映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

人生フルーツ

2017年02月22日 | 映画(さ行)
こつこつ、ゆっくり



* * * * * * * * * *

ニュータウンの一角で暮らす、建築家夫婦のドキュメンタリー。



名古屋市近郊のベッドタウンである高蔵寺ニュータウン。
そこに元建築家・津端修一さん90歳と
その妻・英子さん87歳が住んでいます。
そもそもこのニュータウンができるときに、
修一さんも建築家としてそのプロジェクトに加わり、
自然との共生を目指したプランを立てたのですが、
近代化・効率化の波には勝てず、
高層アパートの立ち並ぶ無個性な街になってしまったのです。
それでも、ご夫妻はこのニュータウンの一角に300坪ほどの土地を買い、
平屋の一軒家を建てました。
そして、庭に失われた木々の苗を植え、
また、数多くの野菜・果物を育てて暮らしてきたのです。
禿山になってしまった裏の山には、
町の人々も巻き込んで、ドングリの木を植えました。
そうして50年。
苗木は立派に育ち、四季折々の野菜や果物がみのり、
英子さんはそれを料理したりジャムを作ったりするのに忙しい日々を送っています。



まさにスローライフ。
でもこれが過疎の田舎ではなくて、賑々しいニュータウンの一角というのがステキです。
きっとご近所でも名物のお家なのでは、と思います。


作中、度々繰り返される樹木希林さんのナレーションの言葉。

風が吹けば、枯れ葉が落ちる。
   枯れ葉が落ちれば、土が肥える。
     土が肥えれば、果実が実る。
       こつこつ、ゆっくり。
         人生フルーツ。




それにしても90歳と87歳のご夫妻のお元気なこと。
畑仕事は、このお年ではなかなか大変そうなのですが・・・。
修一さんは、作物の名札を作ったり、高所の果物を収穫したり、
時には屋根にまで登ったり。
修一さんがお孫さんのために作ったというシルバニアファミリー用のドールハウスには驚かされました。
なんでも手作り。
しかもお年に似合わずセンスが若々しい!
英子さんのお料理がまたどれも美味しそう。
ご主人にはご飯を炊いて、自分ではトーストを食べたりもしていました。
何種類ものおかずを作ることが全然苦じゃないようです。
家にはなんと機織りの機械まであって・・・、
あ~、日本のターシャ・テューダー!



英子さんが「もし私が先に逝ったりしたら、この人はどうなってしまうだろう」
というシーンもありました。
ところが、まさか、まさかの意外な展開となりまして・・・。
修一さんは英子さんに心配をかけたくなかったのかなあ・・・。
本当に、残された者のほうがよほど辛いです。



本作ですごいと思ったのは、自然とともにあるライフスタイルもそうですが、
このお二人の年齢の重ね方と寄り添い方が、なんて美しいのか・・・ということ。
うーん、うちももう40年近くになりますが、全然こうなってない・・・(T_T)
ひたすら夫を立てて、夫のやりたいように・・・
それは確かに古い女性のあり方かもしれないけれど、
ここまで来ると、逆にどっちがやらせているのかわからない。
女の生き方って、強く自己主張するだけではないって気がします。
(今頃気づいても手遅れ?)
いずれにしても、心あらわれるような作品・・・。
こういうふうに年を取らなければ!!



さすが建築家さんのおうち。
30畳1LDKというのもステキでしたねえ・・・。
(驚いたことに玄関がなかったみたいなんですけど!?)



「人生フルーツ」
2016年/日本/91分
監督:伏原健之
出演:津端修一、津端英子
スローライフ度★★★★★
人生の指針度★★★★☆
満足度★★★★★


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