『 死ぬまで自分の足で歩くために・・・「ロコモ度」をチェック!
と題された見出しを見たりした。
現在、要支援・要介護認定者は約621万人。
ここ10年ほどで急増しており、その原因でもっとも多いのが、
足腰の筋肉・骨・関節といった運動器の障害。
つまり、立ったり座ったり、歩いて移動できなくなったりして、
自立生活ができず、何等かの支援や介護を必要とする人が、
もっとも多いということだ。
高齢者問題として注目度の高い脳血管障害や認知症も上回る勢いで、
要支援・要介護認定者の25%も占めている。
運動器の障害のために、立ったり歩いたりなどの機能が、
低下している状態を「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群 通称:ロコモ)と呼び、
進行すると要介護リスクが高くなるとして、
「メタボリックシンドローム」(代謝症候群 通称:メタボ)と
ともに国を挙げて対策が叫ばれている。
とはいえ今、ごく普通に日常生活を送っている人が、“足腰の衰え”に気づくことは難しい。
ましてや自分の足で、歩いてトイレに行けなくなる状況など想像がつかないだろう。
でも現実には、立ち座り、歩行などを担う足腰の筋肉や骨などの成長は、
20~30代がピークで、それ以降は、加齢とともに衰える一方。
歩くなどの生活活動をすることで、機能を維持しているものの、
活動量が減れば、その分どんどん低下する。
たとえば地球に帰還した宇宙飛行士や骨折などで寝たきりだった人が
一時的にも歩行困難になることからもわかるように、
足腰の筋肉を一切、使わなければ筋力が落ち切り、
立ち上がって歩くことさえ、ままならなくなるのだ。
日常生活を振り返り、こんなことはないだろうか?
まずは以下の7項目をチェックしてみよう。
1つでも当てはまれば、対策を考える必要がある。
□片足立ちの状態で靴下がはけない。
□家の中でつまづいたり、すべったりしやすい。
□階段を上がるのが億劫。手すりが必要。
□重い物の上げ下ろしなどの重い家事労働が困難。
□2kg(1リットルの牛乳2個くらい)の買い物を持ち帰るのが困難。
□15分くらい続けて歩くことができない。
□横断歩道を青信号の間に渡り切れない
※出典:ロコモチャレンジ!推進協議会『7つのロコチェック』より
「まず自分の運動器の状態を知り、今すぐに対策を始めることが大切。
対策をすれば何歳からでも効果があります」
と語るのは、医療法人社団愛友会 伊奈病院 整形外科部長の石橋英明氏だ。
「運動器の衰えや疾患などによる機能低下は、ゆっくり進行するので、
“年だから”と見過ごしているうちに、歩けなくなるなどということは、
大げさな話ではありません。
まずはロコモ度テスト(※注)などで衰え具合を把握し、
少しずつでも継続的な運動習慣をつけ、
日常ではよく歩く、階段を使うなどの活動的な生活を心掛けましょう」(石橋氏)
肥満や低栄養にならないよう、適切な食生活も大切。
また中年以降は、運動器の機能に関わる骨粗しょう症、骨折、変形性関節症、
変形性脊椎症、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症などが発症しやすくなるので、
初期の腰痛、膝痛、だるさなどを放置しないよう、早目の整形外科医への受診をすすめている。
※注:ロコモ度テスト
日本整形外科学科が考案したロコモティブシンドローム判定に使われる簡易テスト。
たとえば高さ40センチの台(イスなど)に軽く腰掛けた状態から、
勢いをつけずに片脚で立ち上がることができるかなど。
この40センチからの片脚立ち上がりができないと、ロコモの始まりともいわれる。
☆「ロコモ度」をチェック!
ロコモティブシンドロームの原因
●加齢(骨は女性で閉経前後から、男性で60歳頃から急速に低下。
筋肉は男女とも、40代以降毎年0.5~1.0%ずつ低下する)
●遺伝(筋肉や骨、関節などが衰えやすい遺伝背景がある)
● 運動器の疾患(骨粗しょう症、骨折、変形性関節症、変形性脊椎症、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症など)
+
●運動習慣の欠如
●日常生活での活動量の低下
●不適切な栄養摂取状態(肥満、痩せすぎ、低栄養など)
緑文字の三つは、心掛け次第で向上できることです。
☆今すぐ始めたい“死ぬまで歩き続ける”ための体操
●ロコトレ
ロコモティブシンドローム予防のための運動はこの2つ。
簡単そうに見えるが、ふだん運動習慣のない人などには、意外に大変。
バランスを保とうとして動く筋肉、心地よい負荷感を感じる筋肉など、
ふだん使われない筋肉を意識することができ、同時に足腰の衰えを自覚できる。
毎日続けることが大切だ。
【片脚立ち】バランス力をつける
姿勢をまっすぐにして立ち、片脚を軽く上げて1分間静止。
転ばないように、すぐにつかまるものがある場所で行う。
左右1分ずつ×3回/日
【スクワット】下肢の筋力をつける
1:肩幅より少し広めに足を広げ、つま先は外側に30度くらいずつ開いてまっすぐに立つ。
2:膝が足の人差し指の方向に向くように、またつま先より前に出ないようにして、
お尻を後ろに引くように膝を曲げて体を沈め、元の姿勢に戻す。
深呼吸をする速度で5~6回繰り返す。
膝を傷めないよう90度以上は曲げないように注意。
5~6回×3回/日
イラスト/日本整形外科学会ロコモパンフレット2015年度版より
取材・文/斉藤直子
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。