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ビューティフル・ボーイ

2019年04月17日 | 映画(は行)

ドラッグは抱えている問題から逃げる手段?

* * * * * * * * * *

父デビッドとドラッグ依存症だった息子ニック、
それぞれの視点から描いた2冊のノンフィクションが原作とのこと。
でも本作は、ほとんどが父デビッドの視点から描かれています。
デビッドが初めて息子のドラッグ依存に気づいてから
ニックは施設入りをすることになります。
大学在学中だったのを数ヶ月休んで。
しかし、一応その成果が出て、もう大丈夫と思った頃に、また手を出してしまう。
心からニックは思う。
もうやらない、大丈夫。
・・・しかししばらくするとまた始めてしまう、そんなことの繰り返し。
次第にクスリの量も増え、心も体も蝕まれていきます。



本人も辛いでしょう。
けれどそれを見ていることしかできない親の苦悩というのが身にしみます。
ずっと閉じ込めて見張っている訳にはいかないですものね・・・。



ある人は言います。
「クスリが問題なのではない。
ドラッグは抱えている問題から逃げる手段なんだ。
君の問題は何?」
さて、ニックは成績優秀スポーツも得意。
一体何が問題なのか、と私も問いたい。
強いて言えば、彼の両親は離婚していて、今は父の再婚相手が「母」であり、
その母と父との間にまだ幼い2人の子供がいる
・・・というような家庭環境くらい。
でも、本作から見る限りではその仲は極めてうまく行っていて、
こんなことが原因とは思い難い。
もしかすると、あまりにも親密な父親との関係?と思わなくもないですが・・・。
そんなことが問題なら世界中ドラッグ依存症の人だらけになりそう。



まあでもそれは端から見たことです。
何が満足で何がそうでないのか、何が不安なのか・・・
それは個人個人のことで、本人でさえ、
心の奥底にある自分の気持ちに気づいていないのかも知れません。
何もかもが気に入らない、「キャッチャー・イン・ザ・ライ」のホールデンのように・・・。



どうすればいい。
どうすれば息子が立ち直るのか。
なぜ幾度も同じことを繰り返すのか。
もしかして自分の育て方がダメだったのか。
自分の対応が問題なのか。
父親の苦悩の答えは、否。
親でもどうすることもできないのです。
誰にも、何もできない。
もしかすると、結局父がどうにかしてくれるという甘えが本人にあったのかどうか・・・。
親にとっては開き直って自分には何もできないと
覚悟を決めることこそが、本当の第一歩なのかも知れません。
けれどそれは本人にとっては絶望的なことで、
本作でもその後ニックが命を落としても不思議ではなかった・・・。
実際、難しいですね。



本作のモデルのニックは、その後8年間ドラッグには手を出していないそうです。
そこが救い。



「ビューティフル・ボーイ」はもちろん=ティモシー・シャラメですが、
あのジョンレノンの名曲「ビューティフル・ボーイ」にちなんでいたのですね。
作中でも流れるこのメロディ、
親にとっては、我が子はいつまでたってもかけがえのないビューティブル・ボーイなのだ
という思いが溢れ出ます。


<ディノスシネマズにて>
「ビューティフル・ボーイ」
2018年/アメリカ/120分
監督:フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン
出演:スティーブ・カレル、ティモシー・シャラメ、モーラ・ティアニー、エイミー・ライアン、ケイトリン・デバー
親子の愛度★★★★☆
ドラッグの危険度★★★★★
満足度★★★★☆



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