「家畜」を題材とする意味
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農場に暮らす動物たちを描くドキュメンタリー。
母ブタ「GUNDA」に、生まれたばかりの子ブタたちが必死に立ち上がり、乳を求めます。
よく飲んで、寝て。
少しずつ力をつけた子ブタたちは、母の後を追って恐る恐る外の世界へ踏み出す。
やがて、母をそっちのけで勝手に外へ飛び出すように。
こんな子ブタたちの成長を中心に、ニワトリや牛たちの様子も描かれています。
全編モノクロ。
多くは動物と同じ目線の高さで、目標物にフォーカスしています。
バックミュージックなし。
ナレーションもなし。
あるのは風の音、鳥の声、虫の羽音、動物たちの発する声・・・。
私たちはひたすら映像を見つめるのみ。
・あらあら、こんなにたくさん生まれちゃって。
おっぱいはそっちじゃないよ。頑張って・・・。
・ニワトリって、ホント、恐竜の末裔って感じなんだなあ・・・
(草むらを歩くニワトリの姿が、なんだかジャングルを闊歩する恐竜のようだった・・・)
・牛さん、何を考えているのかいないのか。
哲学者のような目。
心の中に、いろいろなつぶやきが生まれました。
・・・と言うことで、緩やかな子ブタの成長物語のように見えて、
ところが最後にドラマがありました。
これは誰もが感じることでしょう。
母ブタGUNDAの戸惑い、悲しみ、怒り、諦観。
私にはまるで、国に息子を奪われて戦地へ送られてしまう母親のように見えました。
野生の動物ではなくて、家畜を捉えたというところにも意味がありそうです。
こんな映画もアリなんですねえ・・・。
恐るべし、映像の世界。
<WOWOW視聴にて>
「GUNDA グンダ」
2020年/アメリカ・ノルウェー/93分
監督・脚本:ビクトル・コサコフスキー
映像美★★★★☆
満足度★★★★☆
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