言葉つくまで、
secret talk73 安穏act.10 ―dead of night
君が他の誰かに笑ったら、どんな心だろう?
こんなこと考えるなんて自分だろうか?
そんな疑念いだくほど見惚れる隣、君。
「…こういう店は慣れていないから」
ぼそり、告げた横顔うつむく。
上品だけど花柄の多いブランドショップ、たしかにスーツ姿の男は珍しい。
そんなことより言われた事実が鼓動はずませる、慣れていない向こうの事実に。
―そっか?女にプレゼント選ぶとかしたことないんだ湯原、
こういう店に慣れていない。
ようするに「女のもの」選んだことがない、それが嬉しい。
ようするに君が「慣れていない」その過去と想いさらして喜ばせる。
―だったら初恋もまだかもな、23歳にしては奥手だけど湯原なら?
まだ踏みこまれていない心、その無垢が欲しい。
そんなこと想うほど求めている、そんな本音どうしてと自分で解らない。
こんなに誰か求めるだなんて?唯ただ鼓動ふくらんで弾んでゆく背後、肩いきなり叩かれた。
「英二?あんた何やってるのよ」
奥ゆかしい甘い芳香、この香よく知っている。
ふりむいたら現実ひき戻される、そんな諦め微笑んだ。
「なんだ、姉ちゃんかよ、」
こんなとき、いちばん見たくない現実が来たな?
そんな本音のまんなか切長い瞳あざやかに笑った。
「私で悪かった感じね、こんなとこで何してるの英二?」
「そっちこそ、社員旅行どうしたんだよ?」
笑いかけながら呆れたくなる。
自分は似ていて違う姉、そんな現実の唇きれいに笑った。
「集合時間までのんびりしてるのよ、こんにちは?」
色白の貌きれいに笑ってくれる。
その瞳あいかわらず澄んで、けれど視線そっと逸らし言った。
「お友達?紹介しなさいよ、英二?」
背中そっと小突きねだってくれる、そんな笑顔きれいに明るい。
でも小さな違和感くすぶる?
―社員旅行のせいかな、なんだろ?
会社の貌、なんか知らない。
ずっと幼いころから傍にいた貌、けれど「会社員」である姉は知らない。
これから社員旅行に向かう「会社員」それが違和感の原因だろうか?
「同期の湯原だよ、寮で隣なんだ、」
答えながら姉の貌を見てしまう。
いつも快活だった姉、その翳り拭いたくて口が動いた。
「湯原、これ姉だから、」
こんな言い方したら、たぶん怒るだろう?
そうして怒って素顔に戻ってほしい、願いごと華奢な指に小突かれた。
「これとか言わない。そうか、あなたが湯原くんね?いつも弟がお世話になっています、」
切長い瞳あざやかに笑ってお辞儀する、その背中しなやかに綺麗だ。
それは知っている笑顔で、すこしの安堵すぐルージュの唇ひらいた。
「英二がね、いつも『湯原が』て話すのよ。どんな子なのかな、って思っていたの、」
ほら、余計なこと話しだした?
―姉ちゃん喋りすぎなんだよな、顔だけは俺と似ているクセにさ?
自分と似ている姉の顔、けれど快活で話しやすい。
そんな姉が好きだ、けれど好きな分だけ澱む感情がある。
“姉みたいに笑えたら?”
ほらもう考えだす、これがいつも嫌いだ。
それより今は「余計なこと言われないように」だ?そんな思案の前で明るい笑顔きれいに眩い。
「きちんとしてて真面目そうで、今まで連れていたコたちと全く違うわ。それに湯原くんの目すごくきれい、」
それ、いつも俺が思っていることだけど?
まるで見透かされているみたいだ?
いつもながら困りだした隣、ちいさな横顔かすかに傾いだ。
「…はあ、」
こういうの慣れていない。
そんな心の声が貌に出ている、明らかに困惑させてしまった。
でも、こんな貌も見られて良かったかな?つい笑いたくなった端、思いつき微笑んだ。
「姉ちゃん、ちょっと一緒に店、入ってくれない?」
「ここ?別にいいけどなに?」
白く澄んだ笑顔が尋ねてくれる。
こういうの透明感って言うんだろう?自分と違う表情に笑いかけた。
「湯原の母さんにプレゼント選びたいんだ、アドバイスしてよ?」
姉なら良いものを選んでくれるだろう?
信頼と笑いかけた先、美しい瞳きれいに明るんだ。
「いいわよ?じゃあ湯原くん、お母さんのご趣味は何かしら?絵を描くとか読書とか、」
きれいな声やわらかに隣へ向けられる。
こういうのも慣れていないだろうな?予想と見た隣、黒目がちの瞳ふわり笑った。
「あの…母は読書が好きです、」
君が笑った今、誰に?
