萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第61話 塔朗 act.2―another,side story「陽はまた昇る」

2013-02-26 23:56:17 | 陽はまた昇るanother,side story
真実、たどらす芳蹟の温度、



第61話 塔朗 act.2―another,side story「陽はまた昇る」

食卓を明るます陽射しが、2週間前よりまぶしい。

もう夏も残暑になる、そんな季節の光に瞳ほそめて用紙を捲る。
綴られていく調査データと論文に思考は動きながら、けれど鼓動は15分後に軋みだす。
いま意識は論文の世界を楽しんでいる、それなのに心は緊張と小さな怯えに泣いてしまう。

…英二の言葉と心が違っていたらどうしよう…嘘を吐かれたら哀しい、でも信じていたい、

読んでいる論文は楽しい、けれど心の深くが哀しんでいる。
もう覚悟は3週間前に芯へ坐りこんだ、それでも恋する心は涙を流す。
こんな自分は弱い?そう認める想い微笑んで周太は論文を読み終えた。

「湯原、どう思う?」

隣からの声に振り向くと、眼鏡の瞳が陽気に笑ってくれる。
この論文の意見が訊きたい、そうメールで言ってくれた通り手塚はコピーを持って来た。
これを読んで思うことで手塚が聴きたい意見、それを推察して周太は口を開いた。

「手塚が聴きたいのって、ハイポニカ栽培を水源林の木に応用できるのか、ってことだよね?」

ハイポニカ栽培は水気耕栽培とも言い、適切な人工条件で育てることで植物の力を最大限に発揮させる。
この栽培法ではトマトを木のよう大きく成長させることも可能で、実例では一本の苗から12,000個の実が採れた。
これをブナのように通常でも巨体の植物に応用できるのか?そう質問を推論した先で快活な声が頷いた。

「そう、ブナの実生を人工栽培するのにどうかな?」

真面目な顔をぱっと明るませ、訊いてくれる。
発想としては面白いだろうな?そう感じるまま周太は答えた。

「面白いなって思うよ?…ブナが育つ環境が人工的に造れるのか、が問題だと思うけど、」
「だよな?トマトとかメロンみたいな温室栽培する植物とは、ちょっと違うもんな?木自体もデカいし、」

生真面目な顔が困ったよう笑って、周太の手元で用紙を捲る。
その指先に諦めたくない意志が明るい、この不屈な友人に周太は笑いかけた。

「実現は簡単じゃないよね、でも理論的には可能だって思う。ブナにとって最適な環境のデータと施設を揃えられたら、可能性はあるよね?
それより問題なのは実生の苗を植林した後じゃないかな、今まで人工条件で育った苗が自然の環境に順応出来るか、ちょっと難しいよね?」

トマトやメロンなど農作物なら食用目的だから、収穫すればその後は無い。
けれど樹木は成長した後に山林へと植樹する、そして自然環境で育成するその後が重要になる。
そして山は天候や季節で変化が大きい、その適応能力も問われるだろう。この相違点に手塚も頷いた。

「そうなんだよな、いちばん良い環境で育った苗を自然環境に移せるのかどうか、だよな?ソレ出来なきゃ意味ないんだ、」
「ね、ブナの遺伝情報とかを調べたらどうかな?植林したい環境でも元気なブナのデータを取って、その遺伝を実生に活かすとか…」

答えながらも問題点を考えてしまう。
いわゆる遺伝子組換の技術をブナの実生に応用する、その人体や自然界への影響はどうだろう?
この問題提起にもすぐ手塚は気がついて、難しげでも朗らかなトーンで応えてくれた。

「遺伝子操作の苗も試す価値はあるよな、ただ遺伝子組換の大豆みたく健康の問題があるだろ?水源林だと自然環境への配慮もさ、」
「それ大事だよね?あとはね、自然環境が厳しくても耐えられるとこまで成長させて植林するとか。三頭山とか参考になると思う、」
「あ、氷河期の生き残りってヤツだよな?だったらブナの最適条件と三頭山の年代別データを照合したら、解かるな、」

