引っ込み思案で自分をうまく出せない真奈(岸井ゆきの)は、自由奔放でミステリアスなすみれ(浜辺美波)と出会い親友になる。しかし、すみれは一人旅に出たまま突然いなくなってしまう。あれから5年、真奈はすみれの不在をいまだ受け入れられず、彼女を亡き者として扱う周囲に反発を感じていた。
ある日、真奈はすみれのかつての恋人・遠野(杉野遥亮)から彼女が大切にしていたビデオカメラを受け取る。そこには、真奈とすみれが過ごした時間と、知らなかった彼女の秘密が残されていた。真奈はもう一度すみれと向き合うために、彼女が最後に旅した地へと向かう。
予備知識ゼロで
フラットに...
主人公真奈(岸井ゆきの)
内向的で人見知りの印象、すみれとは大学入学直後に出会っている。新歓コンパで二人の距離は一気に近づく。
真奈は大学卒業後レストランバーで働いている。
親友すみれ(浜辺美波)
真奈に比べると大人びたふるまいができる。でも、実際は背伸びをしている。
すみれは実家を飛び出して一人暮らしの真奈を訪ね、一緒に暮らし始める。すみれは真奈の部屋を「海の底みたいに落ち着く」と言う。
1年半が過ぎた頃、恋人の遠野(杉野遥亮)と同棲すると言い出し、出ていく。
ものがたりは、2人の大学時代から、3.11、そしてその後を描くもの。10年スパンのものがたりだが、時間の経過がややわかりにくい構成だ。原作を読むべきかもしれない。
基準の時間が、既に過去(3.11から5年後)であることも、ややこしさの理由だろか。
岸井さんが僕のブログに登場したのは、もう6年も前になる。以降TVドラマ等で見かけることはあったが、劇場の大きなスクリーンでは今回が初めてのことだ。
真奈は震災ですみれを失い、大きい喪失感を抱えて生きている。すみれの恋人がすみれを失ったことを認め、次の段階に進むことを、やむを得ないことと思いながらも、自分は決着がつかずに悩んでいる。
レストランバーの店長の死、料理長と訪ねた東北の地での地元の人々との出会いを通して、ゆっくりと再生していく姿が印象的だ。
浜辺さんは美しくはっきり物を言うミステリアスなすみれの役。実年齢より少し上。何となくだが、はじめて普通の人を演じたのを見たような感じ。普通の人が、3月11日に東日本大震災に遭遇、命を奪われることの理不尽さ、怖ろしさ。それが伝わってきた。
『キミの膵臓を食べたい』の少女とも、『賭けグルイ』や『約束のネバーランド』の主人公とも違う。浜辺さんのすみれは、どこにでもいそうな普通の人。彼女もそんな女性を演じる年齢だ。
おそらくいろいろ批判があるだろうなあ。
ものがたり後半で震災経験を、一般人(の設定)が語る部分がある。ややドキュメンタリー番組のようにになること。
OPとエンディング近くに、すみれの死を予感させるアニメーションの部分があること。
新歓コンパのシーンが、真奈目線とすみれ目線でくり返されること。
一部凡長かなあと思えるが、全体としては悪くない。
おもしろそうな女優さんを見つけた。
真奈たちが宿泊した民宿の娘を新谷ゆづみさんが演じている。
’03年7月20日生まれ18歳。『さよならくちびる』(’19年)でスクリーンデビュー。
『さよなら...』は劇場で見ているので、パンフレットがある。出演者のひとりとして写真付きででていた。でも、申し訳ないが、全く印象がない。
これからはこの名前がでていたら、要チェックだ。
本作、上映館がそれほど多くはない。見ておくべき作品だろう。
(文中一部敬称略)