映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

教誨師

2019年04月18日 | 映画(か行)

役者さんの力が試される

* * * * * * * * * *

大杉漣さんの遺作となりました。
主演と同時にエグゼクティブプロデューサーを務めています。


6人の死刑囚と対話する“教誨師”佐伯(大杉漣)を描きます。
「教誨師」とは、受刑者の道徳心の育成や心の救済に務め、改心できるように導く人。
私は先に堀川惠子さんによる「教誨師」という本を読んだのですが、
特別に関連はないようです。
ただ、教誨師という仕事の過酷さ等、この本を読むともっと理解できると思います。

 

本作はほとんどが拘置所の同じ部屋で、
佐伯と6名の死刑囚の対話シーンが順番に繰り返されるばかり。
それだからこそ、役者さんの演技力だけが物を言うという作品なのです。
そして、見事に役者さんたちがその命題をこなしています。

だんまりで一言も話さない男。

字の読めないホームレス。

ひたすらに暗い人。

調子の良さそうなヤクザ。

おしゃべりなおばちゃん。

過激な思想をとうとうと述べる若い男・・・。


それぞれがそれぞれの事情を抱えています。
そしてどれについても納得できるというか、
確かにこういう人っているなあ・・・と思わせる力がある。
はじめは口が重い人々も会う回を重ねるごとに、次第に本心を覗かせるようになる。
それぞれがどんな事件を起こしたのか、詳細は語られませんが、
本人が少しずつ語ることから、およそのことがわかってくるという進行の仕方もうまい。


そして、教誨師・佐伯はただ彼らの話を淡々と聞くだけではありません。
彼らに寄り添おうとしながら、本当に自分の言葉が届いているのか、
それで彼らが安らかに死に行くことができるのか・・・苦悩します。
それは彼自身の過去の出来事ともつながっていくのです。
俳優たちの全身全霊をかけた言葉が、胸に染み入ります。

中でも、作中でたった一人実際に処刑される高宮(玉置玲央)が、すごかった・・・!
インテリの彼は反社会的思想を持ち、多人数の無差別殺人をしたようなのです。
しかし反省の色はなく、持論を繰り広げるばかり。
これには佐伯も太刀打ちできず、逆にやり込められてしまいます。
この方のルックスも好みで、私、ファンになってしまいました。
玉置玲央さんは主に舞台で活躍していて、
大河ドラマ「真田丸」で織田忠信役をやっていたそう・・・。
全然気づいてなかったですが・・・。
きっとそのうちにまたテレビドラマや映画で大きな役で出てくるのでは、と期待しています。



ともあれ、思っていたよりもずっと見ごたえのある作品で、
大杉漣さん、本当に惜しい方を亡くしたと今また改めて思う次第。

教誨師 [DVD]
大杉漣,玉置玲央,烏丸せつこ,五頭岳夫,小川登
Happinet



<WOWOW視聴にて>
「教誨師」
2018年/日本/114分
監督・脚本:佐向大
出演:大杉漣、玉置玲央、鳥丸せつ子、五頭岳夫、古館寛治、光石研

死刑囚の真理度★★★★.5
満足度★★★★.5



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