序章 明日より、伊勢地方の鳥羽に小旅行
明日より、ある旅行会社の観光ツアーで、
伊勢地方の鳥羽にある観光ホテルに2泊3日の小旅行に出かける。
私が30代の終りの頃、家内と南紀州周遊観光を5月の連休の時、
そして一昨年、家内の母を含めて南紀に温泉滞在を2月にした折、
伊勢神宮に参拝したので、今回は訪れない。
私は鳥羽地域に関しては、20代の初め、映画青年の真似事をして、
宝塚撮影所の所用を終えた後、
独りで伊勢地方、鳥羽地域を周遊したりした。
家内は初めての鳥羽地域である上、鳥羽の観光ホテルに連泊であったので、
訪れることにした。
第1章 旅立ちの朝は
旅行に出かける朝は、日常の日々より起きだすのが早いので、
目覚めてもぼんやりしている。
前夜、寝付くのは日常と余り変らないので、睡眠不足なのである。
起きだして、玄関庭の外れで煙草を喫い、心身を外気に触れた後、
15分過ぎれば正常の感覚になる。
こうした折、現役時代の時は、何時も睡眠時間を削っていたので、
こんな感覚だった、と思い出されたりした。
定年退職後、3年生の身であるが、
旅行に行く朝は、ふとこうした折に甦(よみが)る。
しかし勤務と違い、これからの安楽な時を考えれば苦にはならないのが、
趣味のひとつでもある旅行の朝でもある。
第2章 伊勢志摩の鳥羽に訪れば ①
新宿より首都高速と東名高速道路をバスで走り抜け、浜松西ICで下りて、
一般道を遠州灘が観える周辺、渥美半島の先端の伊良湖岬までの車窓は、
私の心にそぐわなかった・・。
伊良湖港から鳥羽港行きのフェリーに乗船し、
割り増した特別室の甲板フロアーで潮風を受け、
ビールを呑みながら煙草を喫ったりしていると、
初めて旅に来たと実感が出来た。
鳥羽駅に近く全室海側の宿と称された『錦浦館』に着いて、
館内の状況、部屋の窓辺から周辺の情景を眺めると、
駅前観光旅館という感覚であった。
『旅行ツアー・・選定を間違えたょ・・』
と私は家内に言いながら、苦笑した。
この後、JRと近鉄の『鳥羽駅』周辺を散策し、
私が最初にこの地を訪れた東京オリンピック前を思い出したりした・・。
あの頃は日本の各地は、高度成長を背景に活気が満ち溢れていた。
私は目の前にした情景は、失礼ながら素直に言わせて頂ければ、
元気のない街並みであり、疲労感が感じられ、痛々しく感じたりしたのであった。
私は街並みを散策し、異例として、伊勢茶のアイスクリームを食べたりしたが、
家内は鳥羽の銘菓を3品を買い求めたりした。
この後、温泉にしたり、伊勢エビ、刺身の盛り合わせを頂きながら、
ビールを呑んだりしたが、
漠然と明日はどこに行くかが焦点が定まらなかった・・。
第3章 伊勢志摩の鳥羽を訪れば ②
伊勢神社の外宮(げくう)、内宮は、私達は夏、冬の時節に訪れ、
特に内宮は日本の伝統美のひとつであり、
限りない美の結晶と私は感じている。
今回の旅行では、この地を避けて、
『伊勢・安土桃山文化村』に行って観て、驚いた。
私はこの地は無知であったので、
安土桃山時代の歴史博物館のイメージであったが、
実在は日光の江戸村のような内容であった。
各小劇場で芝居を上演していて、女ねずみ小僧のコメディ風、
伊賀忍者物のふたつの作品を鑑賞したが、
コメディの苦手な私は時間を無駄にしたと思ったが、
伊賀の忍者物は殺陣に工夫が見られる。
文化村の中で、昼食にビールを呑みながら、
ゴマ味の和風味の冷やし中華つけ麺を頂たいたが、
想像以上に美味であった。
この村の入館料は程ほどの価格であるが、若い従業員の方達が活気があるので、
何よりも素直に感心させられた。
この後、鳥羽市内に戻る途中で、夫婦岩で著名な二見浦に寄ったが、
期待した気持ちが多すぎた為か、少し失望をした。
この思いか、『無事カエル』という縁起物のカエルが奉納されていたが、
実感として馬鹿馬鹿しいと思ったりした。
夕食の時、ビールを呑みながら、
伊勢エビの各種料理、アワビの刺身を頂きながら、
このひとときが一番かしら、と家内に言ったりした。
第4章 伊勢志摩の鳥羽に訪れば ③
最終日の午前中は、鳥羽湾に浮ぶ真珠島で過ごした。
世界で初めて真珠の養殖に成功した御木本幸吉の苦節の過程、
そして世界に雄飛させた偉業の数々が散見できる。
この館内の真珠の製造過程を具体的に見て、触れるのは、
工夫があるので感心したりした。
パール・アイランドと称された建物、和風庭園もさりげない情感を感じたり、
レストランでアコヤ貝の料理を頂いた。
今回の旅は、周遊観光ツアーは
往復の交通費、朝食、夕食を含んだホテル代のみの日程で格安だったためか、
徹底した滞在温泉旅行と違い、中途半端で少しだらけた行程となった。
こうした旅の折は、私達夫婦の趣味のひとつとしては、
食事処、和菓子、地酒に費やす方が遥かに多い、
と微苦笑している。
のちの想いとすれば、ミキモト真珠島の和風庭園で、
夏椿(ナツツバキ)、紫陽花(アジサイ)の花の色合いが心に残る、
と思ったりしている。