肩の凝らない日常の話
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どう工夫してもイマイチな仕上がりになる不得手料理(ポテトサラダ)に頭を悩ませ、
近所では入手困難なご当地調味料に胸をときめかす。
なぜか調理前が高揚のピークになりがちな、かたまり肉やおでん。
友人が集う家飲みの日は深夜の料理を目一杯堪能。
冷めゆく天ぷらに絶望し、弁当屋で「あ、かつ丼の人」と顔を覚えられた恥ずかしさに悶え、
飼い主に似てきた猫を愛でては心を整える……。
思い描いた「立派な大人」にはなれぬまま、加齢と変化を重ねていく人生での
ささやかな思考や出来事を、味わい深く見つめ出す。
“ふつうの生活”がいとおしくなる、日常大満喫エッセイ待望の文庫化!
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角田光代さんのエッセイは、なんだかホッとして元気が出ます。
本巻は、雑誌「オレンジページ」に連載していたものをまとめたということで、
当時ご本人が撮った写真も付いています。
「あとがき」にあるのですが、その連載を始めた時に、
重苦しかったり、何か考えることをしいたりする文章は書くまいと決めた、とのこと。
昼下がり、あるいは晩酌時に、たらたらとしゃべっているようなことを書こうと思った、と。
確かに、そういうどうでもいいような、肩の凝らない日常の話であればこそ、
私のどこかホッとする感じも生まれたのでしょう。
友人とおしゃべりするとき、特に内容に意味はなくて、
一緒に笑いながら時を過ごす、そのことに意義があったりするのと同じこと。
時に角田光代さんに共感したり、私とはちょっと違うな、と思ったり。
笑ってみたり嘆いてみたり。
ささやかなそういう時間を楽しめました。
「月夜の散歩」角田光代 新潮文庫
満足度★★★.5
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