新年早々、重たい映画を観てしまった。先日の「ウィンターズ・ボーン」は重いというよりむしろ暗かったが、こちらは忌まわしく、おぞましく、ひたすら重い。それもヘビー級の重さ。
カナダに住む中東系の女性が双子の姉弟を残して亡くなり、遺言と手紙が残される。その内容は自分を埋葬するときは裸で世間に背を向けてうつぶせにしてほしい、姉弟には存在を知らされていなかった兄と父を探して手紙を渡してほしいというもの。
姉弟が母の母国(映画では特定されてないがキリスト教徒とイスラム教徒の紛争が描かれるのでレバノン辺りか)へ行き、母の軌跡を追ううち想像を絶する過酷な人生が浮かび上がり、驚愕の事実がわかってくる。
果たして事実を知らせることが母親の愛情といえるのだろうか。なんとも救いのない暗澹たる気分にさせられる映画だった。
観終わってたまたま近くにいた熟年夫婦の会話が聞こえてきたが、夫の方は「バカバカしい」と吐き捨て、妻の方は黙っていた。男性にはこの主人公の女としての、母としての悲しみはわからない、というよりわかりたくないのかもしれない。