第一報(3/17)を聞いた時、何だかずいぶん前の話しだなと思った。問題自体もまずいけど、何だか表沙汰になるのが遅い。そこがさらに気になった。
大阪産業大学のいわゆる「やらせ」受験問題は、18日午後に続報が出はじめた。各紙が報じたところによれば、
①大阪産業大学(大阪府大東市)が2009年度入試で、付属高校に生徒を受験させるよう依頼した。
②高校は依頼に応じた。受験した生徒に謝礼を出した。
③付属高校は関係者(教諭ら)に事情聴取。
④大学はその時文科省への報告も、第三者による調査未実施だった。
①②については、第一報の段階でなんとなく理解できた。大学が付属高校にこのようなことを頼むのも気になるし、お金が動いているということも、相当まずいと感じた。続報によれば、付属高の元教頭が'11年、問題を指摘する内部告発の手紙を、大産大側に送付していたことが判明した。そんな内容のニュースである。
毎日新聞の取材に元教頭は、『入学者が増えすぎて国から補助金をカットされないように、大産大の要請で、入学する意思の乏しい生徒を受験させ、謝礼を支払った』と証言しているとのこと。
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毎日新聞の記事で時系列を確認してみる。
2011年9月 元教頭退職後(①と②)
『(09年度の)経営学部の入試で、入学者の超過による補助金停止を逃れるため、高校の優秀な生徒を複数回受験させた結果、入学者数を減少させ補助金交付を受けているという犯罪的行為に加担しました』と告白する手紙を大学側に送付。『複数の役員からの指示で行いましたが、非常に問題があり、深く反省しています。経営学部を志望した一般受験生の信頼を損なったことなど貴学園が対応すべきことが多くなります』と記しているという。
生徒に謝礼を支払ったことも示唆。
同年10月(③とその後)
付属高の幹部が、生徒に受験を依頼した担任の教諭2人から事情を聴取。
2012年7月
入試に関する会議では、大学側が補助金目的で受験を依頼したことを認めた。内部調査のみ。文科省などに報告はしていない。③の後だろう。
2013年1月(④の後)
学校関係者が同省に内部告発。
大産大や付属高が同省や大阪府に報告したのは、その後のこと。
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何が起きたのだろう...
大学入試でも高校入試でもそうだが、入試は事前に受験生に対して選抜方法(推薦選抜、一般入試、いわゆる学力選抜、一芸一能選抜等々)を公示し、それぞれの募集定員を発表する。大学受験生や、彼ら彼女たちをサポートする高校の進路指導部は、それぞれの選抜方法(枠)で定員が守られることを前提として、受験対策を立てるし、立てさせる。それを疑うことはまずない。
では、この年の大阪産業大学・経営学部の入試に何が起きたのだろう。考えられることは、AO入試や推薦入試等(指定校推薦、一般推薦)で、予定(予測)数を大幅に超過したということだろう。
①AO入試の出願が多かった。
AO入試は、制度導入当初の理念とは大きくかけ離れ、学生の早期確保の手段になったことは、高校の進路指導部職員なら、まあ共通認識であると思う。念のため言っておくが、この年の大阪産業大学・経営学部AOがそうだったと言っているのではない。ただ、AOは志願者・合格者数を見極めにくい、決めにくい入試方法であるとは言える。そしてAOは11月の推薦入試解禁よりもスタートが早い。
②指定校推薦枠の充足率が高かった。
志願者数が指定校枠の上限近くまでになった。高校の進路指導を担当者の立場で考えると、過去10年以上、かなり多くの大学が、明らかに指定校枠を乱発していると言えると思う。大学が指定校枠が埋まらないことを前提としている証拠である。くり返しになるが、この年の大阪産業大学・経営学部指定校推薦入試がそうだったと言っているのではない。一般論である。ただ、この年の入試で、経営学部は、例年より指定校枠を利用した者が多かった可能性がある。
指定校枠による出願は絶対合格になる。
③一般推薦入試も合格者が多かった。
以前からのこと、うわさの域を出ないかもしれないが、関西圏では一般推薦合格者にも辞退者がでることがめずらしくないということを聞いたことがある。
①か、②か、または両方の合格者数の読み間違いが起きた。③はよくわからない。ただ結果として、事前に公表している一般入試合格者数をきちんと出すことが、はばかられる状況が発生した。もしくは発生すると予測できて、それはまずいことだと判断した。
合格者が増え、結果として入学者も増える。普通に考えればめでたいことなのだが、何でもかんでも合格させ、入学させればいいというものではない。物事には適正数というものがある。私学助成(補助金)には様々な条件があり、入学者が入学定員よりも何%を超えてはダメという決まりがある。この決まりに抵触する恐れがあった。一般入試を前に、状況を放置すれば補助金が交付されない可能性・危険性が認識された。これを避けるために、成績のいい、かつ合格しても入学手続きをしない・入学する意志の乏しい(ものは言いようだ)、付属校生に受験してもらうことにした。そして、その生徒たちが『一般入試合格者』の一部になった。合格しても入学手続きをしない(ことになっている?)『合格者』だが、一般入試の合格者数に含まれる。個人情報保護の時代、『合格者』の名前は、まず表にはでない。
