<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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貝塚駅から終点の水間観音駅までの所用時間は約15分。
料金は290円。
これは時速に直すと約22km/h。
非常にゆっくりとしたスピードだ。
実際は駅に停車する時間が長くて多いので、走っているときは普通のローカル線並のスピードである。
料金は距離にしてはちょっと割高。
山手線の有楽町から品川までの距離よりも若干短いのだが、あっちは170円。
山手線と水間鉄道では、利用者数が3桁以上違うのでいたしかたあるまい。

したがって、290円で楽しめる旅を提供してくれるかどうかが、水間鉄道の価値に繋がるのではないか、と私のような旅人には思える。
自宅から、水間鉄道までは自転車でも行けないことはない距離なので「旅人にとって」と言うには大げさすぎるかもしれないが、290円の価値というのは十分に重要な要素なのだ。

尤も、すでに私は旅人として貝塚の駅で十分に水間鉄道を堪能していたのであった。
フロントマークの広告ポスター。
枕木のメッセージプレート。
普通の鉄道にはない、様々な試み一つ一つがなんだか「エネルギー」を利用するものに与えているように感じているのだ。
これだけのエネルギーを貰える鉄道は他にはない。
地元が支える、という感覚でいくと、もしかすると三陸鉄道に匹敵するのではないかと思うところもなくはないのだ。

いよいよ出発。
2両編成の電車はゆっくりと貝塚駅を離れた。
貝塚駅を出ると電車は急カーブを90度曲がって進路を南東方向の水間寺に向けた。
単線の線路の両側には住宅が迫っている。
まるでウェンワイヤイ駅付近のタイ国鉄の線路のようだ。
もっともあっちは市場なんかも線路内にあったりして趣は違うが、雰囲気は似ていなくもない。
私は2両編成の後ろ側の車両に乗ったのだが、多くの人は1両目に乗車している。
電車はワンマン運転で、途中の駅はすべて無人駅なので降りるときはすべて運転席のある最前列の扉から降りるシステムになっていた。
システムといえば大げさだが、要は降りるときには運転席横の料金受けに運賃を投入するか、カードリーダーにPiTaPaなりICOCAを読み取らせることになっているのだ。
で、乗車はというと、その1つ後ろ側の扉が乗車専用になっていて、途中の駅から乗車するときは、そこから乗って、整理券をとるか、PiTaPaなりICOCAをカードリーダーにタッチするようになっているのだ。

つまり私の乗っている2両目からは降りることも乗ることも出来ない仕組みで、途中の駅では扉は開かないのだ。
だから、2両目に乗って座って嬉々としているのは私のような他所者が中心ということになる。
ワンマンの電車は大阪でも珍しくはない。
たとえば大阪空港と門真南を結ぶギネスブックにも載っている大阪モノレールや、JR阪和線の羽衣支線などはワンマン運転である。
東京でも確か地下鉄丸の内線はワンマン運転だ。
でも、扉は停車駅全てで普通の電車と同じように開閉されるし、しまったままの車両などないのである。

一両目の車両しか扉が開閉しないのは、乗合バスと同じなのだ。

このような不慣れな電車は時としてドラマを生むことになる。

つづく

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