この夏、「京の夏の旅」で特別公開された平安女学院大学有栖館(有栖川宮旧邸)に行ってきました。
有栖川宮家は、1625(寛永2)年後陽成天皇の第7皇子・好仁親王によって創設され、1923(大正12)年に絶家するまでほぼ300年続きました。
幕末にはあの和宮さんの元婚約者であって、倒幕軍の大将になった有栖川宮熾仁(たるひと)親王さんもいはりましたなあ。
そのお屋敷は元は京都御所の建礼門の前に1869(明治2)年に建てられていましたが、宮家が東京に移った後京都府に引き渡され、京都裁判所の仮庁舎として使用された後、現在の場所に移築され、旧京都地方裁判所所長宿舎として2007年まで使用されていました。
2008年からは、隣接する平安女学院大学が取得し、保存と同時に茶道・華道・香道・着付けの授業や市民講座の開催、日本文化の研究・教育の発信を行う拠点として活用しています。
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烏丸通り丸太町から少し上がった西側にある門から入ります。
この門は銅板と真鍮板で葺かれた豪壮な趣を持つ門で、1912年に三井家の邸宅門として作られ、別の場所に移築されていたのを裁判所が購入して現在地に移築したものです。
吉井勇によって「青天門」と名づけら、大正期の門建築の代表として高い価値を持つものだそうです。お屋敷よりもこの門の方が価値があると、案内のボランティアさんは言っておられました。
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こちらは南側の下立売通りに面した長屋門。これも長屋門としては最高級のものだそうです。
書院造りのお屋敷は「玄関棟」、「住居棟」、「客間棟」の3つの棟からなっており、中でも「客間棟」は旧宮家の格式を表わしていて立派なものです。
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「客間棟」の座敷と板張りの間。
座敷は12畳半で、西側に「床の間」と「付書院」を備えた2畳の上段の間があります。
板張りの間は15畳の広さで能舞台にもなります。
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座敷と板張りの間の南側には長い畳の間があり、炉が切ってあります。
この客間では様々な文化人がつどい、サロンのような役割も果たしていたようです。
廊下外側のガラス戸は元はなくて、障子一枚で戸外に面していましたが、裁判所長宿舎時代に寒さを防ぐために、ガラスが入れられました。
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上段の間は宮さんが座られた場所。その窓は火頭窓になっています。
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窓の上部には龍の彫り物があります。
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鴨居上の壁は蟻が通るような狭い壁なので、蟻壁と言われるものですが、四隅の柱の上にも塗り籠められていて部屋を広く見せるようになっています。
欄間は細い桟を縦に細かく組んだもので、機織りの筬(おさ)の形をしているので、筬欄間と呼ばれるものです。
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お庭は、2009年に「植治」の11代目小川治兵衛さんによって「平成の植治の庭」として作庭されたものです。
作庭の一部は平安女学院大学の学生さんも手伝いました。
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下立売通りの向かい側にある、聖アグネス教会の塔が借景になって見えます。
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中庭には大きく育ったフジバカマの植栽がありました。
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門の内側の両側には、桜と紅葉の大木が植えられ、その下には石橋をベンチに転用した石が据えられています。
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平安女学院関連の展示もあり、日本で初めてというセーラー服の制服もありました。