合格しても入学しない。対外的には一般入試もきちんと実施したことになる。入学するのもしないのも、受験生の判断とできる。補欠の繰り上げ合格を出さなければ、定員も充足する。補助金ももらえるし、世間体も保てる。
...表に出てきたことから、これだけの推測ができる。当たらずとも遠からずという思いがある。でも、もし埼玉県の一高校教師が考えたことが、当たらずとも遠からずだったら、以下の点で、これはまずいことですよ。
第一、ホントにこの大学に進学したかった者が、合格しなかった可能性があるということ。
第二、「合格者」はホントに合格したのですかという、ぞっとするような勘ぐりも生むということ。
第三、まともな感覚を持った高校の先生ならば、自分の受け持ちの生徒がこの大学を受験したいと希望した場合、取るべき態度が決まってくるということ。
...である。
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18日夜になり、細かい数字がわかってきた。(新聞各紙)
〇生徒9人が合計30回受験
一般募集でも様々な受験方法があるのが、複数回受験できるにしても、一人で3回平均である。受験した学生にとっては負担だったろう。なお、受験した生徒はすでに進学先が決定済みの者とのことだ。これならば、一般入試枠でで合格しても、その枠で進学はしない。
〇経営学部は入学者が637人を超えると、補助金交付基準に抵触
定員を上回る入学者については、年度、当該学部により何倍を超えると、補助金が交付されない基準がある。
以前は一律1.3倍のころもあったように記憶している。現在は学部別に定められているようだ。やや曖昧な記述だが、『2008年、大阪産業大学は1.4倍』という数字が見つかった。これだと637/1.4なので、本来の定員は455人と推定できる。仮に1.3倍が基準だった場合、490人。しかし推薦入試(正しくはAO等も含むと思う)で、600人近くが合格済。これに一般入試枠78人が加わると、637人を超える。そう判断したのだろう。
〇入学者は598人
推薦入試の合格者の中に辞退者もいた。付属高校からの受験生9人が、何人か分の合格者枠を占めた。いろいろやって598人が入学。何とも謎めいた足し算だが、637人以下であり、交付された補助金は10億円。(10億円については、大学全体でだと思う。)
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19日、後追い記事が出てきた。より詳しくなっている。
朝日、19日(火)11時42分配信
〇問題把握の時期
大学の理事長らは2011年9月、付属高の元教頭からの告発文書で問題を把握していたことが判明。
この時に大学側は十分に調査していなかった。
2013年1月に文部科学省に、別の告発文が届くまで約1年4ヶ月放置。
〇同年の経営学部の一般入試は6回
前期(A・B・C日程)、中期(A・B日程)、後期の計6回。
推薦入試ですでに定員を大幅に超える合格者を出していた。
2009年1月、進学先の決まっていた付属高校の特進コース2クラスの成績上位者十数人に担任を通じ、受験を依頼。
1人当たり2回~6回、少なくとも36回受験。受験者には1人1回5千円の謝礼が支払われた。
〇1.37倍
補助金支給の対象となる定員の1.37倍以内に入学者数を抑えた。
既報のとおり、637人になると、補助金がカットされるのだから、637/1.37は465人である。これがこの年の学部入学定員だろう。465人が入学定員の学部なのに、一般入試の前に600人もの合格者を出した。一般入試で合格者なんて出したくてもだせない状況だったのである。
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毎日jp.19日
〇「偏差値維持」で大阪桐蔭に受験要請
2012年度入試では延べ3618人がこの入試を受け、2742人が合格。進学校として知られる桐蔭からは延べ約2550人(全体の62%)が受験、合格者は約2150人(同78%)、入学者はゼロ。
多くの生徒が合格しながら、実際にはほとんど入学していない。受験料は1回2万円だが、桐蔭など系列高校の生徒は無料である。実質的な受験者数の水増しである。高倍率の「演出」ととらえられても、反論しにくいだろう。
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19日の段階で、大学の公式コメントがウェブサイトに掲出された。調査中であることを強調している。そんな印象をうけた。記者会見はまだのようだ。文科省への届け、報告がまだ終わらないためかと思う。でも、急がないと...
21日朝の段階で、なぜ1年以上告発がたなざらしにされたか、いろいろあったことが報道されはじめている。対応が遅い印象がある。