子供はかまってくれない

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映画「パッション」:ヒッチコック愛,岩をも通す

2013年11月04日 22時21分32秒 | 映画(新作レヴュー)
ブルネットとブロンド,更に仄めかされる双子の姉妹の存在。アラン・コルノー監督作品のリメイクでありながら,どこまでもヒッチコックの「めまい」を追い求めるブライアン・デ=パルマの執念が,二人の女優の身体の奥深くに眠る官能を引き出して,艶やかで匂い立つようなスリラーを作り上げた。

二人のヒロインを渡り歩く男(ポール・アンダーソン)は存在するものの,本作における官能は,もっぱら二人のヒロイン(レイチェル・マクアダムスとノオミ・ラパス)の間の火花が散るような関係から生まれる。愛欲,尊敬,嫉妬,憎悪といった,正負が入り混じった感情の渦を,折り目正しい演技で描出する二人の女優は,デ・パルマ一流のフレームワークの中で,存分に光り輝いている。
特にラパスは,尊敬を抱いていた上司に対して次第に暗い情念を湛えていくアシスタントという役柄を得て,スウェーデン版「ミレニアム」シリーズのリスベット役以来とも言える深みを見せている。

ワンカットの移動撮影は見せるものの,斬新な映像表現にも社会性にも色目を使うことなく,ひたすらオーソドックスに「映画ならでは」の表現にこだわった作家の趣味性に賛意を示した批評家は44%(ロッテントマト)とのこと。この微妙な数字こそが,本作における今のデ・パルマの立ち位置と成果を正しく表しているように思えるが,「闇のシネアスト」は健在なりを証明する怪作だ。
★★★★
(★★★★★が最高)


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