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英二23歳side story追伸@第6話 木洩日
secret talk73 安穏act.10 ―dead of night
君が他の誰かに笑ったら、どんな心だろう?
こんなこと考えるなんて自分だろうか?
そんな疑念いだくほど見惚れる隣、君。
「…こういう店は慣れていないから」
ぼそり、告げた横顔うつむく。
上品だけど花柄の多いブランドショップ、たしかにスーツ姿の男は珍しい。
そんなことより言われた事実が鼓動はずませる、慣れていない向こうの事実に。
―そっか?女にプレゼント選ぶとかしたことないんだ湯原、
こういう店に慣れていない。
ようするに「女のもの」選んだことがない、それが嬉しい。
ようするに君が「慣れていない」その過去と想いさらして喜ばせる。
―だったら初恋もまだかもな、23歳にしては奥手だけど湯原なら?
まだ踏みこまれていない心、その無垢が欲しい。
そんなこと想うほど求めている、そんな本音どうしてと自分で解らない。
こんなに誰か求めるだなんて?唯ただ鼓動ふくらんで弾んでゆく背後、肩いきなり叩かれた。
「英二?あんた何やってるのよ」
奥ゆかしい甘い芳香、この香よく知っている。
ふりむいたら現実ひき戻される、そんな諦め微笑んだ。
「なんだ、姉ちゃんかよ、」
こんなとき、いちばん見たくない現実が来たな?
そんな本音のまんなか切長い瞳あざやかに笑った。
「私で悪かった感じね、こんなとこで何してるの英二?」
「そっちこそ、社員旅行どうしたんだよ?」
笑いかけながら呆れたくなる。
自分は似ていて違う姉、そんな現実の唇きれいに笑った。
「集合時間までのんびりしてるのよ、こんにちは?」
色白の貌きれいに笑ってくれる。
その瞳あいかわらず澄んで、けれど視線そっと逸らし言った。
「お友達?紹介しなさいよ、英二?」
背中そっと小突きねだってくれる、そんな笑顔きれいに明るい。
でも小さな違和感くすぶる?
―社員旅行のせいかな、なんだろ?
会社の貌、なんか知らない。
ずっと幼いころから傍にいた貌、けれど「会社員」である姉は知らない。
これから社員旅行に向かう「会社員」それが違和感の原因だろうか?
「同期の湯原だよ、寮で隣なんだ、」
答えながら姉の貌を見てしまう。
いつも快活だった姉、その翳り拭いたくて口が動いた。
「湯原、これ姉だから、」
こんな言い方したら、たぶん怒るだろう?
そうして怒って素顔に戻ってほしい、願いごと華奢な指に小突かれた。
「これとか言わない。そうか、あなたが湯原くんね?いつも弟がお世話になっています、」
切長い瞳あざやかに笑ってお辞儀する、その背中しなやかに綺麗だ。
それは知っている笑顔で、すこしの安堵すぐルージュの唇ひらいた。
「英二がね、いつも『湯原が』て話すのよ。どんな子なのかな、って思っていたの、」
ほら、余計なこと話しだした?
―姉ちゃん喋りすぎなんだよな、顔だけは俺と似ているクセにさ?
自分と似ている姉の顔、けれど快活で話しやすい。
そんな姉が好きだ、けれど好きな分だけ澱む感情がある。
“姉みたいに笑えたら?”
ほらもう考えだす、これがいつも嫌いだ。
それより今は「余計なこと言われないように」だ?そんな思案の前で明るい笑顔きれいに眩い。
「きちんとしてて真面目そうで、今まで連れていたコたちと全く違うわ。それに湯原くんの目すごくきれい、」
それ、いつも俺が思っていることだけど?
まるで見透かされているみたいだ?
いつもながら困りだした隣、ちいさな横顔かすかに傾いだ。
「…はあ、」
こういうの慣れていない。
そんな心の声が貌に出ている、明らかに困惑させてしまった。
でも、こんな貌も見られて良かったかな?つい笑いたくなった端、思いつき微笑んだ。
「姉ちゃん、ちょっと一緒に店、入ってくれない?」
「ここ?別にいいけどなに?」
白く澄んだ笑顔が尋ねてくれる。
こういうの透明感って言うんだろう?自分と違う表情に笑いかけた。
「湯原の母さんにプレゼント選びたいんだ、アドバイスしてよ?」
姉なら良いものを選んでくれるだろう?
信頼と笑いかけた先、美しい瞳きれいに明るんだ。
「いいわよ?じゃあ湯原くん、お母さんのご趣味は何かしら?絵を描くとか読書とか、」
きれいな声やわらかに隣へ向けられる。
こういうのも慣れていないだろうな?予想と見た隣、黒目がちの瞳ふわり笑った。
「あの…母は読書が好きです、」
君が笑った今、誰に?
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