子供はかまってくれない

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LIVE レビュー「大貫妙子と小松亮太コンサートツアー『Tint』」:10月10日道新ホール

2015年10月11日 20時54分43秒 | 映画(新作レヴュー)
坂本龍一が作曲した「Tango」を,このアルバムに入れるにあたって全面的に編曲を施した小松亮太が,少し自慢げに「坂本さんに『素晴らしい!』と言ってもらえた」と喋っていたのがとても印象的だった。
どうやら原曲はその題名とは裏腹にタンゴ調ではなかったらしいのだが,コードが大胆に変えられたことと引き換えに,正調の「タンゴ」として生まれ変わったことを絶賛した坂本の評価は,そのまま大貫=小松コンビが絶妙な日本製タンゴを誕生させたことを言祝ぐ報せに他ならなかったのではないか。

大貫妙子が15年来の仕事仲間だという小松亮太と組んで初めて作ったアルバム「Tint」は,それをほぼ完璧にステージで再現したツアーによって,その「絶妙な日本製」の部分がより鮮明になったという印象だ。
80年代に大貫が入れ込んでいた主にフランスを中心とする欧州ロマン主義とも呼ぶべきものの影響下にあった一連のアルバムは,その制作上のパートナーが坂本龍一であったことの必然として,かけられたフィルターには「和」と「電子」の要素が強かった。これに比べると今回のプロジェクトは,本場アルゼンチンの音楽が血肉化された小松というパートナーの影響で,「タンゴ」が持つロマンティシズムと大貫の独特なポップ感覚とがよりストレートに融合しているという気がする。

「THE世界遺産」のテーマで幕を開けたコンサートは,大貫の登場と同時に「Tint」には含まれていなかった「横顔」の演奏というプレゼントによって,還暦を迎えた大貫妙子と同年代がほとんどというオーディエンスを大喜びさせて始まった。「Tint」の曲は全曲(多分),それに同じアストラ・ピアソラの「リベルタンゴ」とは対照的に無名な曲,「気恥ずかしいけどやっぱり乗っちゃう」という「ラ・クンパルシータ」に,年末に放送されるというドラマのテーマ曲等を合わせて,アンコールまで15曲。
二人の,時々被ったり,間が開いたり,テーマがずれたりしながらも,ゆるゆると進んでいくお喋りも楽しく,とても濃密且つ軽やかな時間が過ぎていった。

大貫は札幌の大倉山の近くにある別宅へ,月に一度は来ているということだが,都内のスタジオが次々と閉鎖されていく中で残った,貴重なアーティスト本位のスタジオである「札幌芸術の森スタジオ」があったからこそ「Tint」は生まれたと語っていた。是非,また札幌の空の下,日本生まれの生粋の「エトランゼ」しか持ち得ないアーティスティックな嗅覚を,北海道の食材によって研ぎ澄ませることによって,芳醇な音楽を創り上げていって欲しい。


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