話しながら論文を挟んでデータに目を落とし、教科書も開いて見る。
その向かいでテキストから顔あげた美代が、遠慮がちに訊いてくれた。

「あの、ごめんね、ちょっと訊いても良い?伴性遺伝の応用問題なんだけど、」
「ん、もちろん」

頷いて美代の手元を覗きこんだ隣、手塚も一緒に問題を見てくれる。
そんな教え子たちに青木准教授は嬉しそうに笑った。

「ほんと勉強熱心ですよね、三人とも。今日は湯原くんと小嶌さん、講義の前も研究室に来てくれたし、」
「あ、それはちょっと理由があって、」

困ったよう即答した美代に、青木は軽く首傾げた。
どんな理由だろう?そう微笑んだ眼差しに周太は正直に答えた。

「僕たち、講義室に入り難かったんです。それで先生と一緒になら入りやすいって思ったのが最初の動機で…すみません、」

謝りながら首筋が熱くなってくる、自分の恩師を利用したようで恥ずかしい。
やっぱり小利口に思えて羞恥に染まってしまう、けれど樹医は笑ってくれた。

「謝ることなんか無いですよ、プリントのコピーとか本当に助かりましたしね?でも、どうして講義室に入り難かったんですか?」
「あ、それって俺のメールの所為です。だよね?」

すぐ気がついた手塚が訊いてくれる。
その言葉に途惑い微笑んだ美代に笑いかけ、明朗な友人は真相を告げた。

「先生、ゼミ生の所為なんですよ?小嶌さんのこと憧れてるヤツって多いんです、それで今日こそ講義前に話しかけようって、
やたら皆が盛り上がっちゃってね?だから俺、小嶌さんに状況のメールしたんですよ。それで二人とも入り難かったんです、」

説明してくれる斜向かい、美代の貌が薄紅に染まっていく。
こういう事は慣れていない、そんな困り顔が気恥ずかしげに口を開いた。

「すみません、そういうの私ちょっと困るんです。それで湯原くんに逃げられる方法を考えってってお願いして、」
「そういう理由なら幾らでも私をエスケープ場所にして構いませんよ、でも話してみるのも楽しいかもしれませんよ?」

気楽に青木は言って、可笑しそうに笑ってくれる。
そんな自分の担当教官に美代は、赤い頬のままでも笑顔で答えた。

「そうですね、話す前から逃げるのも良くないですよね。でも私、好きな人がいるのでつい身構えちゃって、」

美代の好きな人が誰か?その回答に後の時間を想ってしまう。
あと15分後を隠さざるを得ない今に、すこし寂しく周太は微笑んだ。

…きっと美代さん、英二が大学に来るって言ったら恥ずかしがりながら喜ぶよね?でも言えないんだ、今日は…ごめんね、

今日この大学に英二が来ることを敢えて、誰にも言っていない。
それは気恥ずかしさもある、それ以上に気がついた可能性のため黙秘を決めた。
この大学を英二が来訪して自分と会う、それを誰にも知られない方が英二と美代の安全が護られる。

…お父さんがこの大学で勉強して英文学を捨てたのなら、ここに殉職の原因はあるかもしれない…英二も美代さんも巻きこめない、

そう考えると、あの老人の存在に納得できる。
異動直前に2度も自分の近くに現われた老人、彼が何者なのか見当もつく。
その名前を調べることも、この大学を起点に考えたのなら方法は幾らでもある。
そして彼と自分の関係性がもう、朧に姿を顕わして見え隠れしていく。

…あの人の年格好はもしかしたら、でも、そうだとしてもどうして?

