映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

Cloud クラウド

2025年01月10日 | 映画(か行)

ムクムクと増殖する憎悪

* * * * * * * * * * * *

菅田将暉さん主演ということで興味はあったのですが、見そびれていました。
早くもAmazon prime videoに登場。

町工場で働きながら転売屋として日銭を稼ぐ吉井良介(菅田将暉)。
転売について教わった先輩、村岡(窪田正孝)からの儲け話にも乗らず、
コツコツと転売を続けています。

ある時、勤務先の工場の社長・滝本(荒川良々)から管理職への昇進を打診されても、
断って、辞職してしまい、転売業に専念することに。

郊外の湖畔に事務所兼自宅を借りて、恋人・秋子(古川琴音)との生活をスタートさせます。
仕事のアシスタントとして、地元の若者・佐野(奥平大兼)を雇い、
転売業は軌道に乗り始めますが・・・。
身の回りで不審な出来事が起こり始めます。

 

前半、特に何も起こらないのに、恐いのです。
吉井の身の回りの人々が、何を考えているのかよく分らず、とにかく不気味。
いや、そもそも吉井自身が、周囲の人に関心がない。
いや、周囲の人の感情に関心がないと言うべきか。

 

吉井がやっている「転売」というのは、
何でもかまわないので、とにかく人が興味を抱くかも知れない、格安物品を見つける。
それを実際、格安で買い付けて、ネットで売るわけです。
それも、購入した金額から想像もつかないような高額の値を付けて。
それで買い手がつかない場合は、値を下げていく。

時には、倒産した工場の売れ残り品を買いたたいて、
高額で販売すると、瞬く間に完売。
工場主の無念の気持ちなど少しも気にかけません。

また、吉井にも本物か偽物かよく分らない(というか、興味がない)バッグも、
格安で買い付けて、高額で販売。
高額で購入した人が偽物と分った時の感情にも、まったく興味がない。
とにかく、儲かれば良い。
・・・と言うか、ほとんどそれはギャンブルで、
依存症になっているようにも見受けられます。

吉井にとっては周囲の人たちも、ネットの向こう側にいる人々と同じ。
直接に感情を交わすものではないと思っているかのようです。

しかし、実際はそうではないですよね。
周囲の人々にも、ネットの向こう側の人々にも感情はあって、
特に、吉井への「憎悪」の感情を膨らませていくのです。
そしてその膨らんだ憎悪は、爆発的に成長して
どす黒い狂気の集団へとエスカレートしていく・・・。

さて、でもこんな吉井にも、彼女の秋子には若干の感情があったようで・・・。
しかしこの秋子も、何を考えているのかよく分らなくて。
どんなことになるのか、要注目。

そして最も謎なのは、奥平大兼演ずるところの、佐野。
一体どんな利があって、佐野はあくまでも吉井のアシスタントであろうとするのか・・・?
謎は謎のままというのがまた、ミステリアスで面白い。

ダークサイドの窪田正孝さんというのも、めずらしいですね。

 

<Amazon prime videoにて>

「Cloud クラウド」

2024年/日本/123分

監督・脚本:黒沢清

出演:菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、岡山天音、荒川良々、窪田正孝

 

ミステリアス度★★★★☆

狂気度★★★★☆

満足度★★★★☆



最新の画像もっと見る

コメントを投稿