幽霊が踊った?
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講談社世界中で人気を博す、生きる伝説のバレリーナ・クレスパンが密室で殺された。
1977年10月、ニューヨークのバレエシアターで上演された
「スカボロゥの祭り」で主役を務めたクレスパン。
警察の調べによると、彼女は2幕と3幕の間の休憩時間の最中に、
専用の控室で撲殺されたという。
しかし3幕以降も舞台は続行された。
さらに観客たちは、最後までクレスパンの踊りを見ていた、と言っていてーー?
名探偵・御手洗潔も活躍、島田荘司待望の長編新作!
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島田荘司さんの新作・・・って、昨年の4月に出ていたのか!!
気づいていなかったとは!
さてさて、いつものごとく「なぜこんなことに?」という
不可思議な事件からストーリーは始まります。
600ページを超すボリューム。
この読み始めのワクワク感がたまりません。
1977年ニューヨークのバレエシアターで、
主演を演じたバレリーナ、クレスパンが専用の控え室で撲殺されます。
しかしそこは密室。
中から鍵がかけられており、もちろん死体発見時に部屋の中に他の人物は誰もいなかった。
ビルの50階、窓はすべてはめ殺し。
おまけに部屋の外の通路には見張りの人物がずっといて、
クレスパン以外にこの部屋に出入りしたものは誰もいないという。
そしてさらに、検屍によりクレスパンの死は2幕と3幕の間の休憩時間であるとされたのに、
彼女はその後の3幕と4幕に出演し、見事にすべて踊り終えたという・・・。
そんなバカな!
彼女はなんとしても舞台をやり終えたいという強い意志で、
幽霊となって踊りを続けていたのか・・・?
私、てっきりこれは御手洗潔のシリーズではないと思って読んでいたのですが、
中盤くらいになってやっぱり御手洗氏が登場してびっくり。
でも、そりゃそうですよね。
こんな変な事件を解けるのはミタライだけ。
正確には、この20年後にミタライはこの事件に興味を持って、
滞在中のスウェーデンからニューヨークを訪れ、もつれた糸を解きほぐします。
クレスパンはユダヤ人収容所の中で生まれたということから、
ユダヤの民の歴史が語られているのがなかなか興味深かった。
国を追われたユダヤ人の一部が東へ東へと移動していって、
やがて日本にたどり着いて権力を持つようになるというところも面白いなあ・・・。
真偽のほどはわからないまでも、そういう想像の翼を広げるのは楽しい。
また、ウクライナの戦争や新型コロナウイルスのことなど
予言的な話をしているのも面白い。
ま、これは後出しじゃんけんですけれど。
そしてまた、ミタライが訪れる少し前のニューヨークで起きた、
これまた変な事件が、20年前の事件ともほんの少し関係している
というあたりもお見事。
さすがに、島田荘司さん!!
堪能しました。
<図書館蔵書にて>
「ローズマリーのあまき香り」島田荘司 講談社
満足度★★★★.5