先日、電車に乗ってたときのことだ。
日曜日の昼下がり、何の前触れもなくその男はやってきた。
四日市から乗ってきたアンガールズの田中似の男、やや慌ただしく対面シートの僕の向かい側にすわった。
田中似の男は背負っていたリュックをおろし、おもむろにカメラを取り出したかと思うと窓からの風景を動画撮影し始めた。
そのままの姿勢で彫刻のように微動だにせず、ひたすら車窓の景色を撮り続ける。
駅をいくつか通り過ぎた頃、男は撮影を終了し、手帳に何やらメモを書き出した。
その後も男は、すれ違う電車を鋭い目つきで追ってみたり、駅に停車している電車を撮影したり、突然思い出したようにメモ書きしたり、
あるいは撮った動画をチェックして、ときどきメモと見比べたりして、終始忙しそうだった。
明らかにその男は、移動手段として電車に乗っているのではなく、電車に乗ることそのものが目的だと思われる。
僕は電車に揺られながら文庫本を読んでいたんだけど、その男がずっとセカセカと忙しそうにしてるので、気が散って仕方がない。
でも見てるとなんだか楽しくなってきた。
彼は彼で一生懸命であり、趣味の世界に没頭しているのだ。
もしかすると男は撮った動画をYouTubeで公開するかもしれない。
そして、そのYouTubeをSNSなどで紹介し、「これはいいですね」とか「この車両、僕も大好きなんですよ」といった同志のコメントをもらうのかもしれない。
いわゆる鉄ヲタとか、テッチャンとか言われる人だと思うけど、それはかなりディープな世界らしい。
僕は鉄道ファンじゃないけど、気持ちはなんとなくわかる。
一部のマニアが駅のルールを守らなかったり、マナーが悪いといわれるけど、たぶんそういう人はほんの一部なんだろう。
田中似の男はしばらく分厚い時刻表とメモ帳を見比べたあと、スックと立ちあがり扉に向かった。
電車は桑名駅に止まり、男は早足で出て行った。
僕は文庫本を閉じ、しばらく車窓を眺めたい気分になった。
日曜日の昼下がり、何の前触れもなくその男はやってきた。
四日市から乗ってきたアンガールズの田中似の男、やや慌ただしく対面シートの僕の向かい側にすわった。
田中似の男は背負っていたリュックをおろし、おもむろにカメラを取り出したかと思うと窓からの風景を動画撮影し始めた。
そのままの姿勢で彫刻のように微動だにせず、ひたすら車窓の景色を撮り続ける。
駅をいくつか通り過ぎた頃、男は撮影を終了し、手帳に何やらメモを書き出した。
その後も男は、すれ違う電車を鋭い目つきで追ってみたり、駅に停車している電車を撮影したり、突然思い出したようにメモ書きしたり、
あるいは撮った動画をチェックして、ときどきメモと見比べたりして、終始忙しそうだった。
明らかにその男は、移動手段として電車に乗っているのではなく、電車に乗ることそのものが目的だと思われる。
僕は電車に揺られながら文庫本を読んでいたんだけど、その男がずっとセカセカと忙しそうにしてるので、気が散って仕方がない。
でも見てるとなんだか楽しくなってきた。
彼は彼で一生懸命であり、趣味の世界に没頭しているのだ。
もしかすると男は撮った動画をYouTubeで公開するかもしれない。
そして、そのYouTubeをSNSなどで紹介し、「これはいいですね」とか「この車両、僕も大好きなんですよ」といった同志のコメントをもらうのかもしれない。
いわゆる鉄ヲタとか、テッチャンとか言われる人だと思うけど、それはかなりディープな世界らしい。
僕は鉄道ファンじゃないけど、気持ちはなんとなくわかる。
一部のマニアが駅のルールを守らなかったり、マナーが悪いといわれるけど、たぶんそういう人はほんの一部なんだろう。
田中似の男はしばらく分厚い時刻表とメモ帳を見比べたあと、スックと立ちあがり扉に向かった。
電車は桑名駅に止まり、男は早足で出て行った。
僕は文庫本を閉じ、しばらく車窓を眺めたい気分になった。