もし「彼」が推論の関係だとしても、なぜ父は英文学の夢を捨てざるを得なかったのだろう?
いつも穏やかだった父、けれど父は決して弱い人ではなく簡単に意志を曲げるような男ではない。
まだ父が学者の夢を抱いた明確な証拠は見つけていない、それでも、そう考えると全ての符号が合致する。

……

My heart leaps up when I behold A rainbow in the sky :
So was it when my life began,
So is it now I am a man
So be it when I shall grow old Or let me die!

私の心は弾む 空わたす虹を見るとき
私の幼い頃もそうだった 
大人の今もそうである 
年経て老いたときもそうでありたい さもなくば私に死を!

……

この詩を愛誦していた父にとって「虹」は、英文学の夢ではないか?
この推論が正解だとしたら父は、進路の希望を奪われ死を得たことになる。

もし虹を奪い死を与えた相手が「彼」だとしても、どうやって父から英文学の夢を奪えたのだろう?
夢を叶える力もチャンスもあるならば普通は諦めない、ならばコントロールされたという事だろうか?
そうだとしても父は何故、自身の大学時代について登山の話以外は一言もしてくれなかったのだろう?
どうして大学教授だった祖父のことも、この大学に在籍した祖母のことも、何ひとつ父は語らなかった?
それどころか母校の大学名も父は自分に話さなかった、そして母すらも何も知らないのは、何故だろう?

この疑問符たちを解く鍵が、この大学にあるというなら全てが納得できる。
この大学が母校であったこと、それが父の非命を招いたとしたら「秘密」が解ける。
それでも父の意志と願いの全ては見えない、どこまで真実が隠されているのか底が見えない。

…どうして夢を諦めたの?どうして殉職を選んでまで…俺には夢を忘れるなって、何があっても諦めるなって言ったのに…なぜ?

疑問形が心に響いて、泣けない涙の泉は深くなる。
それを見つめながらも顔は会話に微笑んで、周太は美代のテキストに目を落とした。

『東京大学理科前期日程 過去問題解析集』

表紙に記された大学の名が、自分と父と祖父を繋ぎ過去は現在になる。
そして父が愛誦したワーズワス「虹」その一節が、隠された真相の鍵を呼ぶ。

“My heart leaps up when I behold A rainbow in the sky…Or let me die”



四角く切取られた外が、まぶしく視界あふれて瞳ほそめる。
白い石柱を通りぬけた空は青い、良く晴れた8月の光に歩きだすと懐かしい声が呼んだ。

「周太、」

名前に見つめた銀杏の緑陰、ライトグレーのワイシャツ姿が笑ってくれる。
黒系のネクタイに物堅い礼儀が優しい、その信頼に微笑んで周太は駆け寄った。

「待たせてごめんね、英二、」

笑いかけ見上げた笑顔は3週間前と同じに端正で、けれど瞳が泣きそうでいる。
こんな目をしてほしかったんじゃないのに?その微かな傷みに英二が微笑んだ。

「俺のこと捨てないで、」

ただ一言、けれど全てを響かせる。
どうか願いを聴いてチャンスを与えて?そんな響きに切ない。
こんな言葉を聴きたかった訳じゃない、けれど縋られた喜びと未練が傷む。
それでも寄せてくれる想いに感謝は穏やかで、その幸せに周太は笑いかけた。

「俺の好きなベンチがあるんだ、一緒に座ってくれる?」

先月に見つけたばかりの樹影に佇む古いベンチ。
あれからも2週間前に学食の合間、今日のよう中座して図書館に行くとき座ってみた。
あの場所は自分にとって縁がある?そんな想いと笑いかけた隣、白皙の貌は寂しい微笑で頷いた。

「…うん、」

変らない綺麗な低い声、けれどいつもの弾むような喜びが薄い。
こんなトーンに哀しくて不安になる、それでも微笑んで陸橋の方へ歩きだした。
並木の樹影あざやかなキャンパスは木洩陽きらめいて、学生たちの笑い声にすれ違う。
ラフなカットソー姿の多い夏休みの空気を歩く隣はネクタイ姿で、行ってくれた墓参の礼儀が美しい。
こんなふう自分の家族たちを大切にしてくれる、それが嬉しくて周太は陸橋を渉りながら笑いかけた。

