が当たり前だった時代。
私的に叙述トリックの代表と思っているのは殊能将之さんの「ハサミ男」なのですが、
それは1999年に出されたもの。
その約30年も前にこんな作品が書かれていたというのは、なんとも驚きなのです。
だからおそらく当時の読者は『なんだこれ?変な話』と思ったことでしょう。
だから特に話題にもならなかったと思うのです。
しかし、今にしてみればその価値がよくわかる・・・ということなんですね。
・・・という歴史的価値をかみしめつつ読む作品であったわけですが、
何も知らず読んでしまった私は「ふ~ん」と思っただけという、
締まらないハナシでした・・・。
だって結局細かいところがよくわからなかったし・・・。
「模倣の殺意」中町信 創元推理文庫
満足度★★★☆☆