料理にまつわるあれこれ
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どんな料理であっても、そこにはつくり手の感情が込められていると思います。
プロの作る料理はお客さまを満足させるために、
家庭料理は食事を共にする家族の健康や団らんのために、
たとえ自分だけしか食べない簡単なものであっても、
思いは注ぎこまれているのです。
本書では、そんな「料理をつくる人」たちをテーマにした短編を
六名の作家にご執筆いただきました。
心とお腹を満たす極上の物語を、思う存分ご堪能くださいませ。
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■収録作品
西條奈加「向日葵の少女」
千早茜「白い食卓」
深緑野分「メインディッシュを悪魔に」
秋永真琴「冷蔵庫で待ってる」
織守きょうや「対岸の恋」
越谷オサム「夏のキッチン」
「料理をつくる人」をテーマにすえたアンソロジーです。
シェフあり、料理好きあり、まったくの初心者あり、とバラエティに富んでいます。
料理は日常でありつつも、生きることに直結すること。
そして至福の時間をもたらすものでもあり、ストーリーにはもってこいですもんね。
西條奈加「向日葵の少女」
私の愛読書である西條奈加さんの「神楽坂日記シリーズ」からの一篇。
そうでした、ノゾムくんは、ハンパではない料理男子でした。
冒頭を飾るにふさわしい。
こんなところでまた会えて、嬉しい限り。
深緑野分「メインディッシュを悪魔に」
ファンタジーテイスト。
深緑野分さんは、ファンタジーの方に舵をきったままなのでしょうか?
私はやはり、歴史を絡めた長編ストーリーが読みたい・・・。
秋永真琴「冷蔵庫で待ってる」
正直、私は知らない作家さんでしたが、あ、北海道出身でしたか。
と、急に親近感が湧く。
本作、しっかりラブストーリーで、しかも失恋ものなんですが、
ラストがすごく気に入りました。
散々気を持たせたあげく帰ってこようとする男に向けた一言が
なんとも気持ちいい!!
越谷オサム「夏のキッチン」
小学生の、料理がまったく初めての男子が、
誰もいない家で、空腹でたまらず、
カレールーの箱の作り方を頼りに、1人でカレーを作ります。
なんともたどたどしくて、ハラハラしてしまいますが、
まったく初めてというならこんなものかも知れません・・・。
けど、小学6年で初めては遅すぎる。
少なくとも、子どもにも小さいうちから調理を見せて、
お手伝いさせてほしいと思うのでありました。
が、最後にほろりとさせられる事情が明かされまして、やられました。
「料理をつくる人」 創元文芸文庫
満足度★★★★☆
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