「あのね、ここって言問通りでしょ?でも東大ではね、ドーバー海峡って言うんだって、」

イギリスとフランスの間を隔てる海峡、その同名に父と祖父が想われる。
英文学を愛した父とフランス文学の学者だった祖父、その二人ともが橋を隔てたキャンパスにいた。
それは夢に生きる幸福な時間であったはず、それなのに父は祖父のことも家族の歴史ごと全て隠していた。

…でもね、お父さん、俺も同じ大学で生きてるよ?道路を隔てても橋で繋がる場所で、

陸橋の此岸は農学部のキャンパス、そして彼岸には祖父がいた文学部がある。
たった一本の道路と橋、それが隔てる祖父と父の運命には何が隠されているのか?
この真実を知りたくて今も橋を渡る、20分後にはパズルの欠片ひとつ見つけるかもしれない。
そんな想いと歩いて行く隣、白皙の貌は穏やかな寂しさと微笑んだ。

「ドーバー海峡みたいに大きな違いがさ、キャンパスによってあるんだろうな、」

なにげない言葉、けれど深く響いて温かい。
この温もりに英二の真実も心も意志も見えて、その全てに愛しく周太は笑った。

「ん、手塚もそう言ってたよ?あっちのキャンパスと農学部って、色々とカラーが違うみたい、」
「そっか、農業って実学の色が濃いからかな?」
「なんかね、東大の理系のなかでは農学部って下に見られるんだって…でも手塚は理系の首席なんだよ、だから有名なの、」
「すごく頭が良いヤツなんだ?周太や美代さんとも気が合うんだろ、」
「ん、すごく良いヤツだよ?」

なにげない言葉を交わして会話する、この声も呼吸も懐かしく慕わしい。
たった3週間ぶりの再会、けれど遠く離れていたのは距離でも時間でも無い。
そんな実感が今更のよう英二の瞳に感じられて、生まれてしまった隔ての川に鼓動ごと刺される。

…英二、やっぱり前と変っちゃったんだね?そんなに寂しい声で、こんなに俺のこと怯えるみたいに見て、

もっと真直ぐな声と、真直ぐな眼差しが今、すぐほしい。
いつも強引なくらい見つめて、綺麗な声で惹きつけていた直情は今、どこにある?
英二が帰国してから2週間はメールも電話も毎日くれた、けれど揺らぐ心が見えて哀しかった。

どうしてもっと、堂々としてくれないの?
どうして後ろめたい瞳をするの、本気で選んだのなら胸を張って?
本気で光一を抱きしめ愛したのなら、その想いと真実に誇りをもってほしい。

…本気なら好きって気持ちにプライドをもってよ、こんな目をされたら解らなくなる、よ…

こんな貌でいられたら、自分が何のために泣いたのか解らなくなる。
ただ望むまま幸せになってほしい、あの誇らかに美しい笑顔で生きてほしい。
そう願うから英二の気持ちも光一の願いも、全て自分は受けとめて笑って見送った。
大切な2人が笑顔で輝いてくれるなら自分は全て捧げて悔いはない、そう想ったから二人の背を押した。

それでも光一は周太の前で泣き崩れた、その涙は後悔ではなく愛惜と懺悔だった。
けれど光一の涙は誇らかで美しくて、泣きながらも綺麗な笑顔で謝ってくれた。
あの透明な瞳はもう答えを見つめている、そんな明るい純粋が綺麗だった。

『俺が帰りたい所はね、いちばん君が知ってるよ?山桜のドリアード』

あの言葉に笑った貌は本当に綺麗で、これで良かったと思える。
あの意味を考えるごと「よかった」と納得は深まって、ただ大切に支えたい。
光一が帰りたい相手が誰なのか解らない、けれど光一の瞳は幸せを知る心の強靭が眩しい。

