萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

弥生雑談、猫まどろむ

2018-03-13 23:52:15 | 雑談
悪戯坊主はアイカワラズイタズラ日常、
新居でもアレやらコレやらヤラカシて・ようするに元気イッパイ、笑
でもコッチは疲れ溜まり気味、ソンナワケで今日はひさしぶり一日在宅にして、
そんな傍らノンビリ眠りこんでいる新居の午後。


昨日は洗い猫→本日もふもふ真白158%増し、笑

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secret talk76 安穏act.13 ―dead of night

2018-03-13 14:30:22 | dead of night 陽はまた昇る
よりそう安息に、
英二23歳side story追伸@第6話 木洩日


secret talk76 安穏act.13 ―dead of night

緑こぼれる樹影、薄紅やわらかに惹かれてしまう。
視線あわせてなんかくれない瞳、ただ声が言った。

「あの宮田…ちょっと読ませて」

うつむいた横顔かちり、鞄を開く。
ハードカバー蒼く光って、繰られたページまぶしい。

「湯原それ、このあいだの続き?」
「ん…」

うなずいた横顔ふわり黒髪こぼす。
クセっ毛やわらかな艶のふち、ワイシャツの襟もと薄紅色が惹く。

―きれいだな、

うなじ微かな淡い色、衿元わずかな肌に透ける紅。
ただそれだけに惹きこまれて鼓動なぞる。

―あんまり見てると変に想われるよな?

見つめて理性ひき戻されて、ふわり樹木が匂う。
やわらかな木洩陽ふるベンチ、土と草の香に眼を細めた。

かさり…かさ、

ページ捲る音に風まじる、梢ざわめく緑きらめいて零れる。
紙すれる音、風わたる音、かすかでも聴こえる森閑が包みだす。

―都心どまんなか、って感じしないよな、

静まる木々の底、ベンチ凭れこんで風かすめる。
頬やわらかに草木が匂う、涼やかな香なびいて息つける。
夏の都心から遠い森閑おだやかな午後、そんな隣に君がいる。

―そっか…山岳訓練の時みたいだ?

警察学校の実地訓練、そんな緊張にも安らいだ君との時間。
あのときも草木が薫っていた、そのまま森が薫る隣はページ繰る。

かさり、かさ…ざあっ、

ページ繰る音、ざわめく梢。
緑ゆらめいて香こぼれる、ほろ苦い甘い静謐そっと吹く。
風ほそめた視界すこし傾けて隣、青い翳かざす横顔が透けて明るむ。

―きれいだな、湯原…ここの貌がいちばん、

ことん、想い素直に肚おちる。
この貌ずっと見ていたい、警察学校を出た後も。

―いつも居心地いいんだよな、湯原の隣は…でもここの貌がいちばんだ、

森しずかなベンチの横顔、この姿が君は似合う。
そんな想い揺らめく木洩陽の貌、長い睫毛おとす翳が頬に蒼い。

―まつげ長いよな、湯原…あ、瞳が動いてる。

睫ふかく透かして瞳が動く、ページの文字を追いかける。
こんなふう見られていることも気づかない君、ひとつ空けて座る距離は見つめるのに調度いい。

―なにも気づいていないよな湯原は…俺がなに想ってるなんて、何ひとつ、

気づかれない、寂しい?

―そっか、寂しいんだ俺…でも、

寂しい、でも、気づかれたら怖い。
もし気づかれたら避けられるかもしれない、そうして君は遠ざかる。
そんな予想ごく簡単だ、それ以上に「背負わせる」ことが一番なにより怖い。

―男同士で恋愛とかないよ、な?

男同士で恋愛する、そんな話いくらでも聴いたことがある。
けれど「幸せになった」話どれだけあったろうか?

―家族が壊れるよなきっと、湯原は、

男同士で結婚はできない、遺伝学的にも子供は恵まれない。
何も生みださない恋愛の結末は「幸せになった」と言えるだろうか?
まして警察学校では恋愛禁止の規則がある、なにもかも公私とも「邪魔者」にしかならない。

―湯原は警察官になりたいんだ真剣に…俺とは違う、

君の選んだ道、その邪魔者になりたくない。
きっと自分は手遅れだろう、だからこそ君の邪魔をしたくない。

―警察学校で男同士とか俺、バカだよな?

