風・感じるままに

身の回りの出来事と生いたちを綴っています。

移民100年後に

2008-11-28 | 社会
 “今年は「ブラジル移民100年」”と聞いて、二十歳頃に読んだ第一回芥川賞受賞作になった石川達三の「蒼茫」という小説を思い出した。

 もう40年も前のことなので小説の中身はあまり覚えていないが、国の政策によって故郷を捨て、神戸港から遠く海を渡って南米の地に旅立つ貧しい農民たちの家族を描いた「暗くて重い」内容だったような記憶がある。

 戦前・戦後とブラジルには約25万人の日本人が移住した。いや、国策によって「移住させられた」のだ。そこに待ち受けていたのは「夢の楽園」ではなく、荒れ果てた土地と農場労働者としての厳しい労働と搾取だった。

 あれから一世紀近く経った。今度は逆にブラジルへ移民した人たちの子孫が日本に移住してきている。80年代半ばから始まった日系ブラジル人の来日は、90年の入国管理法の改正によって急増し、現在は約31万人を超えているという。

 ほとんどの人が日本企業で働いているが、その多くのが非正規雇用で低賃金、社会保険にも入れないなど劣悪な労働条件で働いて、雇用問題でのトラブルも多くなっている。

 100年の歴史が流れ時代は変わったが、人々が幸せを求める姿と、それを拒む厳しい現実の壁は今も昔も変わらないのか。