…笑ってもらえて嬉しかったんだ、謝ってくれるより笑ってくれて、今まで通りに話して一緒にいるのが嬉しい、ね…

第七機動隊の付属寮、隣室から毎晩ノックしてくれる。
どちらかの部屋で話すこともあるけれど、雨でなければ初日のよう屋上で話す。
8月の夜気は暑いけれど広やかな夜空は心地良くて、並んで缶ジュースを飲む時間は寛げる。
あの時間が新隊員訓練の辛い期間も超えさせてくれた、他にもたくさん光一は援けてくれる。
その全てに卑屈も不安もなくて、ただ真直ぐに「約束」が優しく温かで、深い信頼が眩しい。

そういう光一だから幼い自分も、恋をした。
恋愛とも呼べない淡い想いかもしれない、記憶喪失に眠った心だった。
それでも今の10日間で9歳の自分が、どうして光一を信じて大好きになったのか理由がわかる。
だからこそ英二に胸張ってほしい、恋愛では無くても大切な人を任せた自分の気持ちを解かってほしい。

…英二だから光一も任せられたんだ、お母さんも家も全部を。なのに、こんな目をされたら惨めすぎる、

全てを贈っても幸せにしたい、そう願うほど想う人。
もう自分の未来は解らない、だからこそ全てを贈って今この時に笑顔を見たい。
その願いに失ってしまう痛みも選んだ、唯ひとり幸せに出来るなら誇らしいと微笑めた。
それなのに、本人にこんな目をされてしまったら惨めだ。

どうして解ってくれない?

前の英二なら言わないでも解かってくれた、なのに今は通じない。
この哀しい疑問を抱きながら顔は微笑んで、陸橋から降りて歩いて行く。
いつもの道を辿って豊潤の緑が現れる、その樹影へと踏みこんだ心ほどかれた。

「ね、ちょっと良い森でしょ?」

ほら、木の気配にもう心から笑顔になれる。
都心の喧騒もキャンパスの秘密も遠い森、この空気に周太は微笑んだ。

「奥多摩ほど広くないけれど、大きな木があって好きなんだ、」
「ああ、」

寂しい瞳のまま、それでも少し寛いだ笑顔が頷いてくれる。
それだけでも嬉しくて見ていたい、その喜びに微笑んで歩いていく。
ゆれる光と梢の明滅を辿り静謐は深くなる、そして現れた古いベンチに周太は微笑んだ。

「ここなんだ、座ってみて?」

ここに座ったら、この想いに気づいてくれる?

この願いに祈るよう見上げた想い人は、深い陰翳に腰を下ろした。
豊かな梢を透って風は涼しげに揺れて、真夏の木洩陽まばゆく降りそそぐ。
学舎の群れも喧噪も繁らす木々のはるかに遠く、眠るよう静謐は大樹に護られる。
この空気が家の庭と似ていて優しい、だから自分に縁があるよう想えて座りたくなる。

…うちの庭、お祖父さんが今みたいに造ったから…この森ともお祖父さん、すこし似せたかもしれないよね?

このベンチに祖父も思案に寛いで、祖母も一緒に座ったかもしれない?
もし父がここの学生だったなら、祖父と一緒に並んで座り学問を語り合った?
そう想うから尚更に大切な場所だと想えて、このベンチに家族の温もりを探して座る。
この想いに隣は気づいてくれるだろうか、もし気づいてくれるなら希望があると信じたい。
どうか狭間を越えて帰ってきて?そう祈る安らぎに座りこんだ隣、綺麗な低い声が訊いてくれた。

「周太の大切なベンチなんだろ、ここ?」

―解ってくれた、

そう感じた途端に泣けない涙は澄んで、静かな喜びに温かい。




(to be continued)

【引用詩文:William Wordsworth「My Heart Leaps Up」】
【参考文献:田中修『ふしぎの植物学』中央公論社】

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