愚かだ、自分は。

こんな愚かな感情この自分が選んだ、馬鹿だと自嘲いつも哂う。
なにも生めない痛み、リスクしかない感情、それを選んでしまった自分が可笑しい。
こんなに自分が馬鹿だと知らなかった、けれどほら?こんなに今この場所を幸せに想っている。

―バカだよな俺、でも…きれいなんだ湯原が、

本を読む横顔、その隣にいる今がいい。
ただ見つめるだけの時間、そんな今が。

―きれいだ、

きれいだ君が、その隣にいる感情が蝕む。
こんなに見惚れて惹かれて、傍にいて、でも抱きしめられない。
届かない手が悶えて傷んで、鼓動しずかに侵して骨髄ふかく穿たれる。

―きれいだ湯原、だから、

だから君に背負わせたくない、こんな感情。
警察学校で男同士で禁忌の重奏、普通じゃない、家族を壊すかもしれない。
そんなリスク負う痛みを君は知らなくていい、けれど自分は今もう骨髄まで融けこんで愛しい。

―俺は幸せだ、今までよりずっと…でも湯原は不幸になる、

自分と君は違う、たぶん別世界で生きる。
そんな自覚が苦しくなる、苦しい分だけ今は君を見ていたい。
この眼どうか面影いくつも留めてほしい、ひとつも多く君の記憶きざんで生きたい。

ほら、君が気づいた。

「…?」

視線の先そっと長い睫あがる、黒目がちの瞳が自分を見る。
澄んだ眼ざし自分を映して、すこし途惑って、それでも小さく微笑んだ。

―笑ってくれた湯原?

読書のあいま何気ない視線、それだけで鼓動が響く。
風わたる梢ざわめく香の底、そっと長い睫ふせられてページに戻った。

「…、」

ため息ひそやかに零れて、ほら鼓動が響く。
ただ見つめる静謐の隣、うつむけた頬そっと緑の翳ゆれる。
クセっ毛かすかに黒い艶ゆらせて、穏やかな光ただ鼓動ゆるく心ほぐれだす。

この隣が好きだ、どうしても。

―好きなんだ俺…もう後戻りできないな?

無言な君、けれど隣に座っているだけで心凪ぐ。
静かで穏やかな隣の空気、こんな悶々わだかまる今すら安らいでいる。
安らいで見つめたくて離れられない、たぶん今、自分は幸せな瞬間に座っている。

―好きなんだ、だから俺を見てほしくて…何でもしたいんだ俺、

君に何でもしてあげたい、自分を憶えてほしくて。

いつか離れてしまう君、だからこそ記憶のかたすみ与えてほしい。
だから君が望むこと何でもしたい、君のために何かできることは?

―俺に何ができるかな、湯原のためになること、

君の役に立つこと見つけられるだろうか?
想い森の奥ながめる隣、穏やかな声が言った。

「あの…宮田のお姉さん、宮田と似てる、」

姉の話なんだ、こんなタイミングで?

―またいつものやつかな、これ?

おまえの姉を紹介してくれ。

その願いごと幾度されたろう、そのたび虚ろな感覚。
それを君にされたら心どうなるだろう?そんな想い隠して笑った。

「よく言われる、湯原も想ったんだ?」
「ん…そう?」

相槌おだやかに君が微笑む、その貌こぼれる木洩陽に繊細うつる。
蒼い翳やわらかな笑顔きれいで、ただ見つめるまま君が微笑んだ。

「きょうだいって、いいな…」

いつもの落着いた声、でも温度かすかに違う。
その差ゆれる蒼い樹影、すこし厚い唇そっと言った。

「お姉さんと話す宮田を見て、そう思った…俺はひとりっこだから、」

黒目がちの瞳やわらかに笑ってくれる。
いつもどおり静かに微笑んで、静かなぶんだけ寂しい。
こんな貌させてしまったのは自分?自責しずかに浸しながら仮定が浮かぶ。

もし君にきょうだいがいたら、今より笑ってくれたろうか?
その代わりに自分はなれないだろうか?

それとも、自分なら?

※校正中
secret talk75 安穏act.12← →secret talk77
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