映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「政と源」三浦しをん

2017年08月08日 | 本(その他)
水路のある下町の風情がナイス

政と源 (集英社オレンジ文庫)
三浦 しをん
集英社


* * * * * * * * * *

東京都墨田区Y町。
つまみ簪職人・源二郎の弟子である徹平の様子がおかしい。
どうやら、昔の不良仲間に強請られたらしい。
それを知った源二郎は、幼なじみの国政とともにひと肌脱ぐことにするが―。
当年とって七十三歳の国政と源二郎は、
正反対の性格ながら、なぜか良いコンビ。
水路のある下町を舞台に老人パワーを炸裂させるふたりの、
痛快で心温まる人情譚!

* * * * * * * * * *

三浦しをんさんによる本作、
舞台は東京の下町、主人公は73歳の老人2人と、かなり渋いです。
けれど、ちょっと生きにくいけれども現代を生きていく、
全然辛気臭くはないストーリー。


この2人、幼馴染ではありますが、
国政は銀行マンとして勤め上げたインテリ。
源二郎は若い頃からつまみ簪職人として修行をし、今も現役の職人です。
若き弟子・徹平の指導もしています。


ストーリーは国政の視点で描かれます。
国政の妻は、娘夫婦の家へ出ていってしまっていて、彼はひとり暮らし。
源二郎は妻に先立たれていますが、
弟子もいるし、何しろ人好きがして愛嬌があり、破天荒な性格なので、
彼の生活はかなり賑やか。
国政はそんな源二郎が羨ましいのです。
自分はただ真面目に務めを果たしてきたのに、
なんで今こんな境遇なのかとチョッピリ悔しくもある。
けれどそんな国政の屈託を知ってか知らずか、
源二郎は国政の様子を気にして、ちょっかいを出しに来る。
いいコンビですね。
そしていかにも軽い今風の若者、徹平も魅力的です。


つまみ細工は昨今人気が出てきているので、
様子はしっかり想像がつきます。
源二郎は伝統を踏まえて、布を染めるところから始めます。
ふだんはおちゃらけているのに、仕事を始めると凄い集中力で、
周りのことなど何も気にしなくなる。
まさに職人。
徹平が自分なりにデザインした今風のアクセサリを作るというのにもOKという、
柔軟な心の持ち主でもある。
そんなところがステキです。


さて、国政はなぜ妻が家を出ていってしまったのか、
その理由がわからないのです。
妻は国政の父母ともうまくやってくれたし、
家事をこなし子育ても申し分なくやっていてくれた・・・、
そのことには感謝していると思っていたのですが・・・。
しかし、妻には妻の言い分がある。
ここのところは日本の多くの夫婦がこうなのではないかなあ・・・
と想像してしまうのですが。
しかし、いくらかでも妻との対話を取り戻そうとする国政のとった手段が、
なかなかユニークですよ。
そんなところが楽しくてあっという間に読み切ってしまいました。


「政と源」三浦しをん 集英社オレンジ文庫
満足度★★★★☆


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2 コメント

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Unknown (パール)
2017-08-10 11:09:12
本作、先月文庫で購入しました。ところが、読んで数ページで、既視感が…情景がしっかり目に浮かびます。
もしやもしや、ドラマ化されていたのでは…と検索してみましたが、探せません。
多分、おそらく、きっと、文庫化される前に図書館で借りて読んだのでしょう(涙)
再読いたします。
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Unknown (たんぽぽ)
2017-08-10 19:34:53
>パールさま
私も張り切って見始めたレンタルや録画の映画、実は以前に見たことがあるなんてことがたまにありますよ。がっかりですね。というか、自分の記憶のいい加減さも腹がたつ。
でも、2回見て悪いということもないですし。もう一度楽しむのもありですよね。
一度図書館で借りて読んでいた、と言うのは今後私にもありそうなので気をつけねば・・・。
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