年老いたハリソン・フォードはかなり魅力的だ。
映画「野生の呼び声」の予告編を見たとき素直にそう思った。
犬を連れてカヌーで激流を下るハリソン・フォードの姿は老人となった今もインディ・ジョーンズやハン・ソロと同じ野性味を感じさせる。
そんな雰囲気を十二分にたたえていたのだった。
まさかこの映画が公開されるとき、世界中がこんなことになっているとは予想もしなかった。
新型コロナウィルス。
寄席や劇場、テーマパークは営業を休止。
ウィルスの感染を恐れての行政指導に基づくものだが、その中でも映画館だけはなぜか営業を続けている。
これはどういうことかわからないが映画という媒体は劇場で観客が静かに観ることのできる娯楽だからかもしれない。
ワーワー騒ぐことがないのだ。
そんななか、近くのシネコンに娘と出かけて見てきたのがその「野性の呼び声」。
観客はまばらだった。
というよりも一桁であった。
私と娘。
年配の夫婦。
そして若いカップル。
計6人。
それが広い劇場の座席にトライアングルな配置で腰をかけていた。
私と娘は最後列中央。
年配の夫婦は左前方。
若いカップルは右手中央。
そんなに神経質にならんでもいいのでは、という配置なのであった。
でも実際に映画が始まるといつもどおり。
ドラマの世界へ引き込まれていった。
「野性の呼び声」はジャック・ロンドン原作の著名な小説を原作としており、実際のところ多くの人がストーリーを知っている。
私はあまり知らなかった。
知らなかったがストーリー途中から結末がだんだんと読めてきて、
「きっとこういうふうに終わってしまうのかな」
と思っていたら、そういうふうに終わってしまった。
なんとなく先が読めるストーリーなのであったが、それでも結構楽しめたのはハリソン・フォードの渋さとCGと感じさせないくらい極めてリアルな動物の描写だった。
コロナウィルス騒ぎがなければもっと多くの客が入っていたのではないかと思える作品なのであった。