映画「シド・バレット 独りぼっちの狂気」を見てきました(2024年6月29日)。
映画「シド・バレット 独りぼっちの狂気」予告編
シド・バレットは、イギリスのとても売れたロック・バンド「ピンク・フロイド」の創始者で、非常にインパクトがあり評価の高いサイケデリック・ロックという音楽を作っていた男です。しかし、嗜好していた幻覚性麻薬LSDの影響で精神に異常をきたし、音楽活動ができなくなってしまい、半隠遁生活をしていましたが、2006年に60歳で亡くなりました。
上の映画ポスターに、デヴィッド・ボウイ、マーク・ボラン、グレアム・コクソンが夢中になったと書かれています。他にも、ブライアン・イーノやジミー・ペイジがシドのソロアルバムのプロデューサーに名乗り出るなど、錚々たるミュージシャン達がシド・バレットの音楽に心酔し影響を受けた、伝説的な存在です。
私は、20、30年前、個人的な事情で、シド・バレットを当時の身近な人間に投影していた時代がありましたが、その後ずっと遠ざかっていました。最近、シド・バレットの限定1000部の詩集が出たときも、もう今の自分には必要ないと思い買いませんでした。今回の映画は、シド・バレットを知っている人たちが彼を回顧する内容です。少しまよったのですが、見に行くことにしました。
映画館は、渋谷のシネクイント。渋谷の駅を出ると、このあたりの変化が激しくて少し道に迷ってしまいました。駅前では、都知事選に立候補した田母神さんが演説していましたが、なんかよわよわしく感じましたよ。
で、映画のほうは、劇場の前のほうで見たせいか、字幕を目で追うのがたいへんでストーリーが正確に頭に入ってこなくて、雰囲気を楽しんだかんじですかね。映画を見て印象的だったのは、「ピンク・フロイド」の音楽が売れ始めて、周りからの期待やプレッシャーが大きくなってきた頃の表情です。以前の快活で笑顔の多かった表情が、とても暗くなっているのです。この頃以降のシドは、「ジョン・レノンだったらこうはならないんだろうな」「絵描きになれば、ステージで歌えなくなっても文句は言われないよね」などの発言を残し、絵を描く半隠遁生活に入っていきます。
映画ではなんだかよくわからないモヤモヤが残ったのでネットで調べてみると、半隠遁生活のシドの面倒をずっと見てきた妹がシドの死後に、彼は「共感覚を持ったアスペルガー症候群だった」と語っていたことをはじめて知りました。アスペルガー症候群は今では、自閉スペクトラム症(ASD)とよばれています。シドが精神的に異常をきたしたのは、LSDの影響もあったのでしょうが、バンド活動でのストレスが原因で、ASDの二次症状としてのうつ病になっていた可能性があるのではないでしょうか。薬物に耽溺していたのは、依存症になりやすいASDの性質も影響していそうです。シドの精神病理について、専門家に解説してもらいたいものです。そして、シドの作った音楽を自閉症者の芸術として見直してみるのもおもしろそうです。さらに、私がシド・バレットをずっと気になっていたのは、何か自分に似たところをうすうす感じていたからかもしれません。
シドのソロ・アルバムの中で一番好きな曲。
Syd Barrett - Wined and dined